ビジネスチャット「スラック(Slack)」の全従業員への導入を決めた、ライドシェア大手ウーバー(Uber)のダラ・コスロシャヒCEO。
Mike Cohen/Getty Images for The New York Times
- ライドシェア大手ウーバーが従業員3万8000人全員を対象にビジネスチャット「Slack(スラック)」を導入することを決めた。
- 2月にIBMが全社員35万人への導入拡大を決めたばかりで、スラックの快進撃が続く。
- ウーバーが全従業員3万8000人へのスラック導入を決めたことが、複数の社員のツイートから明らかになった。
2月20日にウーバーのエンジニアによるツイッター投稿がきっかけで、全従業員への導入が明らかになった。Business Insiderの取材によると、ウーバーがスラックの一部導入を始めたのは2019年。ウーバーにコメントを求めたが、返答はなかった。
マイクロソフトのビジネスチャット「Teams(チームズ)」とのシェア争いが激化するなか、スラックは大きな顧客を獲得したことになる。
スラックが成長を続けるために避けて通れない、大企業への対応力を不安視する声がウォール街のアナリストからあがっていたが、状況は徐々に変わりつつある。IBMは最近、全従業員35万人への導入範囲拡大を決め、マイクロソフトと互角に戦えることを示した。
ウーバーはIBMほどの規模はないものの、同社の全従業員への導入により、スラックがこれまで収入源としていた中小企業向けのビジネスから脱却しようとしている証しになったことは間違いない。
ビジネスチャット選びに悩み抜いたウーバー
2019年6月20日、スラックは5月のウーバーに続いてニューヨーク証券取引所に上場を果たした。
Drew Angerer/Getty Images
2016年、ビジネスチャットの導入を検討していた当時のウーバーは、スラックではニーズに対応しきれないと判断し、豪アトラシアンの「ヒップチャット(HipChat)」(現在はサービス終了、同社の他プロダクト含めスラックに移行)を導入した。
その後まもなく、ヒップチャットのセキュリティに不安を抱いたウーバーは、オープンソースの「マターモスト(Mattermost)」をベースに、独自のツール「ユーチャット(uChat)」を開発している。
その間、スラックはウーバー規模の大企業にも適応できるよう、プロダクトの磨き上げを進めた。そして2017年、従業員50万人規模の会社にも対応可能なプレミアムバージョン「スラック・エンタープライズ・グリッド(Slack Enterprise Grid)」をリリース。セキュリティとプライバシー面でも強化を図った。
クラウドストレージのドロップボックスと同じように、スラックは「フリーミアム」モデルを採用している。ユーザーは最初フリープランでサービスを使い始め、必要性が出てきた段階で有料プランに切り替えるというものだ。
このモデルの採用はずばり的中し、規模の小さなチームが気軽に使い始め、同僚やパートナーに紹介するという流れで、ユーザーが広がっていった。ウーバーも2019年、ついにスラックの一部導入を決め、今回ついに全社導入にたどり着いたわけだ。
ウーバー、スラックとも、2019年の上場後は激動の時期を過ごしている。スラックの株価は6月の上場後約30%ダウン。ウーバーも、ダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)の手腕が疑問視され、株価の冴えない時期が続いた。
[原文:Uber is moving all of its 38,000 employees to Slack, in a big win for the work-chat app]
[翻訳・編集:川村力]