「ある種の国難」スポーツ経営揺るがす新型ウイルス。Jリーグ、プロ野球続々延期

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2月25日の定例会見で、Jリーグの公式戦の延期を発表した村井満チェアマン。

撮影:大塚淳史

新型コロナウイルスによる感染拡大が、ついにプロスポーツのリーグ戦に影響を与えた。プロ野球はオープン戦全試合を無観客試合に、サッカーのJリーグ、バスケのBリーグは公式戦を延期することになった。

事態は2月24日に開かれた政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議で、公式見解が出てから動き出した。

いち早く動いたJリーグ

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2月25日の会見で説明するJリーグの村井満チェアマン。

撮影:大塚淳史

まず、Jリーグが2月25日に理事会を開催し、翌26日のYBCルヴァンカップの試合開催の延期を発表。さらに2月28日から3月15日に開催予定のリーグ戦とルヴァンカップの全公式戦の開催延期を決定した。

Jリーグの村井満チェアマンは「『(専門家会議の見解で)この1、2週が重要』ということで、少し余裕を持たせて3週間空けることにした。サッカーを楽しみにされている皆さまには大変申し訳ない思いもあるが、ある種の国難という状況で、ここは協力するという趣旨を伝えていく」と説明した。

2020年は東京五輪開催に協力するため、例年とは異なる試合日程だった。今のところは代替日程が五輪にかぶらないようにする考え。ただ、そうすることで平日開催となり、土日開催より入場者数が減少する可能性もある。感染拡大が止まらない場合はさらなる延期延長も考えられ、五輪期間とかぶるのもやむを得なくなるかもしれない。

延期により、予定していた入場料収入が得られず、各クラブの経営を圧迫する可能性も出てくる。村井チェアマンは、フォローすることを約束した。

「純資産が非常に薄いクラブや、入場料収入、日銭をあてにしないといけないクラブがある。キャッシュポジションを把握、確認することを同時進行でしています。クラブと連携しながら、資金繰りなどの問題が起こらないか十分配慮していくつもり。

Jリーグには、安定開催基金で10億円ほどの準備金があります。こうしたものを視野にいれながら、今回は試合を中止するのではなく、日程変更をするもの。なるべく財務的に負担にならないようにします

今回の影響でクラブ側に明らかな利益損失が確認できたら、Jリーグの規約にある「大規模災害時補填規程」と照らし合わせて、個別に対応していくとした。

今回は延期という選択肢を選んだが、もし感染が収束しなければ、さらなる開催延期も考えられ、試合の中止、無観客試合という選択肢もあり得る。村井チェアマンは「ファン、サポーターのためにも無観客試合は避けたかった」と話す。

ただ、いずれの選択肢をとった場合でも、Jリーグの各クラブが影響を大きく受けるのは入場料収入だ。

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Jリーグの資料より作成

Jリーグが2019年7月に公開した「2018年度クラブ経営情報開示資料」を見てみると、Jリーグ各クラブは、入場料収益は営業収入全体の1割から2割を占めている。2年前のもので、現在の状況をそのまま反映しているとはいえないかもしれないが、営業収入が多くないクラブにとっては、観客が入る試合の開催は死活問題かもしれない。

プロ野球はオープン戦を無観客試合に

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2月26日に、臨時の12球団の代表者会議後に会見した斉藤惇コミッショナー。

撮影:大塚淳史

3月20日にプロ野球の開幕戦を控える中、日本野球機構(NPB)は2月26日に臨時12球団代表者会議を開催し、オープン戦残り72試合の無観客試合を決めた。

斉藤惇コミッショナーは会議後、「もちろん球団経営に関わることで、簡単に決められるものではない。ただ、コロナウイルスの感染が拡大すると、まさに国難に陥りかねない。今はプロ野球が感染拡大を防ぐためにできることが何かを考えて、苦渋の決断をした」と説明した。

オープン戦は、公式戦よりチケット価格がまだ安い。基本的に利益を追求しているものでもなく、無観客試合となっても各球団の経営に大きな影響はないのだろう。ただ、シーズン開幕してから公式戦で無観客となると、球団経営に大きく響いてくる。何せ各球団の1試合平均入場者数は2万人から4万人。そしてホーム球場で71試合か72試合も行えるのだ。

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プロ野球の各球団の1試合平均入場者数は2万〜4万人と軒並み高水準。

出典:NPBホームページ

東京大学野球部出身の元プロ野球選手で、現役引退後に福岡ソフトバンクホークスで球団経営に携わった、江戸川大学の小林至教授は、

「オープン戦の無観客試合による損害はそこまでではないでしょう。 オープン戦は、選手も球団も公式戦に向けての準備期間で、入場料も安いし、招待券も多い。飲食の売り上げも少ない。興行収益はトントンというのが標準で、利益が出ている球団でも期間を通して1億円程度だと思います。 開幕戦について、現時点では延期の可能性について明示しませんでしたが、1週間後の感染の状況によって、再び判断を迫られるのでは

と話し、2011年3月11日の東日本大震災時に起きたプロ野球開幕問題でのゴタゴタが、今回の会議であらためて共有されたと見ている。

震災直後、セ・リーグとパ・リーグで開幕日をどうするか議論が行われた。楽天イーグルスが被災していることもあり、パ・リーグは早い段階で各球団がまとまり、4月12日に開幕をずらすことを発表した。

しかし、セ・リーグは一部球団が予定通りの3月25日開幕を主張した。それに対して世間から批判が発生した。また、電力不足の問題もあって、最終的にパ・リーグと同じ日に開幕することになった。

「あの時、セ・リーグが『開幕は予定通り』と意地を張り、大ひんしゅくを買ってしまった。オープン戦はすべて中止して練習試合にしました。

もちろん、メジャーリーグが9.11(2001年9月11日に発生した米同時多発テロ)の後、いち早く再開して、アメリカの人々が日常を取り戻すことに大きく貢献した前例はある。

興行主からすると、ビジネスだから、なんとか損害は最小限にとどめたいという思いもある。従業員もいるし、さまざまな業者も関わっていて、経営責任がありますからね。大丈夫、なんとなかなるという理由を探すものですよ。3.11の当時の対応を念頭に置いた議論をしたと思います

もう一つ各球団が頭を悩ますのが、例年より開幕戦が早いことだという。

「東京オリンピックの影響で、例年より開幕戦が早いので、再び難しい判断を迫られることになるでしょう 。ギリギリまで悩むでしょうね。 開幕戦の中止となると、ビジネス面、日程面など、プロ野球ビジネスに与える影響は甚大です」(小林教授)

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集まった報道陣に説明するNPBの斉藤惇コミッショナー。

撮影:大塚淳史

実際、斉藤コミッショナーは現時点で開幕の延期の可能性については明言しなかった。

「なかなかこうします、という状況ではない。(感染の)アンダーコントロールという状況が見えてきたら、(開幕についての)ジャッジできるかもしれないが。ただ、できれば3月20日に始めたいという気持ちはある」

4シーズン目、人気が出てきたBリーグだが……

Jリーグやプロ野球以上に、経営面でダメージが出そうなのがBリーグだ。今回、2月28日から3月11日までの計99試合の開催延期を決定した。しかし、シーズンはすでに終盤にさしかかってきており、代替日程が組みにくい事情もある。

そして、大河正明チェアマンが何より危惧しているのが財政面だ。

「(2016年に始まって)4シーズン目のBリーグは、クラブの財政基盤、リーグの財政基盤も含めて、まだまだよちよち歩き。3月14日に再開を予定しているが、100%再開できるかどうかは感染の傾向を注視して決定する。万が一このまま再開できなければ、Bリーグが3年間で築き上げてきたところに、財政的な問題が生じる。5月まで試合ができない場合、最大損失のリスク値は(B1、B2全体で)60億円とみている」

Bリーグは、入場料収入の割合が高いチームが多い。だからこそ余計に、試合が開催できないとなると、各クラブの経営状況にインパクトを与えてしまう。

「僕(チェアマン)の立場としては、B1、B2の36クラブがこの新型コロナウイルスの問題によって、どのチームも資金繰りに破綻を起こさず、クラブを存続できるかどうか。それが最終的な私の判断目線です。試合の延期を選択したのは、36クラブが60試合のリーグ戦を無事に終えられる可能性のある道だったから」(大河チェアマン)

倒産寸前だった千葉ジェッツを、リーグ屈指の強豪かつ収益力の高いチームに変えた島田慎二会長はTwitterで、

「Bリーグのクラブはホームゲームの30試合に関連する商いで年間売上の大半を稼ぎます。年間30日しか開店しないお店を運営しているようなもので、万が一その数日が閉店になるとしたら死活問題です。地政学的なリスク含め何が起こるかわからないご時世ですのでこの危機をどう経営体質強化につなげるか」

と指摘していた。

Bリーグは年々人気が高まっており、今シーズンは1月下旬に高校3年の河村勇輝が三遠ネオフェニックスに特別指定選手として入団するや否や、いきなり大活躍して話題を呼んでいる。リーグへの注目がさらに集まっていたが、一転厳しい状況に追い込まれてしまった。

他にも、卓球のTリーグがプレーオフの延期を決定。(実業団リーグなのでチーム経営に大きな影響を及ぼすわけではないが)ラグビートップリーグも試合を延期。さらにはバレーボールの男子VリーグもV1の決勝が無観客試合と、いずれも2月26日に一斉に発表された。

国内のさまざまなリーグが深刻な影響を被った日本のスポーツ界。新型コロナウイルスの感染拡大を一刻も早く収束させないと、クラブチームの経営破綻という最悪の事態が起こりかねない。

(取材・文:大塚淳史)

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