クックパッド上場後初の最終赤字、営業利益8割減。レシピ検索大手から脱皮なるか

クックパッド

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料理レシピ検索サイト大手、クックパッドが正念場だ。

2月7日に発表した2019年12月期の連結決算は、9億6800万円の最終赤字。前年の黒字決算(最終利益4億700万円)から、上場以来初の赤字決算となった。

売上高は1%減の117億5300万円と横ばいだが、本業のもうけを示す営業利益は前年比82%減の3億600万円と大幅減に。国内外の新規事業のため人件費が増加したこと、海外事業ののれん代を計上したことなどが影響したという。

国内の平均月間利用者は3年前から1000万人近く減少し約5200万人、海外事業での利用者は約4000万人台で横ばいだ。依然として巨大なユーザー基盤を持ちつつも、有料のプレミアム会員が伸び悩み、広告収入も減少するなどレシピ事業が苦戦している。

伸び悩む収益の柱、有料会員

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クックパッドのビジネスモデルは、レシピ事業を中核に個人課金と広告モデルのハイブリッド型。1カ月あたり、国内で5251万人が利用する、巨大なユーザー基盤を持っている。しかし、その数は2017年時点の6134万人からは1000万人近く減少してきた。

売り上げの柱は、有料のプレミアム会員によるものだ。しかし、その数は2019年第4四半期で198万人。2017年第1四半期の195万人からは増やしているものの、この3年間のピークの204万人からは下り坂だ。クックパッドは「前年のキャンペーンが好調だったものの、グーグルのアルゴリズム変更なども伴い、同水準を維持できなかった」としている。

国内レシピサービスの広告売り上げもこの3年間で縮んでいる。同社は「食品業界で広告資源が(クックパッドのようなレシピ事業から)テレビCMや店頭販促へシフトしていることが影響した」と分析している。

従来モデルが伸び悩む様子が見て取れる。

海外事業への投資で営業利益押し下げ

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出典:クックパッド決算資料

クックパッドは2014年から本格的に海外事業へ注力してきた。現在は英語、スペイン語、ベトナム語、タイ語、インドネシア語、アラビア語など多言語で展開。海外レシピ数は2019年第3四半期で日本語レシピの数を抜いている。ユーザー数も4185万人と着実にユーザー基盤を築いてきた。

こうした海外注力フェーズで、海外事業の人員増加による人件費がかさんだこと、海外のれん代の減損損失が、営業利益を押し下げた。なお、海外での有料会員サービス開始は現時点で、インドネシアでのトライアル版にとどまっており、これからの課題となっている

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クックパッドが公表している、2017〜2019年の決算状況の推移。営業利益率の落ち込みが目立つ。

出典:クックパッド決算資料

これらの結果として、営業利益率は2019年第4四半期でマイナスに落ち込み、通期決算は最終赤字を計上。2017年第1四半期時点の営業利益率53%と比較すると、大きな落ち込みを感じさせる。

共働き家庭をターゲットに生鮮食品のECマート

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出典:クックパッド

こうした中、クックパッドは新たな事業基盤づくりへと、すでに舵を切っている。2017年からの10年間を「投資フェーズ」と位置づけ、料理領域での事業多角化に力を入れている最中だ。注力事業は以下のとおり。

  • 料理動画事業「クックパッドTV」
  • 共働き家庭をターゲットにした「生鮮食品」ECプラットフォーム「クックパッドマート」の展開
  • 料理道具や器のEC「Komerco」

単なるレシピサービスの会社から脱却し、ミッションは「毎日の料理を楽しみにする」。そのためにも現在は、国内外で採用を進め、海外事業や新規事業に投資する「コストが先行する期間」と、説明する。

しかし、動画サービス事業ではエブリーの「デリッシュキッチン」、デリーの「クラシル」などレシピ動画が先行。2017年参入のクックパッドは出遅れた感が否めない。ECプラットフォームは、食品市場のEC化が進んでいない日本での定着および、拡大に伴う物流インフラの確保が明暗を分けそうだ。いずれも成否は未知数だ。

レシピ検索大手から、料理の課題解決に挑むグローバルなプラットフォームへと進化できるのか。今後の展開はクックパッドの正念場となりそうだ。

(文・滝川麻衣子)

編集部より:初出時、創業以来、初の赤字としていましたが、 正しくは上場以来、初の赤字です。訂正いたします。2020年2月10日 10:30

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