エア・カナダのボーイング787ドリームライナー。2018年8月。
Nicolas Economou/NurPhoto via Getty Images
- デルタ航空は2030年までにカーボン・ニュートラルにするため、10億ドルを投じると発表した。
- 世界の化石燃料による二酸化炭素総排出量の2%は航空機によるもので、デルタ航空の排出量の98%は航空機からのものだ。
- 空の旅への需要が増加する一方で排出量も必然的に増加し、航空会社は気候変動問題において批判の対象となっている。
- 航空会社が排出ガス対策に取り組む方法の一つは、より燃費のいい航空機を導入することだ。
毎日何千もの飛行機が上空を飛び、何百万人もの人々を目的地へと運んでいる。しかし、その動力源は、地球の大気中の二酸化炭素量に大きく影響する化石燃料を燃焼するエンジンだ。
環境への懸念が高まる中、航空会社は地球規模の気候変動に関して最も攻撃を受ける立場だ。彼らは環境保護主義者にとっては格好の標的なのだ。
そのため、航空各社は気候変動への対応策を検討している。
アメリカのデルタ航空とジェットブルー航空は、排出量を大幅に削減するための対策を発表しており、デルタ航空は10億ドル(約1100億円)を費やすことを発表した。
航空業界がどのように気候変動と戦っているのかをご紹介しよう。
2018年、国際クリーン交通委員会(ICCT)は、商業航空が化石燃料の利用に起因する世界の二酸化炭素排出量の2%を占めると報告
離陸を待っている航空機の列。
Jingying Zhao/Getty Images
BBCによると、スウェーデンでは、2017年に空の旅をボイコットする運動が始まり、ある有名なスウェーデン人が運動の先頭に立っている。この抗議活動は機能しているようで、BBCによると、2018年にはスウェーデンでは約4200万人の飛行機の乗客があったが、2019年にはその数が4%減少した。
デルタ航空は、排出量の削減と相殺に10億ドル(約1100億円)の投資を行い、今後10年間でカーボン・ニュートラルを目指すことを発表した
REUTERS/Elijah Nouvelage
デルタ航空は2020年3月から今後10年間、毎年平均1億ドルを環境保護に費やすことを発表した。プレスリリースによると、デルタはすでに持続可能性でトップの航空会社にランクされており、環境分野に新技術とイノベーションを中心としたイニシアティブを通じて多くの力を注いでいるという。
デルタが二酸化炭素排出量の削減を行う方法の1つは、より燃費のよい航空機を採用する航空機の更新プログラムであり、プレスリリースでは、排出量の98%は航空機からのものであると述べている。現在のデルタ航空の航空機の中でも特に多いのは、A350-900、A330-900neo、A220といったエアバス機だ。
アメリカのLCC、ジェットブルー航空も先に発表した環境への取り組みをさらに一歩進め、すべてのアメリカ国内線から排出される二酸化炭素をオフセットするという
ジェットブルー航空のエアバスA321neo。
David Slotnick/Business Insider
カーボン・オフセットを支援するCarbonfund.orgなどの組織と協力して、ジェットブルーはすでに約136万トンのCO2排出量を相殺しており、その数を最大900万トンに引き上げるとしている。
航空機の更新の一環としてジェットブルーは、エアバスA321neo、A321neoLR、A220を導入している。これらの航空機は、それ以前の機体に比べて燃料を大幅に節約できる。彼らの最長ルートであるニューヨークとグアヤキル(エクアドル)間は、現在、エアバスA321neoで運用されている。
北欧では、航空機の使用を避ける動きが始まっているが、スカンジナビア航空も環境への影響を減らすためにビジネスモデルを変更した
スウェーデンのキルナ空港でスカンジナビア航空機に搭乗する乗客。
Reuters
AP通信によると、スカンジナビア航空は2030年までに排出量の25%を削減することを目標とし、そのために運航を調整すると発表した。同社がこれまで行ってきた方法は、免税品の販売を削減して搭載重量を減らし、新しい燃料効率のよい航空機を導入することだ。
スカンジナビア航空は最近、老朽化したエアバスA340をA320neoと交換した。エアバスA350-900 XWBも注文し、電動航空機の使用も検討している。さらにもう一つの目標は国内線でのバイオ燃料を燃料とするフライトだ。
航空機メーカーは航空機の燃費を高め、航空会社はそれに頼っている
ボーイングのサウスカロライナ工場にあるボーイング787-10ドリームライナー。
Randall Hill/Reuters
燃料効率を向上させるために近代的な技術を使用した最初の次世代航空機は、ボーイング787ドリームライナーだった。このツインエンジンの航空機は、前世代の航空機と比較して20%優れた燃料効率を実現し、航空会社に貢献した。
ヨーロッパではエアバスA350 XWBなど燃費のよいワイドボディモデルがトレンドになり、ドリームライナーを購入した航空会社はこの機体も購入した
離陸するエアバスA350。
Reuters
ブリティッシュ・エアウェイズ、LATAM航空、ヴァージン・アトランティック航空などの航空会社は、長距離路線で性能が向上した航空機を運航している。エアバスA350 XWBは、運航ルート数でボーイング787ドリームライナーをわずかに上回っている。エアバスA350-900 XWBは、シンガポール航空でシンガポールとニューアークを結ぶ世界最長のフライトを運航している。
エアバスは、既存の航空機の効率を改善できるかどうかも検討した
TAPポルトガル航空のエアバスA330-900neo。
Benjamin Zhang/Business Insider
エアバスは、人気のあるワイドボディ機であるエアバスA330シリーズを、新型のエンジンと効率を高めるために再設計した空力特性で刷新した。最初のエアバスA330-900neoは、2018年12月にTAPポルトガル航空で運用された。
エアバスA350 XWBよりも導入のペースは遅いが、注目すべきはデルタ航空やヴァージン・アトランティック航空などで、老朽化しているA330型機を補完することを計画している。
燃費向上の波に乗ったのはワイドボディ機だけではなく、メーカーは既存のナローボディ機をより環境に優しいものにする方法を考え出した
エアバス A320neo。
Regis Duvignau/Reuters
エアバスはA320neoシリーズで、新しいエンジンと空力性能向上によって燃料消費量を削減した。航空会社は、燃費が悪いことで悪名高いボーイング757の後継機として、このシリーズで最大のエアバスA321neoに注目していて、デルタ航空、アメリカン航空、ユナイテッド航空のアメリカの三大航空会社はいずれも、ボーイング757型機の後継機としてA321neoを発注している。
ボーイングはすぐに737Maxの開発を開始し、737ネクストジェネレーション・シリーズとほぼ同じ機体に、低燃費エンジンと空力性能を追加した
ボーイング737Max。
Ted S. Warren/Associated Press
ボーイング737を使用した航空会社は、より長いルートを飛ぶことができる同機の燃費効率向上を喜んだ。ノルウェージャン航空は、この航空機なしでは大西洋横断飛行の採算が取れなかっただろう。
737Maxは、燃料効率はよかったものの、システムの不具合で2度の重大事故を起こして運用が中止され、航空会社に多大な損害を与えることになる。
他の航空機メーカーもこの流れに加わり、より優れた燃費を提供する独自の次世代航空機を開発した
当初ボンバルディアCシリーズとして開発されたエアバスA220。
Benjamin Zhang/Business Insider
カナダのボンバルディアとブラジルのエンブラエルがそれぞれ次世代航空機の開発に取り組んでおり、この分野で最も積極的な動きが見られた。エアバスとボーイングは中型機市場に焦点を当てていたが、ボンバルディアとエンブラエルは、まだ次世代機の波が訪れていない150席以下の市場をターゲットにしている。
その結果、ボンバルディアCシリーズ(後のエアバスA220)とエンブラエルE190-E2が、より高い効率性を実現した。
低燃費の新型機が次々と登場したので、航空会社は保有する航空機のラインナップをスリム化しなければならなかった
デルタ航空のボーイング747。
REUTERS/Toby Melville
最初に引退したのはボーイング747やエアバスA380などの非効率的な4発ジェット機だった。エンジンの増加はより多くの燃料を消費することを意味し、同等の航続距離を提供する次世代ツインエンジン機によって時代遅れになった。
両機はゆっくりと撤退していっている。例えば、カンタス航空は約50年にわたってボーイング747を運航してきたが、現在では超長距離路線のほとんどでボーイング787-9ドリームライナーを使用している。
次世代のツインエンジン機の時代が来て、世界の航空会社は4発エンジンの2階建て航空機を必要としなくなった
ユナイテッド航空のボーイング787ドリームライナー。
Nam Y. Huh/AP Photo
燃料を大量に消費する巨大な航空機が航空会社に望まれていた時代は終わった。近代的な航空機は、老朽化してきた巨大航空機よりも燃料性能が優れている。新しい航空機が普及するにつれて、空は今よりもきれいになるだろう。
二酸化炭素の削減について、航空会社と環境保護主義者はほぼ同じ目標を持っている
PETER CZIBORRA/Reuters
ただし、両者がそうしようとする手段と論拠は大きく異なる。
しかし近い将来、航空便はさらに増えることが予想されており、かつての非効率で燃料を浪費する機体よりも、新しい機体を飛ばした方がよいことは確かだ。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)