日本からユニコーン企業を創出する3つの方法…VC&みずほ銀の有識者がぶっちゃけ討論

ICC Fukuoka 2020

登壇者は右から、宮宗孝光氏(ドリームインキュベータ 執行役員)、千葉功太郎氏(Drone Fund 代表パートナー)、大櫃直人氏(みずほ銀行執行役員)、今野穣氏(グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー)、グレン・サン氏(セコイア・キャピタル 中国パートナー)。

撮影:西山里緒

福岡で2020年2月17〜20日まで開催中の、イノベーションカンファレンス「ICC FUKUOKA 2020」。

2月18日に行われたセッション「日本からユニコーン企業は何社創出できるのか? 各識者からの提言」では、投資業務に携わる4人の識者が集まり、2020年以降の日本のユニコーン事情について議論を交わした。そのポイントを3つにまとめた。

1.「アフター・マザーズ」の成長戦略

ICC Fukuoka 2020

2019年、時価総額500億円以上の大型IPOは微減した。

まず取り上げられたのが、マザーズ上場「以降」のスタートアップの成長をどう促進するか、というテーマだ。

ここ数年、資金調達がより容易になっている現状も相まってマザーズ市場へ上場するスタートアップは伸びており、2019年には過去最高の64社を記録した。

一方でグロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナーの今野穣さんが「マザーズ上場までが一仕事になっている」と話す通り「ユニコーン未満」企業の上場が続出しているという現状もある

では、マザーズ上場企業がより大きく成長していくために必要なこととは?

みずほ銀行執行役員の大櫃直人さんは、企業買収(M&A)が活性化の一つの手だという。

「小さな市場で競争していても仕方がないので、マザーズ企業は未上場スタートアップの企業買収を進めるべきだ。逆に大企業にとってもガバナンスが整っているマザーズ企業は買いやすい選択肢だと思う。成長が止まった企業の退場も徹底していくべきだ」

つまり成長性の高い企業のみが生き残り、そうでない企業は淘汰されていくというエコシステムをより循環させていくことが必要だと言える。

さらに今野さんによると、大企業とスタートアップが連携する「オープンイノベーション」が今後どうなっていくかも大きなトレンドだという。

「『アフター・オープンイノベーション』はこれから注目すべきトピック。そもそもどういう成果が出るのか、景気が悪くなった時には引いていくのか、(スタートアップの)M&Aなど違うトレンドが訪れるのか」

数兆円の売り上げ規模の日本の大企業と「マザーズ企業」が今後どのように連携していくのかにユニコーン創出のポイントがあるといえそうだ。

2.「スタートアップ外人材」の採用強化

ユニコーンを生むための他の課題は、優秀なエンジニアや経営者を含む今までスタートアップでのキャリアを選ばなかった人材を引き入れていくことだ。

Drone Fund 代表パートナーの千葉功太郎さんは、こう強調する。

「(経営者から見た場合)東京のビジネス環境のいいところは、エンジニアの給与が安いところ。逆に悪いところもエンジニアの給与が安いところ。これを世界水準に近づけなければいけない」

前述の今野さんは、ニュースアプリ「スマートニュース」の人事採用戦略を例に挙げて、こう語る。

「3000万円や5000万円の給与を払ってプロの人材を採用することができるか。単純に年俸だけでなく、ストックオプションをどう提供するかも柔軟に設計できるようにした方がいい」

スマートニュースでは、すでに採用するエンジニアの約7割は日本に住む中国人エンジニアで占められているという。こうした海外の優秀人材をどのように採用するかも、日本からのユニコーン企業創出の大きなトリガーになるかもしれない。

3. “アメリカでの成功”逆輸入が勝ち筋か

ICC Fukuoka 2020

2012年以降、資金調達の環境は良くなりつづけている。

中国市場をよく知る識者からも、日本市場のこれからについての提言があった。

世界最大級のベンチャー・キャピタルであるセコイア・キャピタルの中国パートナーのグレン・サンさんは、TikTokを生んだ中国企業、バイトダンスの例を出してユニコーン企業の成長戦略の説明をする。

セコイア・キャピタルの投資先の一つであるバイトダンスは、2012年に創業。当初は「今日頭条(Toutiao)」というニュースアプリから事業をスタートした。

その後、2016年にリリースした短尺動画アプリ、TikTok(中国名は抖音)が予想外にアメリカでヒット。採用やM&A戦略をアメリカで進めたことでさらに大きく成長し、同社は数年で中国を代表するアプリ企業の1社になった。

同じように、ドローンベンチャーのDJIもアメリカ市場での成功を背景にグローバル企業となった好例だという。討論では「当たったマーケットに資本を集中して投下する」ことの重要性が語られた。

登壇者

  • 今野穣氏:グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー 最高執行責任者(COO)
  • 大櫃直人氏:みずほ銀行執行役員 イノベーション企業支援部長
  • 千葉功太郎氏:Drone Fund 代表パートナー / 千葉道場ファンド ジェネラルパートナー / 慶應義塾大学SFC 特別招聘教授
  • グレン・サン(Glen Sun)氏:セコイア・キャピタル 中国パートナー

モデレーター

  • 宮宗孝光氏:ドリームインキュベータ 執行役員 / DIMENSION株式会社 代表取締役

(文・写真、西山里緒)

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