ポーラ初の女性社長が語る「地域課題に取り組む企業」が支持される理由

ポーラの及川社長

ポーラ 代表取締役社長 及川美紀氏。1991年、ポーラ化粧品本舗(現・ポーラ)に入社。美容スタッフ・ショップの経営をサポートするフィールドカウンセラーとして実績を重ね、販売部門、商品企画部門でキャリアを積んだ。2012年に43歳で執行役員(商品企画・宣伝担当)、2014年に45歳で取締役(商品企画・宣伝・美容研究・デザイン研究担当)に就任。2020年1月から現職。

2020年1月30日、31日に開催されたビジネスカンファレンス「BEYOND MILLENNIALS(ビヨンド・ミレニアルズ)」。1日目に行われた「なぜポーラは地域の課題に取り組むのか ~2029年までにつくりたい社会とは~」では、化粧品メーカーのポーラ代表取締役社長の及川美紀氏が登壇した。化粧品という枠組みを超えて、地域貢献や社会貢献活動に取り組んでいるポーラ。なぜ社会課題に向き合うのか? 会社は何のために存在するのか? Business Insider Japan(BIJ)統括編集長の浜田敬子を聞き手に、及川氏が語った。

「社会」を主語にした仕事を求める学生たち

舞台の上で対談する及川社長と浜田編集長

「一人勝ち」「成長」から、「周囲との協調」「サステイナブルな経営」へ。今、企業のあり方が大きく変わろうとしている。日本の大手化粧品メーカーにおいて初めての女性社長となった及川氏は、この10年ほど新入社員の最終面接を担当してきて学生の意識の変化を肌で感じてきた。

「10年前までは、この企業が自分にとって合っているか、自分のやりたいことを実現できるかといった『私』を主語にしたアイメッセージが多かった。でも今は社会に対してこの企業は何をしていますか、どんな社会をつくりたいですかといった、社会を主語にした質問をする方が多い」(及川氏)

BIJ編集部でも、ミレニアル世代の働く目的が変わってきていると感じている。顕著なのは東日本大震災を10代〜20代前半で経験した世代で、編集部では「アフター3.11世代」と呼んでいる。この世代は、自分の会社だけが生き残ったとしても日本全体がよくならなければ意味がないと考え、より利他的な目的で仕事を選ぶ。こうした変化をリードする形で、ポーラは地域課題に取り組んできた。

人と出会う、そんなワクワクがある地域にしたい

ポーラの及川社長

ポーラはもともと訪問販売からスタートした会社だ。かつて「ポーラレディ」、現在は「ビューティーディレクター」と呼ばれる販売員は全国に約4万1000人いる。彼女たちはポーラと契約を結ぶ個人事業主である。時代の流れに従い徐々に店頭販売に移ってはいるが、現在も地域に根ざして化粧品を届けるという姿勢は変わらない。

「化粧品の購入には、きれいになって人と出会うというワクワク感が必要だと思っています。人口が減少し、そうしたワクワクする機会が減っていく地域は、経済の活性が期待できず商売が成り立たない。都会に出なくても美容は楽しいと思える機会、人と人が出会える場を私たちがつくっていこうという声が上がりました」(及川氏)

2019年、創業90周年を記念して制作されたムービー第1弾「この島と生きていく」では、過疎化が進む五島列島の女性が、祖母が始めたポーラの仕事を受け継いでビューティーディレクターになり活躍する姿が描かれている。彼女は映像の中で次のように語る。

「島に残ってくれる方を一人でも増やしたい、とにかく頑張る女性を増やしたい、女性が活躍できる場を自分がつくりたいという思いから、メイク講座などの活動をしています。島の女性にきれいになっていただきたい。きれいになると元気になる。考え方も前向きになるので、そういった方を一人でも増やしていきたい」

及川氏は、彼女の言葉が「『○○しなければならない』ではなく『○○したい』という言葉が出てくることが印象的」と言う。 地域を元気にしたい、地域の女性たちが活躍する場をつくりたい、楽しくなる場をつくりたい、きれいにしたい⋯⋯こうしたビューティーディレクターの思いに呼応するように、各地域の事業所に勤務するポーラ社員も、若手を中心に地域の歴史や産業、強みを調べ、地域を知る。そしてどうすれば地域課題が解消できるか、それを自分たちの事業にどのように生かすことができるか、ビューティーディレクターと協力し、形にすべく取り組んでいるという。

化粧品は人々の元気とつながりをつくりだす

対談するポーラ及川社長とBIJ統括編集長の浜田敬子。舞台に向かって及川社長が右、浜田編集長が左

対談するBIJ統括編集長の浜田敬子(写真左)とポーラ及川社長(写真右)。

「ビジネスのために地域の課題解決に取り組むのは遠回りではないか」という質問に、及川氏は次のように答えた。

「企業が地域に根ざそうという意志が本気かどうか、地域の人々はクールに見ている。私は宮城県・石巻出身なので、東日本大震災後たくさんの企業が地域を一生懸命支援してくださったことを知っています。しかし、ほとぼりが冷めると多くの企業が去ってしまった。今も残ってくださっているところは本当に向き合って地域の産業を育ててくれている企業。弊社の場合は、実際にその地域に住んでいる人が課題解決を手掛けているので本気なんです」(及川氏)

2018年からは、地域社会との共創を目的とした取り組み「うつくしくはたらくプロジェクト」をスタート。社会との真の共創を目指して地域を盛り上げる企画を各エリアから募集する社内コンテストを開催し、地域課題に本気で向き合い、継続して取り組み、変化を起こすことをめざしている。

第1回グランプリに輝いたのは山形エリア「地域企業×学校×POLAによるメークを通した感動体験の提供」。人口流出の問題を抱える地域で、公立中学校と協同して中学生たちにキャリア教育を行い、地元で働くことの魅力を伝えた。

第2回グランプリは、埼玉エリア「『はじめてのお仕事』プログラム〜子育てママとちびっこのポーラ体験〜」。親子でメイクを勉強し、子どもから母親にメイクやハンドマッサージを施すという企画で、親子の双方に対して好きなことを仕事にするという仕事観を伝えていく。

主婦の再就職には正社員の雇用が見つかりにくいという問題のほか、家族に理解がなく子どもを預けて外に出づらいという課題もある。こうしたイベントに家族で来場し、女性が楽しそうにメイクアップしたり、実際にビューティーディレクターたちが生き生き働いている姿を目の当たりにしたりすることで、母親が仕事をすることの理解を促すという効果もある。このプロジェクトは埼玉からスタートして日本全国に広がっている。

第3回グランプリは、山形エリア「家族みんなで!こころもカラダもイキイキ美しく生きるプロジェクト」。祖母世代を含めて3世代で健康に働くことがテーマとなった。第4回グランプリは首都圏エリアの「がん共生プログラム」。女性のキャリア支援だけでなく、子どもたちのキャリア教育、シニア人材の活用、がん共生と多岐に渡る地域の課題に取り組んでいる。

「美容はエネルギーをつくるんです。きれいになると楽しい、自分を認めたくなる、人と会いたくなる。美容という手段はささやかですが、そうしたみんなの元気やつながりをつくれる点がいいところだと思っています。これからも地方を元気にしていきたい」(及川氏)

最後に、聞き手の浜田は次のような感想を述べて締めくくった。

「それぞれの職場で自分ができることがある。一つひとつは小さいことかもしれないけれど、周りの人と力を合わせることで大きなことができる可能性がある。企業としてのビジネスと課題解決は相反するものではなく、地域、社会に貢献すれば結果的にビジネスにつながる。ポーラの取り組みはそのいいモデルだと思います」


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