「ビール離れ」は本当か? キリンの新たな挑戦

キリンの新商品「グリーンズフリー」開発担当者の久保育子氏

キリンの新商品「グリーンズフリー」開発担当者の久保育子氏。

撮影:竹下郁子

縮小し続けるビール市場を尻目に、10年前に比べて320%の成長をとげたのがノンアルコール飲料だ。

一方で、好きな酒をたずねられ8割が「ビール」と回答する現実もある。好きだけど手が伸びない、そんなビールと消費者の距離を埋めるため、今春キリンが勝負をかけるのは「自然派」のノンアルビールだ。

ノンアルビールも「自然派」へ

キリン

ビール市場が縮小する一方、ノンアルは好調だ。

出典:キリンビール

キリンビールは2020年を「ノンアル市場再成長の年」と名付け、ノンアルコール飲料を前年比2割増、390万ケースの販売目標を掲げる。2月20日、新商品発表会で同社マーケティング部・部長の山形光晴氏が明らかにした。

キリンによると、この10年でビール市場が縮小し続ける一方、ノンアルコール飲料市場は320%の成長。商品数も2.5倍にまで増やしてきた。

今春、主力商品として新たに発売するのが、「キリン グリーンズフリー」だ(3月31日発売予定)。「自然派ビールテイスト炭酸飲料」と題し、ウリは「香料」「糖類」「人工甘味料」無添加。背景には、同じくこの10年で約6倍にまで無糖炭酸市場が成長していること、また日常の食生活で気をつけていることとして約3割が「無添加」と回答する(キリン調べ)など、健康思考の高まりがある。

ビール好きの3分の1しかノンアルに興味なし

キリン

出典:キリンビール

これまでキリンのノンアルコールビールには、ビールに近い味わいを追求した「零ICHI(ゼロイチ)」、機能性表示食品の「カラダFREE」などがあったが、

「運転がある時など『飲酒できない時の代替品』の域を出ていないことが課題だった。ノンアルコールビールを、やむなく、から、ワクワクして飲む物に変えていきたい」(山形氏)

キリンの調べによると、ノンアルコールビールを飲まない理由として最も多かったのが「物足りなく感じる」36%、次いで「飲めない時に飲むものだから」30%だった。

年間飲用者数がビールは約5500万人なのに対し、ノンアルコールビールは約1600万人と約3分の1に止まっており、ワクワクどころかビールの代替にすらなっていないのが現状だ。

会場からは同じノンアルコールでも、果汁を使ったチューハイやカクテルテイストのものなどにする選択肢もあったのではないかという趣旨の質問も飛んだ。

ビールは“オワコン”じゃなく「報酬」

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ノンアルコールビール飲料「グリーンズフリー」のパッケージ。

撮影:竹下郁子

ビール市場が縮小する一方で、缶チューハイや缶カクテル、ハイボール缶などはこの10年で2倍以上の規模に成長しており、中でもレモンサワーなど柑橘系の人気は根強い。ビールの味そのものへの抵抗があるのではないかと感じる節もある。

「グリーンズフリー」の商品開発を担当した、マーケティング部・ビール類カテゴリー戦略担当の久保育子氏は言う。

「私たちの調査で好きなお酒をたずねたところ、ビールと回答した人は約8割を占めました。経年調査しているのですが、この割合はずっと変わっていません。確かに若者の支持が低くなってきていたり、共働き子育て世帯の飲酒自体が減っているなどの属性による変化はありますが、全体としてビールの味が好きな人は減っていないと考えています。

これまでノンアルビールは香料、糖類、人工甘味料がないと美味しく作れないというのが通説でしたが、それを覆す爽やかな味わいになっているので、ビール=重いと感じていた人にもぜひ試して欲しいです」(久保氏)

今後のキーは、ビールが本来持つ「報酬感」をいかに実感してもらうかだという。

そのためにも今足りないのは体験だ。アルコール度数が高い「ストロング系チューハイ」への懸念の声も聞かれる中、人もシーンも選ばない健康志向のノンアルコールビールは誰にでも薦めやすいのもポイントだ。

「とりあえずビール」の文化も薄れつつある今、若者にはノンアルコールビールを通して初めてビールの味わいに出合う層も出てくるだろう。今回の挑戦が、巡り巡ってビール市場への起爆剤になるかもしれない。

(文・竹下郁子)

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