2月4日、NTTドコモとメルカリは決済事業を含む業務提携を発表した。
撮影:小林優多郎
NTTドコモとメルカリは2月4日、業務提携を正式に発表。決済を含めた計5項目における分野で両社は互いの開発や加盟店開拓などの人的リソース、各種購買データなどを共有して活用する。
- アカウント連携:「メルカリID」と「dアカウント」が連携可能に
- メルカリがdポイント加盟店に:2020年5月以降、アカウント連携後、メルカリでの購入時100円(税込)につき1ポイント付与。貯めているdポイント1ポイント=1円としても使える
- 決済事業の連携:2020年初夏ごろ、「メルペイ」および「d払い」の残高、ポイント連携を実現予定。加盟店の共通化、開拓も行われる
- ドコモショップでの連携:現在も一部店舗で実施中の「メルカリ教室」を全国のドコモショップに拡大
- 新規事業創出の検討:両社の持つデータを連携し、新サービスやソリューションの提供を模索
発表当日から2月24日までの間「メルカリでd払いを使うと+10%還元キャンペーン」を実施。期間中、キャンペーンエントリー後にメルカリで「d払い」を使って購入すると、通常の200円(税込)で1ポイントの付与に加え、10%分のポイントおよび決済手数料に相当する100ポイントのdポイント(期間・用途限定)を付与する。
メルカリとNTTドコモの業務提携内容は5項目に分けられる。
メルカリとしてはドコモと連携することで、ドコモの顧客基盤や人員、ドコモショップを含めた資産を活用する狙い。ドコモとしては、PayPayなどと比べて遅れをとっている中小規模の加盟店開拓、キャリア色の薄いメルペイの顧客を自社のポイント会員基盤に誘引したい狙いがある。
未確定な部分の多い提携内容詳細
とはいえ、互いの規模も、サービスの出自も異なる2社だけに、両社が強調する「利用者のメリットとなるシームレスな連携」を実現するのは簡単なことではない。特に決済事業の連携に関しては、現時点で確定していない点が多い。
以下で、Q&A形式で、現時点での方針や発表内容を整理してみた。
Q. メルペイ残高とd払いの残高は同じになる?
NTTドコモとメルカリ(メルペイ)は、それぞれ別の「残高」を持っている。
A. お互いに独立した残高のままだが、機能的な連携を検討中。
メルペイにはメルカリでの売上金や銀行口座から入金できる「メルペイ残高」、d払いにはドコモ口座を統合した「口座残高」がある。
メルカリCEOの山田進太郎氏もNTTドコモの吉澤和弘氏も、「統合」ではなく「連携」を強調。それぞれの残高は連携後も独立していく方針を明確にしている。
ただし、連携後もメルカリ内では決済手段としてd払いが選択できるため、今まで通りNTTドコモの口座残高はメルカリ内では使用できる。逆にメルペイ残高をNTTドコモの関連サービス(dショッピングやdデリバリーなど)で利用できるかは「方法も含めて検討中」(両社広報担当)という。
Q. ドコモやd払いユーザー以外でもメルカリでdポイントは貯まる?
メルカリは今までもネットの「d払い加盟店」だったが、5月以降は「dポイント加盟店」にもなる。
A. 通信回線や支払い方法に関係なくdポイントが貯まる・使える。
メルカリは2020年5月以降、dポイント加盟店になる。つまり、街のdポイント加盟店と同じく、支払い方法を問わず、dアカウントとメルカリIDの連携さえできればdポイントが貯まる・使えるようになる。
また、dアカウント・dポイントは現在もキャリアフリーのサービスだ。すでにdポイントカードなどを持っていれば、メルカリで貯めたdポイントをローソンやマツモトキヨシなどの街中の加盟店で利用したり、その逆もできる。
Q. メルペイとd払いの加盟店や、決済用QRコードは統一される?
NTTドコモのd払いの加盟店数は約136万カ所。一方、メルペイの加盟店数は170万カ所ある、としている。
A. 加盟店もQRコードも、統一化を目指している。
前述のとおり、両社は「加盟店の共通化、開拓」を掲げている。
そのため、将来的には現在のd払い加盟店ではメルペイ、メルペイ加盟店ではd払いが使えるようになるビジョンを描いている。
決済に利用するQRコードに関しても「統一化できる方向を目指したい」(両社広報)としているが、「細かい仕様は未定」(同)だ。
Q. 両社の「データ連係」で目指すものは?
両社のデータを掛け合わせたソリューションの開発などを模索していく。
A. まだ具体的なものは見えない。
ドコモとメルカリがタッグを組むメリットとしてあげられているものの1つに「両社のデータの連係」がある。
ドコモはdポイントで蓄積している「1次流通の購買データ」とネットワーク技術を活かした「行動統計情報」を持ち、メルカリは国内最大規模のフリマアプリ内の「2次流通の購買データ」を持っている。
2つの異なるデータを掛け合わせて何がわかるかがポイントだが、メルカリの山田氏は「具体的なものが現在あるわけではない」と詳細は未定と回答。
山田氏は「主にメルペイで、1次流通のメーカーさんとデータの連係の話はしている」と話し、 ドコモの吉澤氏は「私どものデータとのかけ算によって(可能性は)無限に出てくる」と語っている。
MoPAなき今、生き残りのために手を組む2社
写真左よりメルカリ代表取締役CEOの山田進太郞氏、NTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏。
ヤフー(PayPay)とLINE(LINE Pay)の経営統合の発表以降、スマートフォン決済業界、共通ポイント業界の再編が急速に進んでいる。1月23日には、メルペイがOrigami買収を発表、QRコード決済事業では後発のKDDI「au PAY」も自社独自ポイントから共通ポイント「Ponta」に切り替えると発表したばかりだ。
山田氏は業務提携の相手としてドコモを選んだ理由を「以前からもいろいろな付き合いをしてきた」と説明。従来のメルカリ内でのd払いの取り扱いや、一部ドコモショップでのメルカリ教室の開催などの施策の延長線上であることを強調している。
けれども、スマホ決済を追いかけてきた記者の目線からは、違う印象を持つ。メルペイも入っていた決済の4社連合「Mobile Payment Alliance(MoPA)」が崩れた今、激しい競争環境で両社が生き残りのために手を組んだ、というのが実際のところではないだろうか。
なお、メルペイとKDDIは2019年2月20日に加盟店開拓における相互営業連携を発表している。メルペイ広報によると「KDDIとの連携は今日まで続いている」とのことだが、今回のドコモとの業務提携の内容がどのように影響が出てくるか、KDDIの出方も注視しておきたい。
(文、撮影・小林優多郎)