レシート買取りアプリWEDが金融業のQ設立。銀行“使わない”若者層に金融サービス

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左から、新たにWED傘下の金融会社Qの代表取締役に就任する沖田貴史さん、WEDのCEO山内奏人さん、CTOの丹俊貴さん。沖田さんは1977年生まれ、日本と香港の両方で上場企業創業経験をもつ。

提供:WED

レシート買取りアプリ「ONE」で爆発的にユーザーを集め話題を巻き起こした、起業家の山内奏人氏率いるWEDは、傘下の金融事業会社として、Q株式会社を2月12日に設立した。Qのトップには、2019年秋に参画した、元SBIリップルアジア代表の沖田貴史氏が就任する。

Qは貸出、決済、資産運用といった銀行の基本機能全てを提供する金融機関を目指す。ターゲットは「Underbanked(アンダーバンクト)」と呼ばれる、銀行口座を持っていないなど金融サービスをあまり活用していない層。その中でも当面はデジタルネイティブ向けサービスに着手するという。決済サービスはその筆頭となりそうだ。WEDにとっては、ビットコインのプロダクトでの創業以来、フィンテック分野への再挑戦となる。

WEDは山内氏が高校生の時に立ち上げたワンファイナンシャルが、2019年秋に経営体制を大きく作り変え、社名変更した。

少し便利ではなく「猛烈に愛される」フィンテック

「Qは徹底した顧客志向の下、従来の金融サービスを少し便利に改善するのではなく、我々の顧客から猛烈に愛されるサービスを志向していきたい」

Q代表に就任した沖田氏はそう話す。将来的にはフルバンキングサービスを目指すが、当初は「スタートアップとして、分野もサービスも絞り込みを行い、一点突破型のサービスを計画している」という

事業ライセンスについては、銀行業、銀行代理業など「サービスに応じて柔軟に考えています」(沖田氏)。そしてこう続ける。

「この数年でフィンテックに合わせた法整備が加速しており、新しいルールはユーザー起点に考えられた優れたものが多い。その波に乗っていくことは強みになる」

社名のQについてはいくつかの背景があるとしつつも “queuing”(待ち行列)してでも欲しいサービスの意味を込めているという。

魔法のような金融体験、決済サービスに照準

Qがこれから仕掛けるサービスの詳細については明かしていないが、沖田氏はこう表現する。

「目指すのは『魔法のような金融体験』。奇抜な体験というよりも、利用者からすると『これまで、なんでなかったんだろう?』と思えるようなサービスにしていきたい」

具体的には「ユーザーにとって、もっとも身近で日常的な金融」として、決済サービスをメニューの一つに挙げた。

WEDがこれまで手がけてきたレシート買い取りアプリ「ONE」、映画館、水族館、美術館など月額3980円で利用できるエンタメ・カルチャーのサブスクリプション(月額定額制)サービス「PREMY」などを見れば、金融分野においても強烈なインパクトと究極のユーザーニーズに応えたものの投入が、期待される。

そのための各種連携やテクノロジーの追求は、まさにWED率いる山内氏が創業以来、続けてきたことだ。

フィンテック分野への再挑戦という悲願

スマホ

撮影:今村拓馬

「決済系サービスをもう一度やりたい」

山内氏は、金融分野の経営者として、国内外のキャリアをもつ沖田氏にそう持ちかけた。これが、沖田氏が大手金融グループのSBIから、スタートアップであるWEDに参画した全てのきっかけだ。

2016年の高校生の時に、山内氏はビットコインのプロダクトを世に出し、その後、サービスを不完全燃焼のまま終了させた経緯をもつ。その後、レシートの画像を送れば現金が振り込まれるアプリ「ONE」に象徴されるユニークなサービスで注目を集めてきた。

「デザインとテクノロジーの統合」で事業を作っていく意味を込めたWED傘下で、新たに誕生したた金融事業会社Q。国内外での豊富な金融業経営の経験をもつ沖田氏と、鮮烈な創造性をもつ山内氏の融合により、フィンテック領域でどんな挑戦を仕掛けていくのか。今後に注目だ。

(文・滝川麻衣子)

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