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減光しているベテルギウスは爆発間近か、それとも宇宙の塵が光を遮っているだけなのか

ベテルギウスの爆発はどのように見えるのだろうか。

ベテルギウスの爆発はどのように見えるのだろうか。

ESO/L. Calçada

  • オリオン座のベテルギウスはよく知られた目につきやすい星だ。
  • 明るさが次第に減ってきているが、その理由は判明していない。
  • ベテルギウスは爆発しそうになっているのかもしれないが、宇宙の塵が原因である可能性もある。

夜空の中でも明るく認識しやすい星の1つであるベテルギウスは、5カ月前の半分以下の明るさになった。

その理由について科学者たちはいくつかの仮説を立てているが、その中でも最も劇的なのは、赤色超巨星のベテルギウスが最終的には超新星爆発するというものだ。この減光は、その星が超新星段階に入っていることを示している可能性がある。つまり、一旦薄暗くなってから爆発して崩壊するのだ。

しかし、ほとんどの天文学者は、この星が爆発に向かっているとは考えていない。

その理由は、この星が今回ほどではないが、これまでも減光と増光のサイクルを繰り返してきたからだ。

これは、この星が以前にも減光と増光のサイクルを経験しているためです(これほど劇的ではないが)。

ベテルギウスは脈動する赤色超巨星だ。つまり、その大きさと明るさは、表面の対流と大気の温度によって変化する可能性がある。

その他の暗くなった理由としては、ベテルギウスが自分の持つ物質の一部を宇宙空間に放出し、我々の視界を遮るような塵の雲を作り出している可能性もある。その場合、その塵がどこから発生したのかを天文学者たちは調査中だ。

ヨーロッパ南天天文台で働くのエミリー・カノン(Emily Cannon)は声明で、「我々はみんな星屑でできているという言葉は天文学でよく耳にするが、この塵は正確にはどこから来ているのだろうか」と述べた。

天文学者たちは、これらの説明のどれが正しいのか、まだわかっていない。さらに問題を複雑にしているのは、最近のベテルギウスの薄暗くなる割合が低下していることだ。


ベテルギウスはオリオンの片方の肩を形作っている星で、11月から2月にかけて最もよく見える。 大きさは我々の太陽の20倍だ

ベテルギウスはオリオンの片方の肩を形作っている星で、11月から2月にかけて最もよく見える。 大きさは我々の太陽の20倍だ

2011年4月に撮影されたこの画像では、左下隅の明るい青い星がベテルギウス。

NASA/JPL Caltech

ベテルギウスは肉眼では赤く見えるが、NASAの広域赤外線探査衛星によるこの画像では、宇宙望遠鏡が光の赤外線波長を測定しているため、青く見える。

天文学者たちは2019年10月頃、ベテルギウスがいつもほど明るくないことに気づいた

天文学者たちは2019年10月頃、ベテルギウスがいつもほど明るくないことに気づいた

ESO/M. Montargès et al.

この星は大きく、地球に近いので、クローズアップすることもできる。地球からは約600光年離れている。

約5カ月前まで、望遠鏡による画像は下のようなものだった

約5ヶ月前まで、望遠鏡による画像は下のようなものだった

2015年にチリのアルマ望遠鏡で撮影されたベテルギウス。

European Southern Observatory

しかし、その後、天文学者はベテルギウスの明るさと見かけの形の変化に気づいた。

2019年12月のベテルギウス。明るさも形も変化したように見える

2019年12月のベテルギウス。明るさも形も変化したように見える

2019年12月にヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡を使用して撮影したベテルギウス。

ESO/M. Montargès et al.

ヴィラノバ大学の天文学教授、エドワード・ギナン(Edward Guinan)は、12月中旬にはこの星が非常に暗くなり、夜空のトップ20にさえ入らなかったと報告した。

最近の研究によると、ベテルギウスは今後数百万年以内、早ければ10万年以内に爆発する可能性が高い

最近の研究によると、ベテルギウスは今後数百万年以内、早ければ10万年以内に爆発する可能性が高い

太陽系のサイズと比較した、爆発の想像図。計測の目盛は、ベテルギウスの半径を1としている。

ESO/L. Calçada

しかし、天文学者は超新星爆発が差し迫っているとは考えていない。

天文学者は星を注意深く観察し、世界中の望遠鏡からデータを収集している

天文学者は星を注意深く観察し、世界中の望遠鏡からデータを収集している

2009年7月29日にヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡で撮影されたベテルギウス。

ESO and P. Kervella

ベテルギウスは、地球から約600光年離れているので、我々が目にしているのは600年前に起こったことだ。

特にヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡は、ベテルギウスの新しい画像を多く撮影している

特にヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡は、ベテルギウスの新しい画像を多く撮影している

ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡(VLT)は、チリ北部のアタカマ砂漠にある。

ESO

肉眼の40億倍の感度で、夜空のごく弱い光も観測することができる。

もしベテルギウスが爆発したら、日中でも地球から見えるだろうと天文学者たちは言う。下の図のように見えるかもしれない

もしベテルギウスが爆発したら、日中でも地球から見えるだろうと天文学者たちは言う。下の図のように見えるかもしれない

ベテルギウスが超新星爆発したときのオリオン座の想像図。

Celestia/Wikimedia

Discover Magazineによると、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の大学院生、ジャレド・ゴールドバーグ(Jared Goldberg)、エバン・バウアー(Evan Bauer)が、ベテルギウスの爆発をシミュレートしたという。

そのシミュレーションによると、3カ月以上にわたって、半月程度の明るさ(満月の9分の1)が続くという。つまり、これまでで最高の恒星イベントである1006年の超新星よりも明るくなる可能性があるということだ。

しかし、爆発が差し迫っていないとすれば、星の周りの塵の影響かもしれない

しかし、爆発が差し迫っていないとすれば、星の周りの塵の影響かもしれない

ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡が撮影したこの画像では、恒星が黒い円盤で遮られているため、ベテルギウス周辺の活発だがかすかな星雲が見える。

ESO/M. Montargès et al.

ベテルギウスのような巨大な星は、一般に、自らの物質の一部を宇宙に放出し、光を遮る塵の雲を形成する。


熱レベルの変化や、表面にある対流の動きによっても薄暗くなる可能性がある

熱レベルの変化や、表面にある対流の動きによっても薄暗くなる可能性がある

明るい星の中心が遮られているため、この写真では塵の雲が見える。2019年12月にヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡で撮影。

ESO/P. Kervella/M. Montargès et al., Acknowledgement: Eric Pantin

熱レベルの変化によって、星が明るく見えたり暗く見えたりする。

天文学用語では、減光は「気絶(fainting)」と呼ばれる。これは星が肉眼や望遠鏡に対して次第に暗くなっていくからだ

ベテルギウスのイメージ図。画像データベースのDigitized Sky Survey2の画像を合成して作成された。

ベテルギウスのイメージ図。画像データベースのDigitized Sky Survey2の画像を合成して作成された。

European Southern Observatory

天文学者たちは、この星の減光がここの10日間で安定していることに注目している。今後数週間はこの星を観測する上で重要な時期になるだろう。

[原文:Betelgeuse, one of the brightest stars we see, has been fading for months. It could signal a fiery explosion, but it may just be dust.

(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)

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