フィンランドのサンナ・マリン首相(右)が、両親がともに7カ月の育児休暇を取ることを承認した。
Reuters
- 34歳のサンナ・マリン首相率いるフィンランド政府が、子どもが生まれた両親に7カ月の育児休暇を与える新たな制度を施行する。
- この制度は、新たに母親となった人々によい影響を与えそうだ。女性が出産後、パートナーと一緒にいることは、身体的・精神的な健康にとてもよいと研究が示唆している。
- スウェーデンでは子育てのために両親ともに休職した場合、母親が病院に行く回数が少なく、抗不安薬の必要性も低くなったという。
フィンランドが産後うつを減らすために大きな一歩を踏み出した。
34歳のサンナ・マリン(Sanna Marin)首相率いるフィンランド政府は、子どもが生まれた後、両親に7カ月の育児休暇を与えることを決めた。妊婦は、産前にさらに1カ月、休暇を取得することができる。
NPRによると、この改正は、母親は4カ月、父親は2カ月と性別に応じた内容の現行制度に代わるもので、2021年から施行される。
マリン首相は、今回の改正は男女平等をより進めるもので、広範囲な社会改革を行っていくための政府の計画の一部であると述べている。マリン首相は世界で最も若い女性首相であり、閣僚も過半数が女性だ。
この進歩的な制度は、父親に新生児といられる時間をより多く与えるとともに、母親の身体的および精神的健康を改善し、産後うつを回避することもできる、と示唆する研究もある。
パートナーと家にいると、産後の不安は解消され、幸福度も増す
赤ちゃんが生まれると、みんな赤ちゃんに目を向けるが、母親たちは非常に危険な状態にある。
世界的な統計では、新たに母親になった人々の17.7%が、産後うつを経験している。
考えられる原因はさまざまだが、スウェーデンの新たな研究は、新生児の世話を手伝うことができる父親が家にいるというだけで、母親が精神的に健康でいられるようになる、と示唆している。スウェーデンの育児休暇は、ヨーロッパでも最も手厚いもので、親1人につき240日取得することができるとNPRは報じている。
子どもが生まれてから数カ月間父親が家にいると、出産に関連した症状で母親が通院する割合は14%低い。抗生剤の処方率は11%低く、抗不安薬の必要性も26%低くなる。
スタンフォードの経済学者、ペトラ・パーソン(Petra Persson)氏とマヤ・ロシン=スレイター(Maya Rossin-Slater)氏が著した、全米経済研究所(National Bureau of Economic Research)の新たな論文は、世界で最も手厚い、北欧の国における育児休暇制度の影響に着目した。
スウェーデンは2012年、父と母の両親が同時に有給の育児休暇を取得できる「ダブル・デイズ(Double Days:両親がいる日々)」改革法案を可決した。両親は子どもが生まれてから1年間、最大30日使うことができる。連続でも、分割でも良い。
その結果、育児を協力して行うことの重要性が明らかになった。
「産後すぐに病院でできることには目が向けられてきたけれど、母親の家庭での環境はそうではなかった。産後の時間の大半を家庭で過ごすのにね」とロシン=スレイター氏はニューヨーク・タイムズに語っている。
アメリカには産後に利用できる有給休暇や雇用保障がほとんどない
父親が近くにいることは、母親が妊娠出産から回復するのを助けるようだ。今月発表された別の研究で、妊娠は女性の身体を極限状態にすることが明らかになった。そのレベルは、北極のトレッキングや、ツール・ド・フランス(Tour de France)完走と同等だ。
アメリカは、先進国の中でも数少ない、政府による育児休暇制度のない国の1つだ。だが実際には、アメリカ人のほとんどが、有給休暇制度を支持している。有給の育児休暇制度があるのは、カリフォルニア州、ニューヨーク州などいくつかの州だけだ。
有給休暇制度がないことで、多くの親は無給の産休を取らざるを得なくなり、それが家庭を困窮させることになる。これが、他世代に比べてミレニアル世代の家庭に子どもが少ない原因になっているのかもしれない。
「我々が言っているのは、家庭環境の中で重要なことの1つで、父親または子どもの世話をする別の大人の存在だ」とロッシン=スレイター氏はニューヨーク・タイムズに語った。
(翻訳:Ito Yasuko、編集:Toshihiko Inoue)