東急不動産の25歳「まあいいや」との決別で組織改革、キーワードは「主体性」

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新本社は外からの光が差しこむ明るいオフィスになっている。

1953 年に創業した東急不動産。長らく渋谷に本社を構えてきたが、2019 年 8 月、もともと本社のあった渋谷区道玄坂に本社を移転した。

ビルを新しくするだけではなく、組織風土も改革しないといけない――。ここ数年は業績好調が続く不動産業だが、大企業の縦割りの在り方などに危機感を持った若手社員ら約 30 人が中心になり、2019 年 5 月に GREEN FLAG PROJECT(グリーン・フラッグ・プロジェクト)を始動させた。

現在入社3年目の平川雄基さん(25)も、プロジェクトの中心人物の 1 人で、業務の傍ら、風通しの良い組織への変革を目指し日々活動しているという。創業 65 年を超える大企業を、若手社員が変えることはできるのか?

目の前の仕事に追われるばかりに

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「入社当時は毎日の仕事に追われるだけの日々でした」と話す平川さん。

平川さんは 2017 年 4月に入社。家族で旅行に行くのが好きで、観光地の開発に興味を持ったのが入社のきっかけだった。入社後に配属されたビル営業部では、先輩社員がバリバリと営業先で交渉する姿に圧倒され、先輩たちに何とか追いつきたいという一心だったという。

「目の前のことにのめりこんでしまって、日々の成功失敗に一喜一憂していました。どうすればチームがもっと良くなるか、ましてやどうすれば組織が良くなるかということを考える余裕はなかったですね」(平川さん)

同プロジェクトを立ち上げた一人、広報室の小峰慎司さん(31)は、「世の中の働き方がどんどん変わっていく中で、総合デベロッパーとして働く場を提供する私たち自身もまた変わり続ける必要があると思い、このプロジェクトを始めた」と話す。

仮眠室のリラックス効果、計測しませんか?

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平川さんは「小さなことであっても、まずは声を上げてみることが大事」と言う。

東急不動産のグリーン・フラッグ・プロジェクトは、社員が自発的な活動で組織を変えていく点を重視するのが特徴だ。「コミュニケーション活性化」や「人材育成の仕掛けづくり」、「チャレンジを促進する風土づくり」など 7 つの課題についてチームを組んで活動。平川さんは、「業務改革・生産性向上の仕組みづくり」のプロジェクトリーダーに抜擢された。

平川さんのチームのミッションは「作業時間を削減し、価値を創造する時間へ変えていく」こと。単純作業に時間を割くのではなく新規ビジネスなどに使える時間を確保したいと、交通費申請を効率化するシステムの導入や社内マニュアル整備など、コツコツと進めてきた。

「取り組み自体は小さなことかもしれません。これまでは何か思いついても『まあいいや』とあきらめていたことでも気軽にアイデアが出てくるようになりました。

プロジェクトでは『みんな違う。やってみよう!いってみよう!』という言葉を掲げ、一人ひとりが主体的に動く組織を目指しています」(平川さん)

主体性はキーワード。平川さんの発案で、新本社の仮眠室で集中力を測定するメガネを使い、仮眠室のリラックス効果の検証をしているのもその一つだ。

名ばかり働き方改革が多いワケ

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撮影:今村拓馬

世の中に目を向けてみると、改革に取り組む企業も多いが、名ばかりの改革になってしまうケースは少なくない。

企業の業務プロセスの改善を手がける、あまねキャリア工房代表の沢渡あまね氏は、Business Insdier Japnaのこれまでの取材に対し「働き方改革を進めなければという思いで、試行錯誤して制度は作った。でも実は使う人がいない会社はたくさんある」と指摘。現場の働き方や課題意識と離れたところで働き方改革を進めたことで、効果が上がらない企業もある。

働き方改革を成功させるためには、現場の声に耳を傾けつつ、実際に役立てられる制度を作っていくことがカギであることは間違いない。

メンター制度などアイデア続々

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プロジェクトでは、他にも新しい取り組みが生まれている。

社員のコミュニケーションを増やすため、午前 9時半の出社時に合わせて、プロジェクトメンバーらが新本社の入り口に立ってあいさつする活動を始めたり、若手社員が他部署の先輩とつながるメンター制度(ナナメンター制度)を試験的に導入したり。

平川さんは 2019 年 4月に IT 戦略部に異動。IT を生かした営業支援などに取り組む傍ら、プロジェクトにもやりがいを感じている。プロジェクトには現在、若手だけでなく役職者も参加しており、総勢では約 60 人。2021 年度中には 150 人に拡大するのが目標で、全社員 1200 人が集まって会社の未来を考えるワークショップも企画しているという。

東急不動産の広報担当者は「組織変革はまだまだ道半ばだが、本社移転やこのプロジェクトの成果で、社員それぞれの自発的な行動力が高まり、会社の空気が変わってきている」と話し、改革は着実に進んでいる手応えをもつ。

「世代によって価値観も違っていて、ボトムアップで組織を変えていくことは確かに大変です。ただ、会社をよくしたいという思いを持つメンバーと共に、今がチャンスと考えてガンガン取り組んでいきます」(平川さん)

(文・横山耕太郎、撮影・今村拓馬)


東急不動産執行役員で前出のグリーン・フラッグ・プロジェクトを推進する亀島成幸氏も登壇する、一般社団法人 at Will Work 主催の働き方を考えるカンファレンス 2020 「働くと経営課題」―企業の経営戦略・実践のリアルから学ぶ―が、開催されます。亀島氏は、中川雅寛氏(乃村工藝社常務取締役)と「生産性向上と労働時間の実際」をテーマに対談します。https://www.atwill.work/conference2020/#sec4

▼開催概要『働き方を考えるカンファレンス2020「働くと経営課題 」- 企業の経営戦略・実践のリアルから学ぶ -』https://www.atwill.work/conference2020/

【日時】2020年2月20日(木) 10:00-20:00(予定) ※入退場可能

【場所】東京都 港区虎ノ門 1丁目23番3号

【住所】虎ノ門ヒルズフォーラム(虎ノ門ヒルズ森タワー4階 )

【会場動員規模】200名(予定)

※一般チケット購入:https://eventregist.com/e/aww-conference-2020

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