Galaxy UNPACKED 2020冒頭、折りたたみスマホ新モデル「Galaxy Z Flip」を発表した。
撮影:平澤寿康
ここ数年、スマートフォン市場での苦境が伝えられることの多いサムスン。とはいえ、IDCの調査結果によると、2019年のスマホ世界出荷台数は前年比2.3%減と3年連続でマイナス成長となるなかで、サムスンは出荷台数、シェアともに前年を上回った。
イベントにはサムスンのIT&モバイルコミュニケーションズ部門 無線事業部社長のDr. TM Roh(盧泰文)氏が登壇。Dr. TM Rohは、今回のUNPACKEDが初登壇となる。
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もっとも、世界的に見ても高価格帯スマホは売れ行きが厳しくなっているのは事実だ。2019年に登場したサムスンのフラグシップスマホ「Galaxy S10」および「Galaxy Note 10」シリーズはいずれも高評価を得ているが、2019年の出荷台数とシェア向上の原動力となったのは、日本を含め世界的にヒットとなったミドルレンジスマホ「Galaxy A」シリーズだった。
こういった状況はアップルをはじめ、他の競合メーカーも同様で、今後はミドルレンジ製品に一層注力するよう戦略変更していく可能性が高い。
ハイエンド機種2つは今のサムスンの“顔”
角度のついた状態で利用できる「Flex Mode」を採用するなど、Z Flipの革新性をアピール。
撮影:平澤寿康
そうしたミドルレンジ機の重要性が増しつつも、メーカーの「顔」であるフラグシップ端末は、自らの技術力・ブランド力を高めることにもなるため、決しておろそかにはできない。
アメリカ・サンフランシスコでサムスンが2月11日(現地時間)に開催した発表会「Galaxy UNPACKED 2020」で、折りたたみスマホ第2弾の「Galaxy Z Flip」を冒頭に発表したことには、そうした背景がある。
Galaxy S20は、シリーズ全モデルが標準で5Gに対応する。
撮影:平澤寿康
カメラ機能も大きな進化を遂げている。
撮影:平澤寿康
Galaxy Z Flipでは、ディスプレイ表面素材にガラスを採用しつつ折りたたみを可能にするとともに、折り曲げるヒンジ部分の改善や、完全に開いていない状態での新たな利用方法を提案するなど、技術力や革新性を強くアピールした。
MS、グーグル、ネットフリックスと関係深める
サムスンとマイクロソフトとの協業はさらに強いものとなっていく。
撮影:平澤寿康
新製品や新機能を華々しく発表する様子は、これまでのUNPACKEDと変わらない。ただ、途中からこれまでとは異なる雰囲気も感じ取れた。それは、多くのパートナーとの協業だ。
新たにクラウドベースのゲームサービスでもマイクロソフトとの協業を強化する。
撮影:平澤寿康
これまでもサムスンはさまざまなパートナーシップを結んでいる。近年で特に象徴的だったのが、Galaxy Note 10シリーズを発表した2019年8月のUNPACKEDで、マイクロソフトとの協業を発表。マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏がゲストとして登壇した。
そして、今回のUNPACKEDでは、マイクロソフトとの関係をさらに強化。クラウドベースのゲームサービスについて連携を強化していく、と表明した。
グーグルとのパートナーシップもさらに強化。5Gやアプリの最適化などを行なう。
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また、グーグルとは5Gや折りたたみスマホ、使いやすさといった部分で連携を強めるとし、ビデオ通話アプリ「Google Duo」と「YouTube」アプリでZ Flipに最適化したユーザーインターフェースを提供する。
ネットフリックスとも新たな協業を発表。
撮影:平澤寿康
ネットフリックスとの協業では、サムスンの音声アシスタント「Bixby」から再生などのコンテンツのコントロール、Galaxy端末の検索機能から作品名などを直接検索できるといった新たな機能が提供される。
協業による利便性強化でトップシェア維持を狙う
「新しい成長と革新の10年がここから始まりまる」とGalaxy S20を発表するTM Roh氏。
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このようにサムスンがパートナーとの協業を推し進めるのは、現在のスマホでは単独でイノベーションを実現するのが難しくなってきていることが背景にある。
確かにZ FlipやS20シリーズでは多くの技術的進化が盛り込まれているものの、それらを単体で見ると、驚くほどの革新性を実現するとまでは感じられなかった。
スマホにとって技術的な進化は欠かせないが、現在のスマホはそれだけではユーザーに支持されにくく、サービス面の充実が不可欠になってきている。
Galaxyの各端末の標準で搭載されている検索窓から、ネットフリックスの配信作品を検索できる。
撮影:平澤寿康
そして、多くのユーザーが普段利用している各種サービスが、Galaxyシリーズでより便利に利用できるとなると、それだけで多くのユーザーが十分な魅力を感じることになる。
そういった意味で今回のUNPACKEDからは、技術面だけでなくユーザーの普段の利便性にも革新を起こし、サムスンが今後もトップシェアを維持していくという強い意志が現れていた。
もちろん同様の取り組みは、競合他社も進めていくはず。パートナーとの取り組みをどこまで強化して新しい体験を作り出せるかが、今後の勝敗を決めるカギとなっていきそうだ。
(文、撮影・平澤寿康)