テスラのCEO、イーロン・マスク。
Aaron P. Bernstein/Reuters
- 「アンチハンドブック・ハンドブック(The Anti-Handbook Handbook)」と題されたテスラの従業員ハンドブックは、自動車業界におけるテスラの立ち位置を異端だと説明している。
- ハンドブックが従業員に課す目標は高い。
- 主な方針としては、テスラ従業員は能率向上に全精力を注ぐことを求めている。また必要であれば、CEOのイーロン・マスクに直談判してもいいという。
テスラ(Tesla)はその破天荒さで知られている。電気自動車メーカーのテスラは、販売店や充電ステーションのネットワークを自社で所有したり、従来の広告手法を否定するなど、良くも悪くも他の自動車メーカーからはかけ離れている。
テスラの独自路線は「アンチハンドブック・ハンドブック(The Anti-Handbook Handbook)」と名付けられたテスラ従業員用のハンドブックにも表れている(編注:アメリカでの従業員ハンドブックとは、就業規則や雇用上におけるポリシーを含めた従業員のガイドラインを指す)。流出したハンドブックの概要をレビューしてみよう。
時折攻撃的なトーンが交じる会話調で書かれたハンドブックでは、自動車業界におけるテスラの立ち位置を異端であると説明している。「我々は、もしあなたが無断欠勤すれば、あなたを身勝手な人間だと考えるだろう。連絡できなかったことによほどの理由がなければならない。さもなければ、クビだ」という記載もある。
「我々はテスラだ。我々は世界を変える。我々はすべてを再定義したいと考えている」という一文からハンドブックは始まる。
「我々は他社とは違う。そして違うことを良しとする。他とは違うということが、他の誰もがやっていないことを行うのを可能にする。他者が我々を命令に従わせることは不可能だ」
この件について、テスラにコメントを求めたが回答はなかった。
ハンドブックが従業員に課す高いハードル
この従業員ハンドブックは、クビにならないための最低基準について書かれた一般的なハンドブックとは逆を行くものだ。
テスラのハンドブックは就業規則の詳細にはあまり触れておらず(例えば、補償や手当、休暇申請についての詳細は、社内ウェブサイトを確認するように指示している)、従業員に主体的であることを期待する方針が強調されている。このハンドブックの主なテーマは、テスラの従業員は全精力を注いで最大限の効率を実現しなければならないというものだ。
「あなたの最も大事な仕事、つまり全社員にとって最も大事な仕事は会社を成功させることだ」とハンドブックには書かれている。
「もし我々のやり方に改善できる余地を見つけたら、自分の管轄外だとしても声を上げなければならない。あなたはテスラの成功に個人的な義務を負っているのだから、提案し、自らのアイデアを共有しなさい。いくらよいアイデアでも、自分の中に秘めていては意味がない」
テスラをよりよくするために働くことは、社内政治上の礼儀よりも優先されなければならない、とも書かれている。もし問題解決に対する最適解だと考えるのであれば、従業員はあらゆる社員に声をかけることができ、これはCEOのイーロン・マスクや他の幹部も例外ではないとしている。
ハンドブックは「あなたは誰の承諾も受けず、誰にでも話しかけることができる」とし、「むしろ、あるべき状態になるまでは、あなたはその(提案を行う)義務を負い続けていると考えるべきだ」とも書かれている。
イーロン・マスクはこれまでも就業について型破りなアドバイスをしている
マスクはこういった、一般的とはいえない就業アドバイスを、社内メールを通じても社員に送っている。もし打ち合わせに貢献していない場合は会議の席を立つべきといったことや、無意味な規則は無視するべきとも話している。
テスラの自動車業界における独自路線は革新的な車を作りだし、急速に売り上げを成長させた。だがテスラは同時に、カスタマーサービス問題など会社の存亡をも危うくするような高価な代償を伴うミスの数々も犯した。
小幅な増益に終わった2019年後半のテスラの決算結果は、テスラが型破りなだけでなく、より安定した運営基盤を構築しはじめたことを示唆している。しかし、これとよく似た上昇傾向は2018年後半にも見られ、2019年前半には減益に転じている。このときは国際輸送に関連した問題に起因したものだった。2020年には、テスラの躍進が本物かどうかが明らかになるだろう。
Business Insider
(翻訳:忍足亜輝、編集:Toshihiko Inoue)