格安ホテル運営OYOの創業者兼最高経営責任者(CEO)、リテシュ・アガルワル。
OYO
- ソフトバンクグループが10億ドル以上を出資する、インドの格安ホテル運営OYO(オヨ)がアメリカで人員を削減しようとしている。
- 同社は1月、中国とインドで大量解雇を行ったことが明らかになったばかり。
- ダラスにある北米本社の営業および営業支援スタッフが主な対象になりそうだ。
OYOがアメリカの営業部隊を大量解雇しようとしている。事情に詳しい複数の関係者への取材から明らかになった。
これから行われる人員削減の規模や、どの拠点やエリアが対象になるのかはまだ明確にはなっていない。Business Insiderは、ソフトバンクグループとOYOにそれぞれコメントを求めたが返答はなかった。
OYOについては、1月11日のブルームバーグ報道によって、同社が中国とインドで合計1800人を解雇し、数カ月以内にインドでさらに1200人を減らす計画であることが明らかになったばかり。経営陣はこの大量解雇について、業務を整理して収益を向上させる組織再編の一環と説明していた。
ソフトバンクGの出資先で約1万人解雇
OYOのアビナブ・シンハー最高執行責任者(COO)。中国とインドで「サステナブルな成長のため」大量解雇を行った。
REUTERS/Mike Blake
収益性向上のための組織再編はソフトバンクグループが出資する他のスタートアップでも行われている。
Business Insiderの調査によると、1月最初の週にOYO、宅配アプリのRappi(ラッピ)、カーシェアリングのGetaround(ゲッタラウンド)、宅配ピザのZume(ズーム)計4社で2600人、2019年にも14社で7000人以上が解雇されている。この数字にWeWork(ウィーワーク)が外注していた物件管理スタッフら約1000人は含まれない。
1月29日にOYOのスタッフ宛てに送信されたメモによると、同社のアビナブ・シンハー最高執行責任者(COO)は大量解雇の理由を「サステナブルな成長」のためとしており、成長より収益性を優先する新たな事業計画のもとでは、多くの仕事が「必要なくなる」という。
「いま真っ先にやらねばならないのは、これまで営業や営業支援業務に充てていたリソースを、収益管理、データサイエンスおよび機械学習、エンジニアリングなどにふり向けること。実に苦しい決断ではありましたが、現在の状況を踏まえれば、正しい判断だったと考えています」
前述の関係者によると、今回明らかになったOYOのアメリカでの人員削減は、2段階に分けて社員に通知。まずは1月22日にテキサス州ダラスで行われた従業員総会で最初の解雇計画が伝えられ、29日には追加の解雇が発表された。前出のスタッフ宛てメモによると、後者の主な対象は営業および営業支援部門になるという。
OYOは2019年6月にプレスリリースを出し、アメリカでの事業拡大に投資する計画を発表。ダラスに北米本社を、さらにシカゴとマイアミ、ニューヨーク、サンフランシスコ、シアトルに拠点を開設することを明らかにしたばかりだった。
別の関係者によると、今回の人員削減に伴い、ダラスの北米本社は現在入居している(同じソフトバンクグループの出資先である)WeWorkのリース物件から移転する模様だ。
ビジネス特化型SNSリンクトインのプロフィールを見ると、北米本社勤務の営業スタッフのなかには、すでに1月中にOYOを去った人も散見される。ただし、それが今回明らかになった大量解雇の一部なのかは定かではない。
また、前出のメモによると、解雇されるスタッフは「可能な限りすべてのアシストとサポート」を受けられるが、契約解除にかかわる会社提案の詳細は明らかになっていない。事情に詳しい関係者は、人員削減の対象となるスタッフは最大3カ月の退職金を受け取れると話している。
求人は激減、行政や警察への便宜供与疑惑も
インドではOYOの運営体制に疑惑の目が向けられている。
REUTERS/Adnan Abidi
コワーキングオフィスのWeWorkが内部崩壊したいま、金を食うばかりのソフトバンクグループ出資企業のなかで、OYOはいわば"救いの神"のような存在だ。
2014年の創業から今日までに30億ドル(約3250億円)の資金を調達。うち直近の7億ドル(約760億円)はリテシュ・アガルワルCEO自らが拠出し、ライトスピードとセコイアが保有する株式を買い戻した。その時点でOYOの評価額は100億ドル(約1兆800億円)に達している。
調達した資金の一部は、インドを中心とするスタッフ増強に投じてきた。アメリカでも2019年7月以降、20件弱の求人を出していたが、2020年1月末時点で10件弱まで減った。グローバルでみても、2019年8月の775件がピークで、2020年1月には23件まで落ち込んでいる。
OYOは、ソフトバンクグループが出資するなかで最も評価額の高い非上場企業のひとつであることから、「インドの至宝」と呼ばれてきた。
地方のホテルをフランチャイズ化することで、スマホアプリから80カ国以上のホテルを予約できる仕組みをつくり上げたものの、Wi-Fiの設置や内装などリノベーション関連のコストがふくらみ、ときにフランチャイジー側と衝突するなどの問題に直面していた。
米ニューヨーク・タイムズの記事(1月2日付)によれば、他のソフトバンクグループの出資先と同様、OYOも成長拡大を加速するための施策に疑問符を(とくにリテシュ・アガルワルCEOに対して)突きつけられている。
同記事によると、OYOの提供する物件のうち数千件について、無認可のホテルやゲストハウスが含まれており、そうした問題で規制当局とのトラブルを避けるため、警察や行政関係者を無料で宿泊させていたという。
(翻訳・編集:川村力)