[更新]日本初「国産バイオジェット燃料」有償フライトへさらに大きな前進。国交省が通達改正

ユーグレナ 実証実験 プラント

ユーグレナが日本で初めて完成させたバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラント(横浜市鶴見区)。

提供:ユーグレナ

ユーグレナが2020年の民間機フライト実現を目指して開発中のバイオジェット燃料が、日本国内で使用できることになった。2014年12月の東証一部上場から5年、同社はついに、夢の実現までの道のりに立ちはだかる最も高いハードルを乗り越えたことになる。

ユーグレナは1月30日、横浜市に建設したバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントに導入している製造技術(BICプロセス)が、同プラントでつくられた燃料を民間機に搭載するのに必要となる「ASTM D7566規格」(以下、ASTM規格)の新規格を取得した

続いて2月4日、国土交通省が定める通達「航空機に搭載する代替ジェット燃料(ASTM D7566規格)の取扱いについて」の一部改正が公布・施行(2月3日付)されたことにより、ユーグレナが実証プラントで製造するバイオジェット燃料を、国内で正式に使用することが可能になったと発表した。

ASTM規格……米国材料試験協会(ASTM)が定める「航空機に搭載する代替ジェット燃料」の国際規格。すでに都市ゴミやサトウキビなどを原料とする燃料が認証を受けているが、微細藻類(ミドリムシ)を原料とするものは世界初。ユーグレナはARA社が認証を受けた技術のライセンス付与を受け、国内でバイオジェット燃料を製造する。

これまでで最大の成果

ユーグレナ ASTM認証 ARA BICプロセス

ユーグレナの実証プラントで製造したバイオジェット燃料を民間航空機に搭載するには、国際規格ASTMの認証取得が不可欠。しかし、申請フローが複雑なため、遅延が懸念されていた。

出典:2019年9月期本決算説明および2020年9月期事業方針

ユーグレナはかねてより、2020年中にバイオジェット燃料を用いた有償フライトを実現すると宣言しており、そのためには今回認証を受けた国際規格がどうしても必要だった。

ASTM規格取得に続き、冒頭で紹介した国交省の通達改正が公布・施行されたため、規制上、同社は実証プラントで製造するバイオジェット燃料を使って航空機を飛行させることができるようになった。

ユーグレナ BICプロセス

2019年11月の本決算発表段階で、認証取得の「確証」はなかった。しかし、ユーグレナは「2020年内の有償フライト実現」というスケジュールを取り下げることはなかった。

出典:2019年9月期本決算説明および2020年9月期事業方針

ユーグレナの永田暁彦副社長は一連の動きについて、Business Insider Japanにこう語っている。

「バイオ燃料自体の性質に問題はないと確信していた。ASTM規格が取得できたことで、我々のプラントから生まれるバイオ燃料でフライトを実現するために、自分たちでコントロールできない要素がなくなりました。これまでで最大の成果であり、年内のフライトを必ず実現させたい」

2019年11月には「ご心配とご迷惑」の謝罪も

出雲充 ユーグレナ

ユーグレナの出雲充社長は、株主向け資料の冒頭を「実証プラントの本格稼働開始およびASTM認証の取得を2019年9月期中に実現できておりません」という率直な報告から初めつつ、しかし「現場で着実に対応中」とし、不退転の覚悟を示していた。

出典:2019年9月期本決算説明および2020年9月期事業方針

ユーグレナのここまでの歩みは、決して平坦なものではなかった。

当初、2019年秋までに見込んでいたASTM規格の取得と実証プラントの稼働はやむを得ず順延。その後、2019年11月に行った決算会見では創業以来初めての減収を発表。2年連続で最終赤字となるなど厳しい時期が続いた。

それでも、同社の出雲充社長は決算会見で次のように語り、バイオジェット燃料のもつ大きな可能性を諦めることはなかった。

「バイオジェット・ディーゼル燃料事業の研究開発を停止してしまえば、黒字にすることは簡単。しかし、バイオ燃料市場には、ベンチャー企業に滅多に訪れない大変大きなチャンスがあるのです」

フライトは最低でも8月までに実施

今回のASTM規格の取得決定は、ユーグレナが国産バイオジェット燃料のサプライチェーンの中での確固たる立ち位置を確保し、市場に眠る大きなチャンスをつかむための追い風になったと言っていいだろう。

ユーグレナは2018年10月に実証プラントを完成させてから、1年以上かけて関係する航空会社はじめ、その他空港設備、貯蔵タンク、ローリー輸送などのバリューチェーンにかかわる企業らと協議を進めてきた(全日空ら複数の企業とともに「日本をバイオ燃料先進国にする」ことを目指す『GREEN OIL JAPAN(グリーンオイルジャパン)』を宣言している)。

今回の規格取得を受けて、ユーグレナは有償フライトの実現に向けた最終調整を、上記の関係企業らとともに、本格的にスタートしていくことになる。

ユーグレナ 2020年 有償フライト

国際規格ASTMの認証取得は2019年秋と期待されていたが順延に。2020年春までの取得は「2020年内の有償フライト実現」に向けた悲願だった。

出典:2019年9月期本決算説明および2020年9月期事業方針

2019年11月の決算会見で懸念とされていた実証プラントの本格稼働についても、「2020年2月末から3月での本格稼働予定の蓋然性は高い」(永田副社長)と自信をのぞかせた。

さらに、最も期待される有償フライトの実施日程についても、永田副社長は2020年中という当初のスケジュール通りの実現に、前向きな考えを示した。

最低でも8月までに、可能な限りそれよりも早期の実現を目指します

1月30日にBusiness Insider Japan主催の年次イベント「BEYOND MILLENNIALS」のセッションに登壇した永田副社長は、参加者の前で次のように語っている。

「2020年は、ベンチャーがバイオ燃料を製造する大手企業に挑む年になる。率直に言えば、(ユーグレナが投資してきた)およそ100億円の資金を充てるなら、世の中にはもっと儲かるビジネスがあると思うけれども、我々としてはそうしたことより世界を良くするためのビジネスをしたい

まだ始まったばかりの2020年だが、東京オリンピック・パラリンピックと同じくらい、もしかするとそれ以上に、ユーグレナの動きから目が離せない年になりそうだ。

(取材:三ツ村崇志・川村力、文:三ツ村崇志)

※本記事は1月30日に公開した記事をアップデートしたものです。

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