「メガネ禁止」にNO!働く環境を変えてきたJINSがいま、伝えたいこと

JINS田中CEO

田中仁。ジンズホールディングス代表取締役CEO。1963年群馬県前橋市生まれ。1988年にジェイアイエヌ(現:ジンズホールディングス)を設立、2001年からアイウエアブランド「JINS」をスタートさせ、メガネの製造小売に参入。多様なデザインに加え、手頃な価格帯、機能を付加した機能性メガネなどがヒットし、メガネの年間販売数は国内トップ。中国や台湾、米国など海外にも進出。

「あの記事、読みましたよ。人を見た目で判断するなんてナンセンスですよね」

JINSを率いる田中仁CEOが開口一番に指摘したのは、2019年にBusiness Insider Japanに掲載された「職場でメガネを禁止される女性たち」の記事だ。百貨店やショールームなどの一部の職場でメガネ禁止を言い渡された女性の声が紹介されると、SNS上では「女性差別だ」「時代錯誤」と批判の声があがった。田中CEOも思いは同じ。特に「メガネが悪い印象を与えるものだと捉えられていることが残念」と話す。

JINSには、従来のメガネの在り方を変えながら、メガネを通して問題解決をしてきたという自負がある。製造小売(SPA)のビジネスモデルを採用し、デザインを豊富に、低価格にすることで、メガネをファッションアイテムとして気軽に楽しめる存在に変えたのもその一つ。

「子どもの頃にメガネが原因でいじめられていた女性が、JINSの採用試験を受けに来てくれたことがありました。彼女は親から『メガネは高いから大切に扱いなさい』と厳しく言われて育ち、メガネに良い印象を持っていなかったそうです。けれども『JINSに出合ってメガネは楽しいものだと気付いて、人生が一変しました』と涙ぐみながら話してくれました。メガネは、その人の個性を効果的に発揮してくれるアイテムです。それをネガティブなもののように捉えるのは残念です」

価格が高いから、どんな服にでも違和感なく合わせられる無難なメガネを選ぶ。無難なメガネを選ぶから、人に与える印象も無難になる。そんなメガネユーザーの悩みから解放したのがJINS。毎日の生活の中で制約になっていたメガネを、楽しみに変えたのだ。

暮らしを快適に、豊かにするメガネをつくる

JINS田中社長

「何のためにメガネを売るのか」。JINSのビジョンを見直す中で「新機能」という価値に気づいた田中CEO。ブルーライトカットや、花粉対策といった機能を付けることで、メガネユーザーの裾野を広げた。

JINSが手がけてきたのは、ファッション性にフォーカスしたメガネだけではない。PCやスマートフォンが発するブルーライトをカットする「JINS PC(現JINS SCREEN)」や、花粉症対策になる「JINS 花粉Cut」といった機能性メガネを世に出し続けてきたのは、よく知られている。

「目が疲れるからといって、PCを使わないで仕事をするとか、生活を変えるのは現実的ではありません。それならばブルーライトから目を守るメガネを誰でも気軽に買えるようにすれば、働く人たちの負担を減らせるのではないかと考えました」

田中CEOは上場当時、「何のために我々は存在するのか」を問い直した時期がある。そこで出した答えが、かつてのJINSの企業ビジョン「メガネをかけるすべての人に、よく見える×よく魅せるメガネを、市場最低、最適価格で、新機能新デザインを継続的に提供する」というもの。この旗を立てた後、JINSは快進撃を続けていく。

「メガネは単に視力矯正のためだけにあるものではないし、もちろん見た目だけで規制されていいものでは決してない。メガネは今や、人々の暮らしを楽しく快適に、豊かにするものなのです」

田中CEOの言う「ナンセンス」には、そんな強い思いが込められている。

今、働く現場で「女性活躍」を、と言われ始めて久しい。女性が自分らしく働き、その能力を十分に発揮するには、その属性や見た目で差別されないことはもちろん、いかに「働きやすい」環境を整えるかも必要だ。メガネはその「働きやすさ」を支えるツールの一つにもなっている。

「見る」を通して、人々に新しい世界を

JINS田中CEO

田中CEOが考えるメガネは、もはや視力矯正だけを目的にかけるものではない。「見る」から発展させて、人々の人生を豊かにしたいという強い思いがある。

メガネの概念を広げて新市場を創出し、安定して成長を続けてきたJINS。だが田中CEOは「10年後はメガネを売っているかどうかわからない」という。

「目指すべき姿は『Magnify Life』、つまりお客様の人生や生活を拡張する会社になるということです。お客様に新しい世界を提供できるなら、必ずしもメガネにこだわる必要はありません。今は『見る』という事業ドメインでお客様をマグニファイすることを考えています」

それを象徴する事業の一つが、「見る」という行為から生まれる人の感情や集中力に対してソリューションを提供するシェアオフィス事業だ。

「飯田橋にある東京本社の29階に、会員制ワークスペース『Think Lab』をつくりました。その背景には、2015年に発売した、メガネ型のウエアラブルデバイス「JINS MEME」があります。これは目の動きをセンシングして、その人の興味関心の度合いや運転中の眠気を察知します。これを使って集中力を可視化し、メガネそのものではなく、集中して仕事ができる環境を提供しているのです」

JINSが目指しているのは女性はもちろん、誰もが自分の能力を最大限に発揮できる社会を後押しすること。それが今は「メガネ」というツールを通して、その価値を提供している。「10年後はメガネを売っているかどうかわからない」 ── という発言の真意は、今あるメガネの概念にとらわれず、新しい世界を提供し続けるという決意表明だ。IoTが普及する中で、スマホの次のデバイスになると言われているのがメガネ。

「今、皆さんは裸ではなく普通に洋服を着ていますが、私は将来、メガネも同じように身に着けていないと不自然なものになると思っています。そのときはさすがに、『女性はメガネ禁止』なんていう職場はなくなっているのではないかなと思います」


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