KDDI社長が楽天モバイルに苦言「ヒドいのではないか」ユーザー流出に警戒感も

KDDI累積の業績

第1〜3四半期の累積連結業績。

撮影:小山安博

KDDIは1月31日、2020年3月期第3四半期(10〜12月)の連結決算を発表した。

第3四半期までの累計売上高は、前年同期比3.5%増の3兆9025億7600万円、営業利益は同2.6%増の8438億6900万円、最終利益は同5%増の5308億7600万円となり、増収増益だった。

上期(4〜9月)累計では増収減益だったが、第3四半期までの累計では増収増益に転じた。通期予想に対する進捗も順調として、さらに今後の持続的成長に向けて5Gやau PAYなどの準備を強化していく方針だ。

決算会見で、同社の髙橋誠社長は4月から新規参入する楽天モバイルについてコメント。2019年10月の本格サービス開始が延期されたことについて不満を口にした。

髙橋社長、楽天に「ちょっとヒドいのではないか」

髙橋誠社長

KDDIの髙橋誠社長。

撮影:小山安博

KDDIは、携帯電話事業者として新規参入する楽天モバイルにローミング先として回線を提供している。

楽天は2019年10月に試験サービスを開始し、4月から本格サービスを展開する見通しだが、現時点で基地局数は3432局にとどまる。エリア外はKDDIの通信網に国内ローミングという形で接続し、カバーしている。

楽天の試験サービスは、「無料サポータープログラム」という形で、通話・データ通信とも無制限かつ無料。第1弾として2019年10月から東名阪の一部地域の5000人限定で実施。当初計画では、2019年10月から本格展開として有料サービスを提供する予定だったが、2020年4月まで延期していた。

楽天無料サポータープログラム

楽天は現在「無料サポータープログラム」としてサービスを展開している。

出典:楽天モバイル

髙橋社長は「(2019年)10月開始と思っていたので、ローミング収入をあてにしていた」とコメント。

ローミング収入は従量制で、データ利用量が増えれば増えるほど、KDDIの収入も増える。しかし、これが5000人限定の試験サービスになったことで、髙橋社長は「(ローミングのための)ネットワークも全部準備していたので、ちょっとヒドいのではないかという話を(楽天側と)した」と明かした。

とはいえ、本格サービスを前提としてローミング収入を計算していたKDDIは、「下期に計画修正で織り込み済み」(髙橋社長)としており、収入減による決算への影響は限定的と考えているようだ。

KDDIは楽天に警戒感を強める

KDDIと楽天の連携

KDDIと楽天はローミング以外にも連携をとる部分は多いが、髙橋社長は「警戒していく」と話す(写真は2018年11月撮影)。

撮影:伊藤有

楽天はこの1月からサポータープログラムにさらに2万人を追加し、4月からの本格サービス開始に向けて準備を進めている。au PAYや流通など、楽天との連携を進めているKDDIだが、ローミングは継続するとはいえ、ビジネスとしては真っ向から対立することになる。

これに対して髙橋社長は「警戒している」と発言。楽天の基地局はまだ少なく、エリアも狭いため、「最初の段階は加入者が少ない」(髙橋社長)。自然とトラフィック量も少なく、「言葉が悪くて申し訳ないが、ネットワーク的に“スカスカ”なので、通信速度は速くなる」と予測する。

無料サポータープログラムでは、2019年12月にデータ利用量が平均15GB/月になり、ローミング先となる高橋社長自身も「思ったより使われている」という認識。

楽天の料金プランについて髙橋社長は、(大容量だと相応のローミング料金が発生するため)小容量で低価格という点を強みにしてくると見ており、ネットワーク品質で有利な楽天にユーザーが流出することを警戒する。

髙橋社長は「警戒を怠ることなく、しっかり対応しなければと思っている」と強調。低価格帯でもユーザーに訴求するサービスを用意するなど、つなぎ止めを強化していく考えを示している。

(文、撮影・小山安博)


小山安博:ネットニュース編集部で編集者兼記者、デスクを経て2005年6月から独立して現在に至る。専門はセキュリティ、デジカメ、携帯電話など。発表会取材、インタビュー取材、海外取材、製品レビューまで幅広く手がける。

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