オーストラリア・タスマニア州で風景を眺めるバックパッカー。
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- 山火事とコロナウイルスによる渡航禁止で、オーストラリア観光業界は大きな損害を受けている。
- オーストラリアは、18歳から30歳までの旅行者に、山火事からの復旧作業を支援するために、丸一年間ワーキング・ホリデーで働く機会を提供している。
- 2月17日、オーストラリア政府はビザの期間を6カ月から12カ月に延長した。
- 高校教育を受け、就労パスポートを持つ、40のパートナー国からの旅行者が申請できる。
- 今回のビザ延長は、山火事とコロナウイルスによる渡航禁止措置の後の、旅行者を増やそうとするオーストラリアの大規模な取り組みの一環だ。
今年のオーストラリアの山火事シーズンは、観測史上最悪だったと言われている。
2月中旬の時点で、460億エーカー以上が焦げ、10億匹の動物が殺され、3000の家屋が破壊された。
オーストラリアの夏が終わりに近づくにつれ、山火事は減少し、若いバックパッカーが訪れるようになってきている。
若い外国人旅行者を呼び込むためにビザの規則を変更
数十年にわたり、オーストラリアは40のパートナー諸国からの18歳から30歳までの旅行者に対し、ワーキング・ホリデー・メーカー・ビザで就労する機会を提供してきた。そして今回、旅行者が山火事の復旧作業を支援できるよう、ビザの期間を6カ月から1年に延長した。
「勤勉なオーストラリア人は山火事の被害を受けた。しかし、今日からは6カ月長くバックパッカーを雇うことができる。復興の重要な時期の助けとなるだろう」とオーストラリアの移民・市民権・移民サービス・多文化問題担当大臣、アラン・タッジ(Alan Tudge)氏は2月17日に声明で述べた。
「企業や慈善団体が必要なだけ、多くの旅行者が来てほしい」
バックパッカーなどの「ワーキング・ホリデー・メーカー」は、火災の影響を受けた地域に行き、住宅の再建、道路の修復、土地の整地を支援できるようになると、タッジ氏は述べた。
このビザを取得するには、高校の卒業資格か同等の資格を持ち、有効なパスポートを所持し、「適切な健康保険」に加入していなければならない。オーストラリア内務省のウェブサイトによると、申込者の75%は39日以内に申請の回答が得られるという。
サイモン・バーミンガム(Simon Birmingham)通商観光投資相は「地域社会に参加できるワーキング・ホリデー・メーカーは、地元の仕事を守り、地元のビジネスを存続させるための訪問者だ」と述べた。
オーストラリアの観光は、山火事とコロナウイルスによって二重の打撃を受けた
1月17日、オーストラリア観光輸出協議会は、山火事は2020年の間にオーストラリアの観光産業に45億豪ドル(約3400億円)の影響を与えると推定したと、旅行ニュースサイトのSkiftが報じた。
その2日後、オーストラリア政府は、山火事関連の旅行キャンセルに対応して、7600万豪ドル(約54億円)の観光復興支援予算を発表した。
スコット・モリソン首相は「オーストラリアの観光業は、これまでで最大の危機に直面している。オーストラリアでは13人に1人が観光産業に従事している」と述べた。
最近では、2月29日までコロナウイルス対策としての渡航禁止が実施され、オーストラリア人以外が中国からオーストラリアへ移動することが禁止された結果、観光産業が大きな打撃を受けている。
ビクトリア州東部でレンタルボート業を営むチャーリー・グレッチ(Charlie Grech)氏は、不安を抱いている地元観光事業者の一人だ。「山火事の上にコロナウイルスと、我々にとって二重の苦境だった。今年の売上減をカバーするのは苦労するだろう」と彼はオーストラリアSBSニュースに語った。
オーストラリア・フィナンシャル・レビュー紙のマーク・ラドロー(Mark Ludlow)クイーンズランド支局長は「観光は、オーストラリアの最も重要な産業だ。年間約120億豪ドル(約8600億円)に相当する市場へのアクセスを遮断している中国からの渡航禁止によって、月間約10億豪ドル(約7億円)を失っている」と述べた。
観光客を呼び戻すために、オーストラリア政府観光局は「There's Still Nothing Like Australia(オーストラリアほど素晴らしい国はまだない)」と呼ばれるキャンペーンをアジアとイギリスで開始した。ラドロー氏によると、キャンペーン費用は4000万豪ドル(約28億円)になるという。
バーミンガム観光相は、「いくつかの主要市場にターゲットを絞ったキャンペーン活動の目的は、オーストラリアがビジネスに開放されており、驚くべき体験を提供する、非常に人気があって安全な訪問先であるというメッセージを迅速に伝えることだ」と述べた。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)