2019年度第3四半期決算で「潮目が変わった」と話す孫正義氏。
出典:ソフトバンクグループ
ソフトバンクグループは2月12日、2019年第3四半期決算を発表。登壇した会長兼社長の孫正義氏は、前回の会見で「真っ赤っかの赤字決算だった」と振り返りつつ、「今回を一言で表すとしたら『潮目が変わった決算』」だと、同社の業績が回復傾向にあると強調した。
2019年度第1四半期から第3四半期の連結で、売上高は前年同期比1.1%減となる7兆898億円。営業利益は130億円の赤字。主な原因はSoftBank Vision Fund(以下、SVF)事業で、WeWorkの経営問題やUberの株価下落が影響している。
ソフトバンクグループの2019年度第3四半期連結決算。
出典:ソフトバンクグループ
これに対し、孫氏は「ソフトバンクグループの価値とは、有価証券の価値」とし、従来から主張している「保有株式価値−純有利子負債=株主価値」の考え方を変えず、「(戦略的持ち株会社であるソフトバンクグループにとって)営業利益は関係ない」と話す。
また、SVF事業に関しても、第3四半期決算(2019年12月末まで)には含まれていない2月11日時点での投資状況を公表し、「12月の決算状況から1カ月ちょっとでさらに3000億円を超える額が乗っかってきている」と復調ぶりをアピールした。
スプリント&Tモバイル合併は最終段階へ
スプリントとTモバイルUSの合併が最終段階に入った。
出典:ソフトバンクグループ
孫氏が冒頭で「潮目が変わった」と述べた理由として、SVFの投資成績の復調とともに挙げていたのが、ソフトバンクグループ傘下でアメリカの通信事業者・スプリントとTモバイルUSの合併が最終段階に突入した点だ。
スプリントとTモバイルUSの合併は、2019年5月に米連邦通信委員会(FCC)が了承、米司法省も7月26日に了承し、2019年中に合併する見通しだったが、アメリカ国内の複数の州で合併計画の差し止め訴訟が発生していた。
孫正義氏。
出典:ソフトバンクグループ
だが、決算発表当日の2月12日にソフトバンクグループは「2020年2月11日(米国東部時間)、ニューヨーク州南部地区の米国連邦地方裁判所が、当該司法長官の申し立てを棄却した」と発表。合併完了まで必要な承認は「カリフォルニア州の公益事業委員会(PUC)の承認を残すのみ」とした。
この発表を受け、孫氏は「(スプリント買収から)6年ぐらいの長い道のりだった」と振り返りつつ、「(新生TモバイルUSは)5Gなど革新的なネットワークを提供できる技術を持っている」と、今後について意欲を見せた。
揺れ動く「SVF 2号」は現在自社資金で活動中
WeWork問題はSVF2号にも影響している。
出典:ソフトバンクグループ
プレゼンテーション後の質疑応答では、SVFの2号ファンド(SVF2)に関する質問も飛び交った。
SVF2は2019年7月26日に設立を発表。ソフトバンクグループが380億ドル(約4兆1788億円)、アップルやFoxconn Technology Group、マイクロソフト、みずほ銀行などが出資予定で、出資予定額は1080億ドル(約11兆8767億円)にものぼると公表されていた。
しかし、前述のSVF1号の出資先であるWeWorkやUberの問題があり、その後、投資状況や各社の出資状況は明らかになっていない。
孫正義氏は第3四半期決算には反映されていない直近のSVF1号の投資成績をアピールした。
出典:ソフトバンクグループ
孫氏はSVF2について「今日現在は、投資活動を止めているわけではなく、ソフトバンク(グループ)の資金で活動を継続している」と説明。
各出資社との間では「鋭意、話し合いを進めている。近いうちに進展して、ファンド1の続きがスタートする」とした。
孫氏は同社のキャッシュフローの状況や国内通信事業などのソフトバンクやZホールディングス(ヤフー)が継続して利益を上げていることに触れ、「ソフトバンクグループには余裕の資金が手元にある。そのため投資を継続できるし、パートナーの方にも安心してもらえる選択肢がある」と、理解を求めた。
(文・小林優多郎)