Business Insider Japan読者にも多い「30代」は、その後のキャリアを決定づける大切な時期。幸せなキャリアを歩むためには、転職にまつわる古い“常識”にとらわれず、刻々と変化する転職市場のトレンドをアップデートすることが大切です。
この連載では、3万人超の転職希望者と接点を持ってきた“カリスマ転職エージェント”森本千賀子さんに、ぜひ知っておきたいポイントを教えていただきます。
転職活動の成否を左右するのが「面接対策」です。さて、皆さんが志望企業に応募し、面接に進めることになったら、どんな準備をしますか? そして当日、何を伝えますか?
実はここで、ある「誤解」によってつまずく人が少なくありません。
その誤解とは、「自分が強みとするスキル・成功体験を全力でアピールしなければ!」というもの。もちろん、スキルや実績を伝えることは必須であり、とても重要です。でも、「それさえしっかり準備すればいい」と思うのは大きな誤りです。
スキル・実績のアピールだけに集中した結果、予期せぬ質問をされて戸惑い、グダグダになってしまったり、本当の強みが伝わらなかったり……結果、チャンスを逃してしまうことも多いのです。
では、スキル・経験を伝える以外に、どんな準備をしておけばいいのでしょうか。今回は、面接で特におさえておいていただきたい4つのポイントをご紹介します。
「それはすごいですね」で終わってしまう人
面接では「強みや成功体験を全力でアピールしなければ」と考えがち。でも企業が本当に聞きたいのは——。
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自分が強みとする経験・スキルをアピールすることに終始し、「相手企業のニーズ」という視点が抜け落ちている方、けっこういらっしゃいます。
けれど、面接で伝えるべきは「自分が自信を持っていること」ではなく、「相手企業が求めているものとの親和性があること」なんです。
どんなに優れたスキル・実績をアピールしても、相手企業がそれを必要としていなければ「それはスゴイですね」と褒められておしまい。採用には至りません。
ですから、求人票や採用情報ページに書かれている募集要件を読み込むのはもちろん、ホームページやIRページ、社長インタビュー記事などからも、相手企業が課題と感じていること、今後注力しようとしていることをつかんでください。
そこから、どんな人材を求めているかを想像し、自分の経験・スキルの中から合致する要素をピックアップして、それを重点的に伝えるようにしましょう。
極端な例を挙げるなら、「社長賞を受賞した大型プロジェクトのリーダー経験」より「半年間だけ他部署のプロジェクトを手伝った経験」のほうが高く評価されることだってあるのです。
「何ができるか」だけでなく「何をやりたいか」を
ある企業の求人に次の2人が応募し、面接でこう語りました。
Aさん:
「○○分野で8年間、***、***、***、***の業務を経験してきました。これらの経験を活かしていきたいと思いますが、御社にはどんなポジションがありますでしょうか」
Bさん:
「○○分野で2年間、***の業務を経験しました。今後は***、***まで経験の幅を広げていきたいと考えています。御社がこれから取り組もうとされている△△のマーケット開拓のプロジェクトに強い興味があり、ぜひ携わりたいと思っています」
経験・スキルはAさんの方が豊富で、入社後は即戦力になり得ました。しかし、採用されたのはBさんです。この2人の違いを、皆さんはどう感じましたか?
採用担当者は、Aさんをこう評しました。「『何ができるか』は分かったけど、『何がやりたいか』が分からない。受け身の姿勢で、今後の“伸びしろ”が感じられない」
一方、Bさんはその企業を研究していて、「これがやりたい」という志望動機が明確であること、成長への意欲が評価されました。
企業は、「これがやりたい」「こうなりたい」という目的意識を持っている人に対し、「成長性」を感じます。つまり、「○○ができます」だけでなく、「○○がやりたい」「○○ができるようになりたい」「○○になりたい」まで語れてこそ、相手の心に響くのです。
また、企業側が提供できるフィールドとやりたい方向性に親和性があるかどうかというポイントも重要です。
「成功」より「失敗」を企業が聞きたがるワケ
面接では皆さん、「成功体験」を語りたがります。反対に、「失敗経験」はなるべく隠しておきたいと思っていませんか? でも、企業から「失敗体験」を尋ねられること、けっこうあるんです。
別に「いじわるしてやろう」とか「粗探しをしてやろう」というわけではありません。その人の「失敗の乗り越え方」「失敗から何を学んだか」に注目しているんです。どんな試練や挫折を経験したか、どんな修羅場があったか、そしてそれをどう克服したかの経験エピソードからは、その人の人間性や礎になる胆力といったものが垣間見えるからです。
失敗の経験を聞かれたとき、「いやぁ、特にありませんね」なんてごまかすのはNG。失敗した経験がない人なんていないのですから。「ない」と答えたら、逆に「仕事の振り返りや反省ができない人なのだろうか」と不安を抱かれてしまいます。
「嫌なことはすぐ忘れるようにしている」という一見ポジティブなマインドセットをアピールしたい方もいるかもしれませんが、相手の捉え方は「現実逃避しているだけ」と、意外とネガティブだったりします。
もしくは、「本当に覚えていない」という方もいるかもしれませんが、面接前に一度振り返っておきましょう。面接で必ず聞かれるとは限りませんが、準備しておくに越したことはありません。
「失敗を招いた原因をどう分析したか」「どのように対処したか」「その失敗から何を学んだか」を振り返って整理しておくことをおすすめします。これまで意識していなかった自分の強みに気付くきっかけにもなるかもしれません。
「◯◯を成功させました」では不十分
「私が企画した商品がヒットし、1年で○億円の売り上げを達成しました」
「私が立案した営業戦略をチームで実践し、全国トップの売り上げを上げて表彰されました」
例えば、このような実績を持っていたら、面接では胸を張ってアピールしたいですよね。でも、相手企業からはこんなツッコミを受けるかもしれません。
「それって、今(前)の会社だからできたことなのでは?」
今(前)の会社が大手企業である場合、「会社のブランド力のおかげで売れたのでは?」「CMやプロモーションに潤沢な費用を投じられたから売れたのでは?」「チームメンバーが優秀だから戦略を確実に実行できたのでは?」——相手企業はそんな目で見ています。
応募先が中小企業や成長途上のベンチャーなどであれば、「予算がなくても、人材不足でも、成果を挙げられるのか?」を問われます。つまり、成功体験を場所が変わっても「自社で再現できるか」ということ。
ですから、成果・実績だけをアピールするのではなく、そこに至ったプロセスも語れるようにしておきましょう。例えば、「どのように着想を得たか」「どんな戦略を立てたか」「どんな独自の工夫を凝らしたか」「推進のために周囲をどう巻き込んだか」「壁にぶつかったときにどう乗り越えたか」など。
その経験が自分の中でノウハウ化、メソッド化されていれば、「自社でも再現してくれそう」と期待を持ってもらえます。
今回は、面接に臨むにあたっておさえておいていただきたい4つのポイント——相手目線、成長性、失敗経験、再現性をご紹介しました。ここぞというときの面接対策に、ぜひ役立ててくださいね。
※本連載の第4回は、2月24日(月)を予定しています。
(構成・青木典子、撮影・鈴木愛子、編集・常盤亜由子)
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森本千賀子:獨協大学外国語学部卒業後、リクルート人材センター(現リクルートキャリア)入社。転職エージェントとして幅広い企業に対し人材戦略コンサルティング、採用支援サポートを手がけ実績多数。リクルート在籍時に、個人事業主としてまた2017年3月には株式会社morichを設立し複業を実践。現在も、NPOの理事や社外取締役、顧問など10数枚の名刺を持ちながらパラレルキャリアを体現。2012年NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。『成功する転職』『無敵の転職』など著書多数。2男の母の顔も持つ。