これが本当のスマートホームだ、とバンブルビー・スペースの共同創業者は言った。
Katie Canales/Business Insider
- サンフランシスコのスタートアップ企業、バンブルビー・スペースは、ベッド、クローゼット、机、ナイトスタンドを天井に収納するモジュールを設計している。
- このシステムには「あなたの好みや日常生活を学習する」AIが装備されている。
- バンブルビー・スペースは2017年に、テスラとアップルの元従業員サンカルシャン・ムルティらによって設立された。
- 同社にはサンフランシスコの不動産開発業者と4つのプロジェクトを進めていて、そのうち1つは現在、2ベッドルーム(この技術により3ベッドルームに変更可能)の部屋を月約5000ドル(約55万円)で利用できる。
サンフランシスコや他の都市の住宅問題を解決するために数多くの大胆な提案がなされてきた。二段ベッドもその一つだ。
バンブルビー・スペース(Bumblebee Spaces)は同社の名前の由来となった空間最適化ユニットからインスピレーションを得て、天井に家具を収納するシステムを開発している。
サンフランシスコに拠点を置くこのスタートアップは、モジュール式の天井システムを構築してリビングルームの「ロックを解除」し、地価の高い地域での空間を2倍、3倍に有効活用できるようにする。
家具モジュールは厚さ13インチ(約33cm)で、天井にテトリスのように配置される。同社はキングサイズとクイーンサイズのベッド、ナイトスタンド、ドレッサー、デスク、そして荷物を収納するためのより厚いモジュールも提供している。
天井からベッドが降りてくる。
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これは2ベッドルームのアパートに3つ目のベッドルームを追加するためのアイデアだ、と共同設立者のサンカルシャン・ムルティ(Sankarshan Murthy)はBusiness Insiderに語った。利用するのはルームシェアをする3人だったり、カップルだったり、家族だったりするかもしれない。
「ライフステージの変化に合わせて、モジュールを付けたり、外したりできる」
このスタートアップ企業が扱うのは、家具であり、倉庫であり、あるいはムルティが言うところの「内部空間(inner space)」だ。ムルティによると、ストレージ問題は、クラウド・ストレージから天井のストレージに至るまで、依然としてそれそれの市場に存在しているという。
ギャレット・ライナー(Garrett Rayner)、プラフラーダ・アトレヤ(Prahlad Atreya)とムルティ(アップルでApple Watch、テスラでModel Yの開発に携わった)によって2017年に設立された同社は、NTT、アシュトン・カッチャー(Ashton Kutcher)のSound Ventures、Valor Equity Partnersなどのベンチャーキャピタルから2200万ドル(約24億円)を調達した。
SF Gateの記事によると、最近、同社のクレイグズリストの広告が話題になった(現在は削除されている)。賃料月額3295ドル(約36万円)のアパートに同社のシステムを設置し、ベッドを天井から下ろしているところを見せたことで、世間の注目を集めたのだ。住宅危機を解決するのに役立ち、すぐにでも使えるシステムは話題を呼んでいる。
バンブルビー・スペースは、個人宅のリフォームを行うこともあるが、主には、アパートを所有、運営、開発する不動産デベロッパーにシステムを直接販売している。リフォームにフォーカスしているものの、一部のデベロッパーとは共同で天井システムを開発していて、コストダウンできる可能性がある。
「必要なときにいつでも当社のワードローブを追加できるのに、なぜ昔ながらのクローゼットを追加するのだろうか」とムルティは言う。
同社は、ニューヨーク市などベイエリア以外の地域でもプロジェクトを展開しており、サンフランシスコでは4つのプロジェクトが進行中または計画されているだ。住宅需要を満たすのに十分な供給量がない大都市ではこのようなコンセプトは恩恵をもたらすだろう。
ムルティは、住宅のニーズを満たすために二次元的にスペースを確保することは、無駄に終わる可能性があるという。ゲストのための部屋や、子供の遊び場、娯楽スペースはいつも利用されているわけではない。「そのための部屋を作る必要ない」と、彼は言う。
「必要なときに部屋を作ればいい」
バンブルビー・スペースのシステムを見てみよう。
サンフランシスコのミッション地区にあるバンブルビー・スペースのオフィスでデモを見てきた
モジュールはアプリまたは音声で制御できる
システムのデモスペース。
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ムルティがタブレットを操作すると、
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ベッドが降りてきた
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人工知能がユーザーの行動を学習し、何をどこに収納するかなど、ニーズを解釈して動作する。
「我々のAIはあなたの好みや日常から学び、あなたの人生に合うように適応する」と同社のウェブサイトには書かれている。
天井の各コンパートメントのどこに何があるかを床に座ったユーザーがわかるモジュール内カメラがある
タブレットで操作できる。
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ムルティは、ディズニーのテレビ番組 「ミッキーマウス クラブハウス」 で、ミッキーとその仲間が、同じ形に変化する異なる部屋で過ごす様子にインスパイアされた
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しかし、もう1つのインスピレーションの源は、例えば上演中にセットデザインが上下するような劇場の舞台装置だ。
もともとバンブルビー・スペースは彼の「デトックスプロジェクト」、つまり副業で、彼はテスラで過ごした18カ月の間、週末と夜にこれに取り組んだ。
設置にはまず、天井に固定のための一種の手すりを取り付ける。「そこに“ロボット”を吊るして天井全体に負荷を分散させる」とムルティは言う。
より自動化された天井家具を「ロボット」と呼んでいる
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モジュールはセンサーで周囲の環境とユーザーを認識して安全を確保している。
モジュールへの荷重には制限があり、例えば、誰かがベッドに横たわっている場合は、ユーザーが天井に収納するように指示した場合でも所定の位置に留まるように設計されている。また、モジュールは降りるスペースをスキャンし、誰かまたは何かが邪魔になる場合、ロフトの位置に留まる。
それは、ムルティが静的・動的安全性と呼ぶものだ。 モジュールが下降しているとき、それは常に空間をチェックしている
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ムルティによると、これを実現するのは難しかったという。
彼らのシステムは、スマートホームに分類されるだろう。しかしムルティは現在のスマートホームは「照明とスピーカーに乗っ取られている」と述べ、 自分の会社が設計しているものが、スマートホームの可能性を示すよりよい例になるかもしれないと言った。
ムルティは「これがスマートホームだ」と言う
同社は家を改造しようとする顧客の依頼をときどき引き受けるが、基本的にはデベロッパーとの連携に重点を置いている
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「もっと多くの人に体験してもらいたい」とムルティは言う。多くの部屋があるマンションなどへの導入はそのよい機会になる
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このシステムの価格とその設置費用は公開されていないが、2020年後半には価格を発表すると述べた
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システムはFF&E、つまり固定された備品(Fixture)、家具(Furniture)、什器(Equipment)に分類される(床面積に含まれない)ので費用は抑えられるだろうという。
「部屋を追加したり、クローゼットなどを設えたりするよりもかなり安くすむ」とムルティは言う
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床面積に含まれないため、市の規制もクリアできるという
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機械、電気、配管システムに関する規制は考慮する必要があった。
それぞれのモジュールにどれだけの負荷をかけることができるか、スプリンクラーからどれだけ離れている必要があるか、どのような種類の電気配線を通すことができるかなども考慮している。「電気的には照明器具のようなものだ」とムルティは言う。
バンブルビー・スペースは、サンフランシスコ市内のドッグパッチ地区でのアパート開発に関わっている
Bumblebee Spaces
この2ベッドルームの部屋は、バンブルビーのシステムのおかげで3ベッドルームに変わるとムルティは言う。 ウェブサイトに掲載されている2ベッドルームの部屋の価格は、4760ドル(約52万5000円)から5000ドル(約55万円)だ。
これはシステム導入の一例。ベッドと収納のモジュールが天井全体を占有していないのがわかる
Bumblebee Spaces
ムルティは、同社のコンセプトは、今は目新しさが目立つが、今後主流になってくるものの先例だと述べた
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バンブルビー・スペースの従業員数は現在24人で、大手テクノロジー企業出身者が多いという。同社は自らを 「寄せ集め」 と表現することに誇りを持っているという。
「海軍で将校になる代わりに、この船で海賊になろう」とムルティは言った
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同社はベンチャーキャピタルで2200万ドルを調達し、最後のラウンドはNTTベンチャーズが主導した。 マーシーは、会社の価値を明らかにはしなかった
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(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)