ポーランドの首都ワルシャワ市内で。Netflix(ネットフリックス)は世界に1億6000万人超の会員を抱える。
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- Netflix(ネットフリックス)はテック・メディア業界で最も人気がある就職先のひとつ。従業員の満足度も非常に高い。
- 2020年、ネットフリックスに就職するために本当に必要なものは何か。採用担当役員、元従業員、さらにスカウト会社のエキスパートに話を聞いた。
- 完全に理解しておくべきは、企業文化に関する文書「ネットフリックス・カルチャー」と、ビジネスの最優先課題。いずれも、自分のスキルや経験と関連づけておく必要がある。
ネットフリックスは全世界で数百のポジションの採用を行っており、勤務地はカリフォルニア州ロスガトスの本社をはじめ、東京、パリなど多数にわたる。
同社はディズニー、アップルなども参入する動画ストリーミングの分野で世界最大規模を誇り、就職先としてもテック企業のなかでトップレベルの人気だ。従業員の満足度も非常に高い。
ネットフリックスは近年、事業拡大に伴う人員を確保するため、世界全体で200人以上ものリクルーターをかき集め、採用活動のほとんどを自前で行っている。
ネットフリックスに就職するには何が必要なのか。Business Insiderはネットフリックスの採用担当役員、元従業員、さらにスカウト会社のエキスパートに話を聞いた。
「カルチャー」を徹底的に読み込む
ネットフリックスの人材採用担当副社長、ヴァレリー・トダ。
提供:Netflix
志望者に求めるものをネットフリックスのリクルーターにたずねると、「好奇心」「勇気」「無私無欲」などの高尚な資質があがってくる。
じつは、単なる常套句ではない。これらの資質は、公式ウェブサイト掲載の「Netflix Culture(ネットフリックス・カルチャー)」でも詳細に述べられていて、すでに同社の企業文化に深く根づいている。
英語で4000ワード以上にもなるこの長大なテキストは、10年前に初めて公開されたとき、物議を醸した。つねに優秀な成績を求める、正式な休暇制度がない、「才能あふれる嫌なヤツ」はお断り、といった経営哲学が盛り込まれていたからだ。
現在公開されている「ネットフリックス・カルチャー」は当時とは書き換わっている箇所もあるが、10項目のコアバリューは変わっていない。「判断力」「コミュニケーション」「好奇心」「勇気」「情熱」「無私無欲」「イノベーション」「一体性」「誠実」「影響力」だ。
もしあなたが真剣にネットフリックスへの就職を考えているなら、このテキストを徹底的に理解しておく必要がある。採用プロセスのあらゆる段階で、あなたがこれらの理想を体現できる人材だということを証明できるよう準備しておかねばならない。
ネットフリックスの人材採用担当副社長、ヴァレリー・トダはこう断言する。
「まず最初にやるべきは『ネットフリックス・カルチャー』を読むことです」
例えば、面接では忌憚のない意見を求められるだろう。ネットフリックスのコアバリューにある「コミュニケーション」と「誠実」を問われるわけだ。同社は応募者のスキルと同じくらい、企業文化との親和性を重視する。
最近の面接でトダは、ネットフリックスの全米向け作品ラインナップをいくつか変更できるとしたら、あなたならどんなふうに変える?と質問したそうだ。
それに対し、メキシコ出身のある志願者はこう答えたという。「ネットフリックスはグローバル展開を目指しているのですよね、それならアメリカ以外の地域で提供しているプロダクトをどう変えたいかについても質問すべきでは?」と。
「その切り返しには本当に驚かされましたね。彼女が当社についてよく調べて来たこと、当社をより良くしようと考えていることが伝わってきました。志願者にはぜひ質問を用意して面接に臨んでもらい、私たち社員が考えるような既存の発想を打ち崩してほしい」(トダ)
ネットフリックス・カルチャーをよく読んで、それが自分にとって正しいと思えるか、素直に考えてみるといい。例えば、「コミュニケーション」「情熱」といったコアバリューだけでなく、同僚に対して遠慮なく意見を述べることや、それぞれの分野でトップの業績を上げることへの期待が書かれてある。
ちなみに、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは2018年、ネットフリックス・カルチャーが徹底された結果、手荒い解雇がひんぱんに行われたと報じている。
「仕事を得るために面接で芝居を打っても、自分のためになりません。きわめてチャレンジングな職場で、採用されたあとも『ネットフリックス・カルチャー』からは逃れられません。仕事をしている間はいつでも、あらゆる会議について回るのです」(元従業員)
ネットフリックスのビジネスを理解する
グローバルでの規模拡大を続けるネットフリックス。
撮影:小林優多郎
もうひとつ、ビジネスのありようについてもよく理解しておくことが大切だ。
ネットフリックスは、約1億6000万人の会員のうち1億人以上がアメリカ以外に居住し、ヨーロッパ、中東、アフリカなどで急成長中のグローバル企業だ。
テック企業として動画ストリーミングサービスを提供してきたが、近年はそれ以上に、エンターテインメント企業のような動きのほうが目立つ。番組制作に投じる費用は、テクノロジーにかけるそれを数十億ドル上回る。
「当社のビジネスをよく知ることは非常に重要です。どのようなコンテンツに力を入れているかを理解しておかなくてはなりません。当社が何を目指しているのか、すでにたくさんの記事が出ているので、ぜひ読んでおいてください」(トダ)
ネットフリックスはリンクトインやツイッターなどのSNSで「WeAreNetflix」というアカウントを運営し、同社での仕事がどのようなものか発信している。また、ポッドキャストでも同タイトルの番組を配信。役員やリクルーターがそれぞれのチームの取り組みを語っている。
YouTubeで「WeAreNetflix」アカウントが配信中の動画。ネットフリックスにおける「フィードバック」とは何かについて討論。
'WeAreNetflix' YouTube Channel
そして2020年、ネットフリックスが最大の課題としてあげているのが「スケール(規模)」だ。
「私たちがいま全力を注いで探しているのは、スケールアップの視点から当社に貢献でき、自由と責任を重んじる企業文化のなかで働くことを求め、リスクを取ろうとする人材、そして当社が目指しているものを力強く推進してくれる人材です」(トダ)
志願者の皆さんは、これまでにかかわったなかで周囲や社会に大きなインパクトをもたらしたプロジェクトにスポットを当て、そこで発揮された自分の力が際立つように語るとよいだろう。
「もしあなたが中小企業やスタートアップの出身だとしたら、職責の幅広さを強調することで、自身の影響力をアピールできるでしょう。
つまり、そこには多岐にわたる細かな仕事があって、あなたはそれをやってのけた。だから、当社でもさまざまな種類のプロジェクトに取り組み、幅広い分野で大きな影響をもたらすスケール感のある仕事ができるんだ、というふうに能力をアピールするわけです」(トダ)
(翻訳:山崎恵理子、編集:川村力)