「リモートワークはただのアピール」「感染者が出たら在宅」新型ウイルスでも通常業務の日本社会

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新型コロナウイルスの影響でリモートワークへの注目が集まっている。

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新型コロナウイルスの感染者が国内で増加していることを受け、政府は、不要不急の外出の自粛や、テレワークの推進を求めている。NTTはグループ企業約20万人を対象に、2月17日から時差出勤やテレワークの実施を勧めるよう通達するなど、複数企業も動き出しているように見える。しかし、実際に働く人たちからは「リモートワークをしたくてもできないのが現実だ」「感染者が出たらリモートだって……」と冷ややかな声が漏れている。新型コロナでも日本社会は「通常業務」を貫くのか。

「職場全体が冷ややか」

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NTTはグループ会社にリモートワークなどの推進を通達した。

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「持ち株会社がまた世間にアピールしたな。現場の状況はまだまだなのに。板挟みの中間管理職はまた大変になる……」

NTTがグループ社員全員に向けてテレワークを推進するというニュースを見たとき、グループ会社の一つで働く50代の女性は、そう感じたという。

「私だけではなく、職場全体が冷ややかな感じです。現実と世間アピール用の顔のギャップを嫌というほど認識しています」(前出の女性)

もともとこの会社では、月に8日までのテレワークが認められている。育児や介護で積極的に使っている人もいるが、わずかだ。

今回も幹部から、部長・担当部長の部署間の会議をすべてテレワークにする“お達し”が出ている。

しかし、現場を抱えている社員が「在宅勤務をしようにもできない」というジレンマを経営層は見ようともしない。例えば、在宅勤務制度は派遣社員には適用されない。派遣社員のみを出社させて、社員が皆在宅勤務することなどできるわけがない。

「コロナウイルスに関してはみんな内心怖くても、出社を控えるのはちょっと神経質すぎやしないか、と言いあって、頑張って出社してしまう。そんな雰囲気です」(前出の女性)

自前で買えない高額PC

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企業の中には来社した人に対し、マスク着用を求める企業もある(写真はイメージです)。

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企業風土だけでなく、ハード面にも課題があるという。この女性はこう嘆息する。

「これを機会にテレワークでも仕事できるように業務全体を見直そうなんていう課長は1人もいません。情報通信系の企業なので、やる気になれば全員在宅勤務も可能だと思うんですけどね

そもそも個人個人の業務分担にグレーゾーンが多いので、業務の切り分けは難しく、それが在宅勤務の浸透を阻んでいる感じです」

他にも在宅勤務が進まない理由としては、家が狭かったり、自前のPCを購入できなかったりする事情もあるのでは、と話す。会社が指定するソフトがインストールできる高性能のパソコンは20万円ほど。これが購入できないと、会社のパソコンを持ち帰らなければならず、この持ち帰り手続きが面倒で、在宅勤務実施のハードルは高いという。

「本来なら正社員だけでなく、契約社員や派遣社員の人も、何かあった時のために一斉に在宅勤務ができる体制を整えておくべきだと思います。現実的には今、全員が在宅勤務すると持ち帰り用のPCが足りないので、まずはそこを整備することが必要です」(前出の女性)

機密情報、ベンチャー…阻む壁

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長期化する新型コロナウイルスへの影響で、リモートワークを推進する企業が増えているものの、阻む壁は少なくない。

大手企業がメインクライアントのデザイナー女性(30代)は、こう話す。

「会社としてはリモートワークが可能だが、クライアントとの機密契約が厳しい。資料やデータを持ち帰っての作業がNGなので、結局、リモートワークはできない」

大手総合商社のグループ会社員は通常業務という。

「普通に出勤だし、なんなら出張もバンバンある」

都内のメーカーで働く40代女性は、

「感染者が出たらビル閉鎖なのでリモートワークになるというお達しが出た。感染者出たら、というのがなんともうちの会社らしい」

と話す。

そもそもリモートワークできる環境があるかどうかが問題だ。

リース業で働く20代の事務職の女性はこう話す。

「うちの会社は、感染者や疑いのある人に接触しましたか?ってアンケートがあったきりで他は何も反応ないです。そもそも事務系職種にパソコンは支給されていないし、個人パソコンからはシステムにつなげられないので在宅は無理ですね」

一方、早期にリモートワークを導入した企業では、いつまでリモートワークが続くのか、心配する声も聞かれている。

GMO、1カ月前から在宅勤務

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GMOグループでは原則、社員の在宅勤務を続けている。

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在宅勤務をいち早く決めたGMOインターネットグループでは、1月27日から渋谷・大阪・福岡にあるエリア拠点で働くグループの従業員を対象に、在宅勤務を推奨している。当初は2週間の予定だったが、現在も在宅勤務の期間を延長。対象の約4000人のうち、出社するのは1割ほど、という状況が続いている。

同グループの広報によると、対面が必要な案件や採用面接、郵便物の受け取りなど、出社が必要な場合にのみ出社が許可され、出社時には時差通勤を勧め、自転車通勤も認めているという。

「在宅勤務が長期化してきたが、今のところ業績への影響は出ていない。ただ、『1人で仕事するのはさみしい』『自宅の椅子では作業しにくい』などの声も一部あり、今後、モチベーションの維持などが課題になると感じている」(広報担当者)

政府は東京オリンピック・パラリンピック時の混雑対応策の一つとして、リモートワークの推進を挙げているが、新型コロナへの対応はリモートワーク普及の難しさも突き付けている。

Twitterにはこんな言葉もあった。

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「今朝も数百万人が満員電車に揺られて職場に向かう東京で『不要不急の外出を控えて』の呼び掛けの無意味さがすごい」

(文・横山耕太郎、取材・Business Insider Japan編集部)

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