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- イギリスの調査会社オックスフォード・エコノミクスは、新型コロナウイルスが世界的パンデミックになれば、世界全体のGDP予測から1兆1000億ドル(約121兆円)が消えかねないとの見方を示した。
- 同社は、パンデミックがアジアにとどまったとしても、世界のGDPはその予測を4000億ドル下回るだろうと見ている。
- 世界的パンデミックは、大規模な労働力不足や消費の落ち込み、旅行・観光業界の低迷、アメリカやヨーロッパの先進国における自律的景気後退を引き起こすだろうと、エコノミストは書いている。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を計ろうとアナリストらが急ぐ中、オックスフォード・エコノミクスは、パンデミックになれば世界経済から1兆1000億ドルが消えかねないと見ている。
今週に入って、イタリア、イラン、韓国では新型コロナウイルスによって死亡するケースが相次いでいて、世界的な流行に対する恐怖が高まっている。よりリスクの低い金や国債に投資家が殺到する中、アメリカの株価は大幅に下落している。
今や全ての目がアウトブレイクの封じ込めがうまくいくかどうかを予測する重要な指標の1つである、中国以外での死亡者数に注がれている。中国では感染の広まるスピードが落ちているが、アジアやヨーロッパでの新たな流行が、新型コロナウイルスの世界的なパンデミックにエスカレートする可能性がある。
オックスフォード・エコノミクスのエコノミストは、ウイルスが及ぼす経済的影響を2つのシナリオで予測した。そのベースライン予測は、アウトブレイクがパンデミックのレベルに達する前に「大規模だが短期間の経済的打撃」が中国に集中するとしている。世界のGDP成長率は1月から2月まで0.2%減になるだろうという。
レポートによると、新型コロナウイルスのパンデミックがアジアにとどまれば、2020年の世界のGDP成長率は同社のベースライン予測を0.5%(または4000億ドル)下回るだろう。国際貿易や消費者支出の低迷は2020年の前半が最も深刻で、その後、急激な回復が2021年まで続くだろうとしている。
だが、感染が世界中に広まれば、世界のGDPに与える影響も3倍近くなると、エコノミストのアダム・スレーター(Adam Slater)氏とニール・ウォーカー(Neil Walker)氏は書いている。アメリカやヨーロッパの先進国が2020年前半に自律的景気後退に入る中、世界全体の経済成長も2020年前半はゼロ近くまで落ち込むだろうという。
2020年の世界のGDPは、オックスフォード・エコノミクスのベースライン予測を1.3%下回り、見込まれていた1兆1000億ドルの経済成長が消えるだろうとしている。
ただ、より不吉なケースですら、パンデミックの封じ込めの後、世界経済は急激な回復を見せるだろうと、チームは付け加えている。ウイルスは世界のGDPに「短期的だが非常に激しいショック」を与え、2020年末から2021年にかけて回復し、2021年末にかけて流行前と同水準まで戻るだろうと、オックスフォード・エコノミクスは見ている。
今回の予測をするにあたって、エコノミストたちは2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)や過去の豚インフルエンザの流行を参考にした。オックスフォード・エコノミクスは、パンデミックレベルの流行は、消費支出や国の労働供給量に影響を及ぼし、観光・旅行業界を低迷させ、設備投資を減少させるなど、さまざまな面から経済に打撃を与えるだろうと見ている。
また、世界中の金融セクターが株価の下落やマネーマーケットのスプレッドの拡大に苦しむだろうとも述べている。
(翻訳、編集:山口佳美)