資産管理会社のバーンスタインによると、リシュモンが所有するカルティエは中国市場に最も依存している高級ブランドの1つだ。
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- バーンスタインとボストン・コンサルティングが実施した新たな調査によると、高級ブランドの幹部は、コロナウイルスの流行によって高級品市場の売り上げが300億ユーロから400億ユーロ(3兆6000億円から4兆8000億円)減少すると予想しているという。
- 高級品ブランドは、主要顧客である中国の消費に打撃を与えるコロナウイルスの大流行に特に脆弱だ。
- 中国での店舗やショッピングモールの閉鎖、観光や移動の禁止が、高級品の売り上げに打撃を与えている。
投資調査会社バーンスタインの最新レポートによると、コロナウイルスの流行で、高級品市場は430億ドル(約4兆7000億円)もの売上高を失う可能性があるという。
バーンスタインは、ボストン・コンサルティング・グループと協力して、高級ブランドの28人の経営幹部を対象に、ウイルスが与えると思われる影響を調査した。(バーンスタインはBusiness Insiderの取材に対し、この調査にどのブランドの幹部が含まれているかは明らかにしなかった)。
彼らは、ウイルスの蔓延により、2020年には300億ユーロから400億ユーロ(3兆6000億円から4兆8000億円)の売上減を見込んでいる。
調査対象となった幹部の43%は、売上が戻るまで3カ月から6カ月間、影響を受けると予想している。
2020年は多くの高級ブランドにとって災難
高級品市場は最も重要な顧客である中国の消費習慣に影響を与えるコロナウイルスの発生に対して特に脆弱だ。
Bainの最近のデータによると、中国の消費者は2019年の世界の高級品市場での総支出の約35%を占め、世界の高級品販売の伸びの約90%を占めると推定されている。
中国本土の店舗やモールが閉鎖されたため、これらの顧客は自国で買い物をすることができなくなっており、中国政府やその他の国が旅行を禁止したので、これらの顧客は他の国でも買い物をしていない。Bainによると、中国の買い物客が消費する高級品の大半は国外で購入されているため、特に影響が大きいという。
こうした物理的な制約のほかに、消費マインドの低下で、店舗を利用したりオンラインで買い物をすることができる人々も、買い物をする気分にならない。
高級品の専門家で、LVMHノースアメリカの元会長であるポーリン・ブラウン(Pauline Brown)は、ヤフー・ファイナンスのインタビューで、2020年は多くの高級ブランドにとって「災難」になると予想していると述べた。
「高級品の特長は、ある四半期にそれを購入しなかった場合、次の四半期にそれを補う需要が発生するわけではないということだ。失った売上を取り戻すことはできない」と、彼女は言う。
コロナウイルスの発生による経済的影響は、2003年のSARSとしばしば比較される。しかし、バーンスタインの報告書は、この2つの流行の大きな違いを浮き彫りにしている。2003年には、中国は高級品市場における世界需要の2%から3%を占めていたにすぎないが、今日ではその10倍になっている。つまり、今回は高級ブランドのダメージが非常に大きいということだ。
また、バーンスタインの調査によると、高級時計ブランドを抱えるスウォッチ・グループと、カルティエやクロエの所有者であるリシュモンは中国に大きく依存しているのに対して、ルクソティカとモンクレールはそうではないという。
[原文:The coronavirus epidemic could wipe out $43 billion of luxury sales in 2020]
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)