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Netflixはアニメ業界の救世主になれるか。CLAMP大川七瀬、樹林伸が語る日本のアニメビジネスの課題

左から、Netflixのシンボルマークを持つ櫻井大樹氏(Netflixアニメチーフプロデューサー)と樹林伸氏。

左から、Netflixのシンボルマークを持つ櫻井大樹氏(Netflixアニメチーフプロデューサー)と樹林伸氏。

撮影:吉川慧

Netflixがアニメーション分野で新たな取り組みを始める。同社は2月25日、日本発のオリジナルアニメの強化を目指して、国内のトップクリエイター6名とパートナーシップを結んだと発表した。

参加するのはCLAMP、樹林伸氏、太田垣康男氏、乙一氏、冲方丁氏、ヤマザキマリ氏の6名。各クリエイターはNetflixと組み、それぞれが参加する企画で脚本の考案やキャラクターデザインなどに携わり、オリジナルのアニメーション作品を制作する。

この日に開催されたマスコミ向けの説明会では、アニメーション制作に関するパネルディスカッションが開かれ、CLAMPの大川七瀬氏と樹林伸氏が登壇。アニメ業界の現状や課題について語った。

「世界が見たこともないストーリーを」

Netflixが独占配信する「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」。繊巧かつ情感あふれる描写と脚本が話題に。海外のアニメファンからの人気も高い。

Netflixが独占配信する「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」。繊巧かつ情感あふれる描写と脚本が話題に。海外のアニメファンからの人気も高い。

撮影:吉川慧

Netflixは2017年ごろからアニメーション作品に注力。制作プロダクションと包括提携し、オリジナル作品を制作・配信している。湯浅政明監督の『DEVILMAN crybaby』(2018年)は原作の世界観を活かした描写で大きな話題を呼んだ。『クロース』は、1月に発表されたアニー賞で、作品賞を含む7部門受賞を果たした。

オリジナル以外のアニメ作品の独占配信にも力を入れ、京都アニメーションの『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は海外のアニメファンにも好評を博している。

Netflixの櫻井大樹アニメチーフプロデューサーによると、現在同社は世界100拠点でオリジナル作品を制作しているという。櫻井氏は「アニメーション制作部署は3部門あるが、日本的なアニメを作る部署は東京が本拠地。制作に関する決断はアメリカに確認を取らず、東京で決断できる」と説明。

その上で櫻井氏は「世界がまだ見たこともないストーリーをチャレンジングに制作していきたい」「日本には本当に素晴らしい漫画家、アニメーター、小説家などが沢山いる。そういう人たちのホームグラウンドになりたい」と抱負を語った。

「DVDが売れないアニメは作れない」という危機感

国内のトップクリエイターがNetflixとタッグを組む。どんなコンテンツが生み出されるのだろうか。

国内のトップクリエイターがNetflixとタッグを組む。どんなコンテンツが生み出されるのだろうか。

提供:Netflix

パネルディスカッションには、CLAMPの大川七瀬氏と樹林伸氏も登壇。

樹林氏はNetflixとの取り組みについて「最初からグローバル発信でやれる仕事はすごく心が踊る。楽しみだと感じました」とした上で、以下のように語った。

(テレビアニメは)スポンサーありきだったりとか、テレビなりのコードといいますか、そういうものがどうしてもアニメにはつきもの。やっぱり子ども向けという空気感が抜けきれていないというか。当然そうなんですが、そういう部分を加味しながらやっていかなければいけない部分がある」

「Netflixのような比較的自由な環境でやっていただいて、突破してくれれば、そこから周りの大人がついてくる。僕の目から見たら地上波よりは自由なので、そこをきっかけに業界を変えていってほしいと思います」

大川氏はCLAMPのメンバー4人全員がNetflix会員だというエピソードを披露。Netflix側からのオファーがうれしかったと明かした。そのうえで、次のように語った。

「スポンサーという問題もそうですが、日本のアニメビジネスはBlu-ray・DVDで回収(=販売)を含め、ビジネスをしてきたという経緯がある。なかなか“回収”というワードというか、システムから逃げられなかった時期が本当に長かったと思うんです」

「Blu-ray・DVDを発売し、売れたものが素晴らしいのはもちろんですが、アニメーションとしてとても素晴らしいけれど、Blu-ray販売に結びつかなかったり、キャラクターグッズが売れないアニメ作品は、なかなか作れなくなってきてしまっている。特に若い才能のある監督、クリエイターたちは、お金を集めるというところからなかなか始められないことが続いていたと思います」

「今回、配信するからには、Netflix側が考えている条件はあるとは思いますが、今までとはまったく違うアニメの作り方ができるのではと思っています」

製作委員会にしばられない「自由なアニメーション」

樹林伸氏は『DEVILMAN crybaby』を見た時に衝撃を受けたことを吐露。「おそらく地上波では不可能なことも描いていた。こっちの世界でアニメがやれるようにっていったら、流れが変わっていく瞬間を見ているなと感じた」と興奮気味に語った。

樹林伸氏は『DEVILMAN crybaby』を見た時に衝撃を受けたことを吐露。「おそらく地上波では不可能なことも描いていた。こっちの世界でアニメがやれるようになっていったらいい。流れが変わっていく瞬間を見ているなと感じた」と興奮気味に語った。

提供:Netflix

Netflixに代表されるような動画配信の隆盛によって、クリエイターたちにはどのような影響があるのだろうか。そんな問いにも、樹林氏と大川氏は答えた。

樹林氏は『DEVILMAN crybaby』を見たときに衝撃を受けたことを吐露と興奮気味に語った。

大川氏も、樹林氏と同じく「今が(アニメ制作の仕組みが)変わっていく節目かも」と語った。その上でアニメ界の製作委員会方式の功罪について言及した。

「アニメーションを作るときには時間がかかるだけでなく、もちろんお金もかかってしまう。映画やTVアニメでは、製作委員会という方式をとることがとても多かった。それはそれでリスクヘッジを含めて悪いことではないんですが、色々な人の意見が入ってしまったり。制作会社が“この監督に任せたい”ともし思ったとしても、監督の意見で自由に作れなくて製作委員会側がコントロールせざるを得ないことが多かったと思う」

「(『DEVILMAN crybaby』は)監督の個性、原作の残酷さや非常に切ないところも含めて、一つの作品として“1色”で作れたのではないかなと。そこがNetflixさんがオリジナルを作る価値だと思う。今後もそういう作品が増えていってくれれば、配信する意義のあるアニメになる。オリジナルアニメがあとからNetflixで実写になる可能性もあると思う。いち視聴者として楽しみです」

「船頭が多くない」Netflixならではの制作体制

自身も「櫻井圭記」の名前でアニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』シリーズに参画していた櫻井大樹チーフプロデューサー。「世界がまだ見たこともないストーリーをチャレンジングに制作していきたい」と熱を込めて語る。

自身も「櫻井圭記」の名前でアニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』シリーズに参画していた櫻井大樹チーフプロデューサー。「世界がまだ見たこともないストーリーをチャレンジングに制作していきたい」と熱を込めて語る。

提供:Netflix

櫻井チーフプロデューサーによると、作品ごとにアニメ制作を担うスタジオには「当たりをつけている」という。

各スタジオが制作工程に携わるタイミングも、脚本づくりからか、または脚本完成後からなのかなど、パートナーシップを組むクリエイターと相談しながら「フレキシブルに対応する」という。

監督の人選については、基本的にはスタジオに推薦してもらい、候補がいなければNetflix側が選ぶという。Netflixは、パートナーシップを結んだクリエイター、制作スタジオ、監督の「全員がハッピーな組み合わせ」が構築できるようコーディネートする。

櫻井氏はオリジナルアニメの制作体制の利点について、「ほとんどの場合は原作権を持っているので制作費を多く出してあげやすい。もう一つは船頭が多くない。原作は先生方と我々、出資も我々、脚本の打ち合わせも3人とか4人。誰かにお伺いを立てることがない」と述べた。

作品の成功評価については「具体的な数式は言えないが、基本的にはどれだけの人が見てくれたか、どれくらいの時間見てくれたか。人数が多ければ多いほどありがたいですし、離脱せずにずっと見てくれたか、繰り返し見てくれたかみたいなことも評価の対象になる。そういうものを総合して、作品が成功したかどうかを判断する」と説明した。

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