新型ウイルスでイベント中止、仕事がなくなったらどうなる?3つのケース

フリーランスの人

新型コロナウイルスの影響は、フリーランスで働く人にも大きく影響している。

フリパラより転載

日本でも感染が拡大し、深刻度を増してきた新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)。社員のリモートワークが推奨されたり、イベントが次々に自粛されたりするなど、あらゆる業界で影響が出てきています。

フリーランスにも決して無関係ではありません。

イベントの中止で、予定していた仕事が入らないということもあるでしょう。また、自分が仮にウイルスにかかってしまったとき、仕事はどうしたらいいのか悩んでしまいますよね。

今回は、フリーランスの契約に詳しい弁護士の寺西章悟先生への取材をもとに、「フリーランスのための新型肺炎対応策」をまとめてみました。

目次

シーン1:新型肺炎の拡大を理由として仕事がなくなったら?

シーン2:自分が新型肺炎にかかってしまったら?

シーン3:感染予防として自分が業務を控えたいときは?

どうしたらいいか判断に迷ったら……

シーン1:新型肺炎の拡大を理由として仕事がなくなったら?

フリーランスの人

shutterstock

まず、新型肺炎の拡大を理由として、今後イベント、セミナー、研修、撮影などが中止になり、依頼されていた仕事がなくなってしまうフリーランスが出てくることが予想されます。そんな時、フリーランスに対して、想定されるのはどのようなトラブルでしょうか。

Q:新型肺炎を理由として業務がなくなった場合、委託料は支払われるの?

A:不可抗力なのか、発注者の自主判断なのかで、業務委託料が支払われるかどうかが変わります

今後もし国または地方公共団体から強制力のある外出禁止命令が発令されるなど、不可抗力によって業務の実施ができない状況になった場合、民法536条1項により、委託料は支払われません。

一方、客観的に業務遂行ができない状況に至っているわけではなく、業務を発注した会社の判断(自粛)による中止である場合には、委託料及び実費を請求する権利(債権)は失われません(民法536条2項第1文)。

実費とは、業務の遂行を委託されたフリーランスがその履行のために支出した費用のことです。具体的には、イベントの会場費やケータリング費、取材の航空券など、委託料以外にフリーランス側が事前に負担した部分を指します。

なお、業務の中止によって得た利益(フリーランス側で負担することが予定されていた費用の支出をフリーランスが免れた場合の当該費用相当額など)があればその分は委託料から差し引かれます(同項第2文)。

また、合意によって解約する場合は、委託料及び実費について取り決めておかないと、後日支払いを受けられなくなる可能性もありますので、忘れずに合意するようにしましょう。

主催者も参加費収入が無くなるなどの事情があり、委託料や実費の支払いが難しいと言われるケースがあるかもしれません。主催者との話し合いでは、予定を空けていた機会損失分として委託料の一部が支払われる実例もあるようで、事前に取り決めをしてない限りは、主催者が任意に支払ってくれるかどうか、発注者側の良心に委ねるしかないというのが実情かもしれません。

可能な限り、中止ではなく延期やオンライン配信などの対応で双方に過度な負担が生じないような工夫をすると良いでしょう。

「現状では、工夫次第で実施できると判断されること、つまり不可抗力ではなく、会社の判断による中止であるとまとめられるケースが多いと考えられます」と寺西先生は話します。

また、話し合って業務の中止を決める場合には、「後でもめないように、委託料及び実費の取り扱いについて確認した上で中止の合意をすべきです。」(寺西先生)とのこと。

以上は、民法上のデフォルト・ルール(原則)による場合で、当事者間の契約で取り決めがある場合にはその取り決めによることになりますので、契約書などを確認しておくと良いと思います。その上で、以上をまとめると、主催者判断による業務中止の場合は、

  • フリーランスの業務委託料→支払われる
  • フリーランスが支出済みの実費→支払われる
  • フリーランス側で負担する予定であったものの、中止によってフリーランスが支出せずに済んだ費用→委託料から差し引かれる

となります。

民法上はこういうルールですが、業務発注先の立場も考慮しつつ、今から話し合いをしておくとよいかもしれませんね。

Q:新型肺炎の影響で取引先の事情が変わり、業務委託契約を更新してもらえなかった! そんなのアリ?

A:更新拒絶はお互い可能だが……

契約更新のタイミングで、契約上のルールに従って更新しないことが可能というのは、業務委託を依頼する側も引き受ける側も同様の権利です。

しかし、「①実質は雇用である、②長期間継続している、③フリーランス側で契約の履行のために資本投下している、④依存度が高い、など特殊な事情があれば、会社側からの更新拒絶が認められないこともあり得ます」(寺西先生)

シーン2:自分が新型肺炎にかかってしまったら?

寝こんでいる女性

shutterstock

自分がどんなに予防していても、新型肺炎にかかってしまうリスクはあります。

また、新型肺炎だけでなく、インフルエンザのように感染症にかかることは日常的にはありますよね。

フリーランスの場合、会社員と異なるのはやはり「休業補償」がないこと。有給休暇はもちろんありませんし、逆に自分が休んだことで損害が起きたらどうしよう……!

そんな不安な思いを、寺西先生にぶつけてみました。

Q:感染したかもしれない場合にはまず何をすればいい?

A:罹患した可能性があることを速やかに発注先に申し出よう

一般的に、会社員であれば、こうした病気にかかった場合、就業規則により出社禁止になります。ただ、フリーランスの場合、契約書にそこまで書かれていないこともあるでしょう。

しかし、新型肺炎にかかっていることを隠して業務を遂行したことで、他人を感染させてしまった場合には不法行為責任を負うことがあり得ますので注意が必要です。

風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合、強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合には、最寄りの保健所などに設置される「帰国者・接触者相談センター」に問い合わせましょう。

また、高齢者、糖尿病、心不全、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など)の基礎疾患がある方や透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤などを用いている方で、これらの状態が2日程度続く場合は、帰国者・接触者相談センターに相談しましょう。

フリーランスでも会社に出社するスタイルを取っているケースで、もしかしたら、「会社に来なければ業務が回らない」と言ってくるブラック企業もあるかもしれません。

しかし、それに関しては、「会社もフリーランスから感染している可能性があるとの申し出を受けながら業務を実施させた場合には、安全配慮義務違反、共同不法行為責任を負うことがあり得ます」(寺西先生)とのこと。

つまり、罹患している可能性があることを業務委託先に伝えれば、そのフリーランスの出社を会社側から拒否する可能性が高いです。そうすると、「会社側が出社を拒否した後は、それ以降フリーランスが出社しなかったことについて責任を問われることはないと思います」(寺西先生)ので、ご安心を。何事も早めに話し合って決めることが大事ですね。

なお、新型肺炎に罹患したことで業務遂行ができなくなり、それによって会社に損害が生じた場合、損害賠償責任を追及されるかもしれないということが心配な方もいらっしゃるかもしれません。ただ、感染したことについて合理的な疑いがある状況で業務を遂行して他人を感染させてしまう事態は避けなければなりません。

また、新型肺炎に罹患したことについて故意過失があると判断されて、損害賠償責任を負うことになるケースは少ないと思いますので、無理に業務を遂行することは避けましょう。これは、新型肺炎だけでなく、インフルエンザなどの感染症でも共通して言えることです。

損害賠償責任を負うことが心配な方は、損害賠償責任保険への加入を検討してみるのも良いかもしれません。

Q:自分が新型肺炎にかかったら、業務委託報酬はどうなるの?

A:業務を遂行できない場合、受け取ることはできません

委託された業務を遂行していないため、その委託料を受け取ることはできないというのは仕方ありません。また、業務遂行が延期された場合に、支払いが遅れた分の補填は特に発生しません。

シーン3:感染予防として自分が業務を控えたいときは?

作業している手元

shutterstock

感染が拡大している現時点で、自らリスクを負った業務は避けたいと考える人もいるでしょう。その場合、業務を中止したいということはできるのでしょうか?

Q:フリーランス本人が、感染を避けるために業務を中止できる?

A:一方的には契約解除はできない

これは、逆の立場ですが、シーン1の「Q:先方の都合の場合、業務委託料は支払われるの?」にもあるように、現状では、不可抗力とは判断されない可能性が高いようです。

「特に契約書に定めがなければ、一方的に契約を解除することはできません。話し合いをすべきです」(寺西先生)。

どうしたらいいか判断に迷ったら……

相談する姿

shutterstock

民法上のざっくりしたまとめは以上になります。

とはいえ、実際にトラブルになったときには、専門家に相談するのも一つの方法になりそうです。

フリーランス協会では、下記のようなサービスを提供しています。ぜひ利用してみてくださいね!

報酬トラブル弁護士保険「フリーガル」

フリパラより転載(2020年2月26日公開の記事)


寺西章悟:田島・寺西法律事務所パートナー弁護士。2009年弁護士登録(東京弁護士会)。M&A,資本提携、ベンチャーファイナンス等の取引案件と会社に関する紛争解決の経験が豊富な弁護士です。「業種別ビジネス契約書マニュアル」(編著、日本加除出版、2015年)、「リスクマネジメントとしての内部通報制度」(共著、税務経理協会、2015年)。

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