ドロップボックスの共同創業者兼最高経営責任者(CEO)、ドリュー・ハウストン。
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- ドロップボックスが上場時の株価を回復した。
- ドロップボックスは2019年にプロダクトを刷新し、4人の経営幹部を新たに迎えた。アナリストからは、同社が大きな改革をやってのけ、業績好転の可能性を指摘する声があがっていた。
- アナリストたちは引き続き、プロダクト刷新を受けた成長がどの程度持続するか、新たに加わった経営陣がそれにどの程度寄与するのか、注目している。
ドロップボックスの株価は2019年9月に上場時の21ドルを割ったあと、低迷を続けていたが、第4四半期決算が市場予想を上回ったことを受け、2月21日にようやく上場価格を回復した。
ドロップボックスの上場(2018年3月)は当初、市場から好感をもって受け止められていたが、その後課金ユーザーが思うように伸びず、売上規模の拡大も投資家たちの予想より遅れたことから、株価は弱含みで推移していた。
2月20日に同社が発表した2019年第4四半期決算は、売上高が市場予想を300万ドル上回る4億4600万ドル(約490億円)で前年同期比19%増。1株あたりの利益も0.16ドルで市場関係者の予想を0.02ドル上回った。
2月20日に発表された2019年第4四半期決算を受け、上場時の21ドルを回復したドロップボックスの株価。
Markets Insider
2019年末時点の有料ユーザー数は1430万人、第3四半期より30万人増えた。有料ユーザー1人あたりの売上額は125ドル(約1万3750円)で、前四半期の123.15ドルを上回った。
決算発表時のアナリスト向け説明会で、ドリュー・ハウストン最高経営責任者(CEO)は2020年末までに黒字転換を見込んでいることを明らかにし、アジェイ・バシー最高財務責任者(CFO)は2024年までに10億ドル(約1100億円)を超えるフリーキャッシュフローを生み出す計画を示した。
2019年、ドロップボックスはSlack(スラック)やZoom(ズーム)などの外部ビジネスツールとの統合を可能にした新たなプロダクトを発表。同時に、4人の経営幹部を迎えて社内の混乱を収束させたことをアピールした。
投資家はこうした数字や改革の成果を受け、相場は強気に転じた。アナリストらの注目はすでに、プロダクト改革による成長の持続性と新経営陣による舵取りの如何に移っている。
4人の新経営陣の華々しい経歴
元グーグルグラウド副社長、オリヴィア・ノッテボームの最高執行責任者(COO)就任を伝える同社のブログ。
Screenshot of Dropbox BLOG
米投資会社ウィリアム・ブレアのアナリスト、ジェイスン・エデルは調査レポートで「ドロップボックスの経営は、新たな経営幹部を迎えたことで、利益を生み出すための手段をしぼり込む方向に向かっている」と分析する。
ドロップボックス側も、ユーザーを拡大しやすい新プラットフォームを通じて顧客基盤を強化すると同時に、有料ユーザーへの移行につながるような個人向けのプロダクトの開発に集中していく考えを明らかにしている。
最高執行責任者(COO)に就任したオリビア・ノッテボームは、グーグルクラウドの前副社長。G Suite(ジースイート)の顧客基盤を成長させてきた人物。ドロップボックスのCOOポストは16カ月空席だった。
また、最高顧客責任者(CCO)のヤミニ・ランガンが第4四半期に退職したため、ノッテボームが職掌の多くを兼ねるとみられる(ランガンはマーケティング統合管理ソフト「ハブスポット」のCCOに就任)。
RBCキャピタル・マーケッツのアナリスト、アレックス・ズーキンはノッテボームのグーグルでの経験が、ドロップボックスに大きな利益をもたらすと分析する。
「グーグルから来たノッテボームは、ジースイートが中小企業向け拡販に成功した立役者。経営陣の穴を埋め、グーグルで成功を収めたのとまったく同じように、10億ドル規模の利益をもたらす顧客基盤の拡大にその経験を活かすことは間違いない」
加えて、同社は最近、調達購買クラウドサービスSAP(エスエーピー)アリバの最高マーケティング責任者(CMO)だったダノ・クワンを同ポストで採用。
さらに、2019年末に退職したクエンティン・クラーク最高技術責任者(CTO)の後任として、元グーグルエンジニアで「未来の学校」オルトスクール(Altschool)の共同創業者でもあるバーラト・メドラータを上席副社長兼CTOに、元VMware副社長のティモシー・ヤングを上席副社長に迎えている。
「未来の学校」オルトスクールについてプレゼンするバーラト・メドラータ。その後、ドロップボックスのCTOに就任。
出典:University of Stavanger on YouTube
料金プラン見直しが業績回復の重要ファクター
JMPセキュリティーズのアナリスト、パット・ウォルラベンスは、ドロップボックスが過去9四半期にわたる成長の減速トレンドを脱出したことを好材料ととらえる。
ドロップボックスはプロダクトの改良に加え、料金見直しも行っている。2019年第4四半期の業績回復を支えた大事なファクターだ。ウォルラベンスはレポートで次のように評価する。
「2017年第2四半期から2019年第2四半期までの9四半期におよぶ長い停滞をくい止めた、プラン価格とパッケージ内容の見直しを高く評価している。新たなドロップボックスの登場によって、ユーザーはオンラインストレージとローカルの区別なくコンテンツを保存するようになるだろう」
米金融大手ゴールドマン・サックスのアナリスト、ヘザー・ベリーニもこの見方に同調し、料金見直しが「売上増の追い風」になり続けるとしている。
(翻訳・編集:川村力)