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聖マリ医大入試に「開き直るな」と怒る学生ら、文科省は再調査を否定

医学部入試で女性や浪人生を一律に差別していたとする第三者委員会の調査報告が明らかになった聖マリアンナ医科大学に対して2月12日、抗議の集会が参議院議員会館で開かれた大学教授や弁護士らの呼びかけで、入試問題当事者を支援してきた女性たちや学生、医学部予備校の代表、文科省の担当者らが参加した。

同大学が差別を否定していることについて学生らから怒りの声が上がり、再調査の必要性も指摘されたが、集会に出席した文科省担当者はこれを否定。業界の自浄作用を期待した。

開き直りに怒り、抗議署名に2万6500人超が賛同

聖マリアンナ

「入試差別をなくそう!学生緊急アピール」の信州大学医学部・田村大地さん(右)ら。2月12日、参議院議員会館にて。

撮影:竹下郁子

聖マリアンナ医科大学の第三者委が2015~2018年度入試の結果を分析したところ、志願票と調査書の評価で、女性と浪人回数の多い受験生の点数が一律に低くなっていた。2015年度には配点80点で男女差18点だったのが、18年度には配点180点で男女差80点までに広がっていた。一方、大学側は「一律機械的に評価を行ったとは認識していない」と差別を否定している。

医学部1年生の男性は、

「不正入試問題が明るみになったときに、ちょうど受験生だった。性別だけで人生が狂わされるのはなんでだと、すごく怒りが湧いたのを今も覚えている。不正と戦っていきたい」

と話す。「入試差別をなくそう!学生緊急アピール」に所属し、入試問題はもちろん、医学部生が受けるセクハラなどについても告発してきたという、信州大学医学部2年生の田村大地さんも、

指摘されているのに認めていないのは、非常に大きな問題」

だと憤った。

大学に差別を行ったことを認め、謝罪を求める署名も立ち上がっており、2万6500筆以上が集まっている(2020年2月13日時点)。署名発起人は、

「これまでも複数の入試差別があったが、今回は文科省などがおかしいと言っても開きなおれると思っていることへの怒りがある」

ときっかけを説明。引き続きの協力を訴えた。

助成金の条件は合理的な説明

聖マリアンナ

集会は満員で、立ち見の参加者も。

撮影:竹下郁子

聖マリアンナ医科大学の入試については、文科省がかねてより「不適切な可能性が高い」と指摘、調査に至った経緯がある。集会では文科省の対応についても、多くの疑問が投げかけられた。

東京医科大は2018年度に続き2019年度も引き続き助成金が全額カットされたのに対し、聖マリアンナ医科大は大学側が不正を認めていないため、助成金の交付業務を担う日本私立学校振興・共済事業団の運営審議会は減額処分の判断を先送りしている。

医学部を受験する生徒が複数在籍するという私立男子高校の教員は、こう問いかけた。

「東京医科大の不正入試が発覚した際、医学部を受験する生徒の母親から『これで平等になったらうちの息子は受かりにくくなります』と言われ、あなたの息子さんが劣っているのであれば落ちるべきでしょうと伝えました。もし私立高校でこんなことになったら自治体からの助成金はおりるとは思えません。だって我々の税金ですから。助成金はどうするつもりですか」

これに対し文科省の担当者は、「大学側の見解について合理的な理由を持って説明するよう投げかけており、その回答を待っている段階。回答がないとも何とも言えない」と回答。

「再調査考えてない」と文科省

吉良よし子

文科省に再調査などを求める共産党の吉良よし子議員。

撮影:竹下郁子

参加した議員らからは文科省に対し、「医学部がある大学全てを対象に、本当に差別がなくなったかどうかの再調査が必要ではないか」「5年10年と追跡調査をしていく必要がある」との意見も出た。また弁護士からは「文科省も大学などに指導する根拠となる立法がなければ指導できない。例えば労働では男女雇用機会均等法に基づく聴取権限があるが、そうしたものが教育には無いことが問題ではないか」との指摘もあった。

これらに対し文科省は

「2年前に問題が発覚した時、全ての医学部をもつ大学を調査し、聖マリアンナ医科大を含めて10大学が不適切だと判明した。この10大学については2019年度入試について再調査をし、聖マリアンナ医科大は保留だが、残りの9大学は改善したと考えている。このため再調査については現時点では考えていない

また男女別の合格率の開示などについては、全国医学部長病院長会議(AJMC)がアンケート調査を行っているので、その結果を待っている段階。AJMCは不正入試発覚時に『公平性』と『医療人の確保』が大事だとする独自の規範を立てている。業界も自分たちの力で改善していく意志があると思っている」

と説明。会場からは「そのアンケート調査を信じていいのか」「医療人とは男性医療人ではないのか」などの声も上がった。

差別は“偶然”発覚しただけ

学生

GettyImages/Trevor Williams

「医学部入試における女性差別対策弁護団」共同代表の角田由紀子弁護士は言う。

「そもそも東京医科大の不正入試だって、発覚したのは文科省の別の事件(同省幹部の汚職事件)がきっかけ。不正入試そのもの、女子学生を不正に扱っていることが問題視され直接的に発覚したわけではないと理解することが、とても大事だと思っている。偶然の中で少しだけその実態が分かってきただけなのだ、と。

日本社会では女性差別は非常に巧妙に隠され、特別なきっかけがない限り私たたちはほとんど知ることも出来ない。たまたま今分かっているのは医学部入試の問題だが、それ以外でも同じようなことがあるのではないかと疑ってかかる必要がある。社会全体に根深くある差別をどのように暴き、正していくかが私たちの課題だと思う」

(文・竹下郁子)

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