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【世界22カ国調査】最も仕事に自信が持てない・運任せなのは日本人。家族と過ごしたい男性は3割以下

世界22カ国で最も仕事に自信がないのは日本だった

さらに男女の格差も大きく、機会の均等を求め、家庭のサポート不足がキャリアを阻害していると感じている女性に対し、男性は家族や友人と過ごす時間に価値を感じていないことが明らかになった。

仕事に世界一自信がない日本人

リンクトイン

仕事で成功するための自信を世界一持てない日本。一体どうして?

出典:リンクトイン「仕事で実現したい機会に対する調査」2020年

調査を発表したのは、世界で6億7500万人が利用するビジネス向けSNS「LinkedIn(リンクトイン)」。カナダ、アメリカ、イギリス、オーストラリア、中国、シンガポールなど22カ国に住む18~65才までの3万570人を対象に、インターネット調査を行った(「仕事で実現したい機会に対する調査」)。

「今後1年の経済への展望」「今後1年の個人的な経済状況」「クオリティオブライフ(幸福度)」「クオリティオブライフ(親との比較)」「国内における仕事関連のチャンスの有無」「今後1年の仕事における機会へのアクセスし易さ」「成功するという自信」の7項目中、日本は5つの項目で最下位を記録。仕事で実現したい機会に対し、最も悲観的で自信がないことが明らかになった。

日本の最下位は、前回2018年にアジア太平洋地域の9カ国を対象に同様の調査を行ったときに続き、2期連続だ。

政府や企業は何をすべきか?

交差点

撮影:今村拓馬

ランキングトップはインド、次いでインドネシア、中国という結果に。一方、下位5カ国は日本を除き、イギリス、スペイン、イタリア、フランスと全て欧州連合(EU)の関係国と、ブレグジットの影響などが見て取れる。

リンクトイン日本代表の村上臣さんは、今回の結果は「予想通り」だと言う。

2020年は働き方改革関連法案の目玉でもあった、社員と非正規雇用の待遇格差の是正を大企業に促す「同一労働同一賃金」、これまで大企業に対してのみだった罰則つきの残業時間の上限規定を中小企業にも導入、経団連が就活ルールを廃止し通年採用に舵を切るなど、「コーポレートガバナンスのキーになる年」(村上さん)だ。

「こうした国の政策が国民の実感までおりてきていないというのが、今回の調査結果から読み取れることです。例えば同一労働同一賃金についても、非正規の待遇を上げるのではなく、正社員の賃金を下げたり福利厚生をカットしてボトムに合わせるのではないかと懸念する声も聞こえてきます。世界の潮流はワークライフバランスやクオリティオブライフの追求です。個人の幸せの先に国や企業の理想もあるという。日本も取り残されずにやって行けるか、正念場だと思いますね」(村上さん)

「運任せ」で「好きなこと」を仕事にすることを諦める傾向も

リンクトイン

出典:リンクトイン「仕事で実現したい機会に対する調査」2020年

自信のなさの裏返しか、積極性にも世界と大きな差がついた。仕事で関心を持っている機会について、世界では「ワークライフバランス」「自分が大好きなことが出来る」がそれぞれ40%で同率1位。日本もワークライフバランスは1位だったが、好きなことを仕事にすることには関心が低く、29%だった。

同様に、人生で成功するために重要なことは? という問いには、「一生懸命働く」が1位だったのは世界と共通だが、次いで日本では「幸運」が66%を占めた。ちなみに世界の2位は「変化を喜んで許容する」で、運は9位になっている。前出の村上さんは言う。

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出典:リンクトイン「仕事で実現したい機会に対する調査」2020年

『人生で成功するために重要なこと』で『運』が上位にランキングされたのは日本のみ。新卒一括採用の終身雇用だと、誰かに引き上げてもらって昇進するパターンも多い。『あいつは上司に気に入られて運が良かった』と考えてしまうような、いわゆる日本型雇用の枠から抜け出せず、キャリアを他人任せにしてしまっている人も多いのではないかと感じます。

また『好きなことなんて仕事にできない』『仕事は我慢するもの』というマインドセットがいまだ根強いことも分かりました。雇用流動性が低い日本型雇用の影響もあるでしょう。でもこれは逆にチャンスでもあります。モチベーションを持って仕事をできていない人に、企業が今後どんなチャンスを与えることができるかが重要です」(村上さん)

日本では「高学歴・高所得の女性」も悲観的

リンクトイン

出典:リンクトイン「仕事で実現したい機会に対する調査」2020年

男女のジェンダーギャップも深刻だ。ジェネレーションZ世代(18-22歳)とミレニアル世代(23~38歳)の高学歴・高所得層は全世界的に男女ともに楽観的で自信がある一方で、日本の女性はたとえ高学歴・高所得であっても、男性よりも悲観的で自信がないという結果に。

人生で成功するために必要なことに関して、「機会均等(社会的平等)」と回答した割合も、男性が56%に対し、女性は68%だった。また、仕事の機会を阻害している要因として「家事サポートの不足」をあげたのも、男性7%に対し女性は16%とダブルスコア以上の差がつき、意識の差が浮き彫りになっている。

リンクトイン

出典:リンクトイン「仕事で実現したい機会に対する調査」2020年

国立社会保障・人口問題研究所の「全国家庭動向調査」(2018年)によると、夫婦の平日の1日の平均家事・育児時間はそれぞれ妻が夫の7倍、6倍になっており、実際に女性の負担が多いことも分かっている。

しかし今回の調査では「家族や友人と充実した時間を過ごす」ことに女性の41%が関心を持ち、重視しているのに対し、男性は28%にとどまるなど、状況が変わるのには時間がかかりそうだ。

「お一人さま志向」が日本で高まっている?

ビジネスパーソン

撮影:今村拓馬

そもそも「お一人さまの安定思考が高まっている」のではないかと、村上さんは見ている。良い生活にとって重要な要素について、「愛情のある関係」が世界で3位、特に欧米では20%以上が「子ども」が幸福な生活に重要な要素であると回答しているのに対し、日本では「愛情のある関係」は6位(21%)、「子ども」も12%と欧米と比べて8ポイント低かった。

一方で「精神的な豊かさ」と回答した人の割合は、日本は世界に比べて群を抜いて高かった。

愛情ある関係や子どもを重視していないことを考えると、この精神的な豊かさというのは対人関係によるものではないでしょう。日本は世界に比べて、変化を許容することにかなり消極的だということも今回の調査で明らかになりました。他人に縛られずに、安定した環境で自分が心地よく生きられればいい、そんな考えの人が多いのではないかと感じます」(村上さん)

(文・竹下郁子)

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