「キャンセルの電話が鳴りっぱなし」新型コロナ感染報道で屋形船は悲鳴

新型コロナウイルスの拡大に、屋形船業界は頭を痛めている。

新型コロナウイルスの拡大に、屋形船業界は頭を痛めている。

MAHATHIR MOHD YASIN / Shutterstock.com

新型コロナウイルスに感染した都内の個人タクシー運転手(70代)について、東京都は2月14日、この運転手が参加した新年会の会場となった屋形船の従業員と、所属する個人タクシーの組合支部従業員、2名の感染を新たに確認したと発表した

屋形船の従業員は中国・湖北省からの旅行者と接触歴があるという。また、新年会に参加した約10人に発熱などの症状があるとして、都では詳細な調査を進めている。

2月13日には、このタクシー運転手の親族で神奈川県に住む女性(80代)が肺炎で死亡。その後の検査で新型コロナウイルスに感染していたことが確認された。感染者の死亡が確認されたのは国内では初めて。

「キャンセルの電話が鳴りっぱなし」

30以上の屋形船事業者が加盟する「屋形船東京都協同組合」の担当者は2月14日、Business Insider Japanの取材に対し、「『屋形船で感染の可能性』と報じられたことで、予約のキャンセルが相次いでいる」と悲壮感を吐露する。

担当者によると、同組合では国内の感染拡大を受けて対策を強化。従業員にはマスクの着用、手洗いの励行、船内の施設の消毒を徹底するように呼びかけてきたという。ところが、13日に感染が確認されたタクシー運転手が屋形船での新年会に参加していたと報道されたことで、キャンセルの電話が殺到していると悲鳴混じりに話す。

「電話がバンバンかかってきており、各船宿や他の屋形船組合からも、『キャンセルの数がすごすぎてどうすれば良いのか…』と戸惑いの声を聞いている」

「ワイドショーなどでは、屋形船のせいで感染が広がったと受け取られかねない伝え方もあり、風評被害を心配している」

「電話が鳴りっぱなしで、受話器を置いたらすぐにまた電話が鳴る。これからどうなるのか、目の前は真っ暗だ」

東京五輪で航行制限&新型コロナ 不安のダブルパンチ

今年は東京オリンピック・パラリンピックの影響で、6月21日〜9月20日までの3カ月間は、東京湾内のお台場海浜公園周辺などで航行が制限される。

今年は東京オリンピック・パラリンピックの影響で、6月21日〜9月20日までの3カ月間は、東京湾内のお台場海浜公園周辺などで航行が制限される。

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新型コロナウイルスの感染拡大は、屋形船業界にとっては存続に関わる話になりつつある。

というのも、今年は東京オリンピック・パラリンピックの影響で、6月〜9月の3カ月間はお台場海浜公園周辺など、東京湾内での航行が制限される。

お台場周辺は夜景が美しく、レインボーブリッジを間近に望める人気のコース。だが、夏の書き入れ時に航行が制限されることで、屋形船事業者への打撃が懸念されていた。

「夏の収益は、船宿の年間収益の1/3〜半分を占めている。オリンピック・パラリンピックの影響で、隅田川花火大会など、都内の花火大会は前倒しになった。年間スケジュールが変動的なので、経営にどこまで影響が出るか船宿の間でも不安が広がっていた」

「そこへきて今回の新型コロナウイルスの話が出てきた。夏の書き入れ時の収益が見込めない以上、春のお花見シーズンにはお客様に来ていただけるように頑張って準備していたのに……」

「海外(インバウンド)のお客さまだけでなく、国内のお客様からもキャンセルが出ている。夏数隻の船を保有する大規模な会社組織もあれば、1隻で家族経営の船宿(屋形船を営む事業者)さんもある。いつ収束するかわからないが、例えば今後2〜3カ月もお客さんが来ないと、大変なことになってしまう」

冷静に、一人一人ができる対策を

厚労省は2月14日現在、国民向けのメッセージとして、「新型コロナウイルス感染症は、我が国において、現在、流行が認められている状況ではありません」「イベントや行事等に参加される場合も、お一人お一人が咳エチケットや頻繁な手洗いなどの実施を心がけて」ほしいと呼びかけている

国内で初の死亡例が確認されたが、パニック的な恐怖に陥り、本来なすべき効果的な予防策がおろそかになるようでは、本末転倒になりかねない。「正しい手洗い」を心がけるなど、冷静に、一人ひとりができる対策を続けるころが肝要だ。

(文・吉川慧)

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