大麻草の栽培施設。カナダでは大麻が全面的に合法化されており、アメリカでも民主党の大統領選挙候補者がそれに続こうと主張している。
REUTERS/Blair Gable
- 合法大麻(cannabis)を扱う業界には、年俸10万ドル以上のポジションがある。
- 大麻業界専門の人材会社ヴァンスト(Vangst)によると、2018〜19年に求人数は79%増を記録した。
- 同社が発表した業界給与レポートにもとづき、大麻の栽培・抽出・製造・小売り部門で最も稼げる6つのポジションを紹介しよう。
大麻業界では最近、スタートアップでも大企業でも解雇が相次いでいる。それでも、業界を待ち受けているのは輝かしい未来のようだ。
ウォール街のアナリストたちは、2030年までに合法大麻の市場規模が850億ドル(9兆3500億円)に拡大すると予測する。また、大統領選挙の民主党候補者の大半は、大麻の全面的な合法化を支持している。
これから大麻業界で働こうと思うなら、新しいプロダクトの販売に乗り出すにしても、思い切って業界を飛び越えてキャリアチェンジするにしても、高収入の重要ポジションに就くチャンスがありそうだ。
大麻業界専門の人材会社ヴァンストは、アメリカの14市場で600社以上と提携し、求職者との斡旋(あっせん)を行っている。同社によると、2018年から19年の間に業界全体の雇用機会は79%増えたという。
2017年に開催された世界最大の「大麻産業就職フェア」。5000人以上の求職者が来場した。動画の途中にヴァンストのカーソン・ヒュミストンCEOが登場。
出典:Fox Business YouTube Channel
ヴァンストは毎年、職種やポジションごとの給与水準などを調査した業界レポートを発表している。Business Insiderはそれをもとに、10万ドル(約1100万円)以上の高収入を得られる仕事をリストアップしてみた。
大麻業界の雇用は2021年までに40万人を超える
カナダの(公立2年制大学)ナイアガラカレッジ。日本では考えられないことだが、大麻の栽培法を教えるプログラム。全面合法化の国ならではの風景。
REUTERS/Carlos Osorio
ヴァンストによると、2019年にアメリカの合法大麻産業に就職・転職した人の数は約20万人。2021年には2倍の40万人以上に増えると予想されている。
しかし、業界大手のメッドメン(Medmen)をはじめ各社で解雇が相次いでおり、「大麻産業を何となく敬遠する求職者が増えている。だからこそこの業界レポートを公開する意味があると思っています」と、ヴァンストCEOのカーソン・ヒュミストンはBusiness Insiderの取材に答えている。
「(レポートにある)数字をきちんと見てください。現在(2019年11月)大麻産業における雇用者数は約21万1000人。2021年までには40万人を超えるとみられています。産業は成長しており、仕事の数も増えている。それが数字の示している事実なんです」
レポートに掲載されているのは、「大麻に触れる(touch-the-plant)」仕事と呼ばれ、栽培から研究開発、抽出、精製、小売りまでを一貫して手がける垂直統合型企業の仕事のみだ。
マーケティングやウェブ開発といった「大麻に触れない(not-touch-the-plant)」仕事は、一般的に年収が他の業界と変わらないため、レポートには含まれていない。
大麻に触れる・触れない仕事……アメリカでは州ごとに大麻の扱いが異なり、「大麻に触れる仕事」と呼ばれる栽培や抽出、精製などは、連邦(国)レベルでは非合法。ニューヨーク証券取引所やNASDAQへの上場も現在は認められていない。大麻産業のプレーヤーが株式市場から資金調達するのはまだ難しい状況だ。
以下にリストアップする仕事の年収は、最高値と中央値を平均した数字を採用した。
いずれのポジションも、担当業務に直結する教育を受けた高い専門性をもつ人材が必要とされている。それゆえ、非常に競争率の高い給与ベースの仕事ばかりで、時給ベースの仕事はリストに含まれていない。
そんなわけで、大麻業界で10万ドル以上の年収を得られる仕事は以下の通りだ。
栽培部門ディレクター 11万8600ドル(約1304万円)
大麻草の苗をチェックする栽培スタッフ。写真は北マケドニアの首都スコピエにある医療用大麻プラント。
REUTERS/Ognen Teofilovski
大麻栽培施設のトップにあたるポジション。施設の運営や生産目標の管理、従業員マネジメント、運営マニュアルの作成などを担当する。
抽出部門ディレクター 11万9500ドル(約1314万円)
大麻草から成分を抽出するプロセスを特集したニュース番組。米コロラド州デンバーにあるメッドファーム(MedPharm)の実験プラント。
出典:TODAY YouTube Channel
大麻草から成分(カンナビノイド)を抽出して、食料品や濃縮物(ワックスやオイル)などのプロダクトを製造する施設のトップ。ラボ・ディレクターとも呼ばれる。化学分析、収穫のタイミング、抽出プロセスの操作手順などを管理・改善する役割。
コンプライアンス・マネージャー 12万2000ドル(約1342万円)
Jonathan Wiggs/The Boston Globe via Getty Images
栽培から小売りまで、大麻産業のサプライチェーンのあらゆる段階において、法規制に関する調査や解釈を担当する。
小売り部門ディレクター 12万4200ドル (約1366万円)
ミシガン州では2019年12月1日から嗜好用マリファナが合法化。21歳以上の成年が購入できるようになった。州規制当局から認可を受けた小売店も増加中。
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合法大麻プロダクトを販売する店舗(とそのスタッフ)を率いる。顧客のニーズに応える最良の仕入れ、運営ポリシー、管理運用規定を揃えた店舗づくりが求められる。
製造部門統括責任者 16万7000ドル(約1837万円)
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製造部門では、統括責任者が最初から最後までプロジェクトを監督し、プロダクトの品質や開発の責任を負う。
小売り部門統括責任者 15万2000ドル(約1672万円)
小売り部門ディレクターの項の画像と同じミシガン州の嗜好用麻薬販売店。規制当局の厳しい監視のもとでの店舗運営が簡単な仕事でないことは間違いない。
REUTERS/Matthew Hatcher
法令遵守、予算、販売計画、新規出店、運営ポリシーなど会社が掲げる戦略的目標の達成に向けた責任を負うポジション。また損益や在庫管理の監督も役割に含まれる。
[原文:6 jobs that can earn you a 6-figure salary in the $85 billion cannabis industry]
(翻訳:Miwako Ozawa、編集:川村力)