連日膨大な情報が飛び交っている新型コロナウイルス。
2月27日時点の情報を元に、知っておきたい6つのポイントを整理した。
1.新型コロナウイルスに感染した場合の症状は?
新型コロナウイルスへの不安からマスクをしている親子。2月23日、上野公園で撮影。
REUTERS/Athit Perawongmetha
新型コロナウイルスに感染しても、無症状か軽症の人は多い。政府専門家会議によると、国内で確認された感染者で症状が出ている人の多くが、発熱や咳などの呼吸器に関係した症状が長く(1週間前後)続き、加えて強い体のだるさ(倦怠感)を訴えていたという。
この見解は、80%が軽症であるという中国疾病予防管理センター(CDC)からの報告ともおおむね合致する。気になるのは、6人に約1人あたりの割合で出てくる重症化した例。
重症例では、重い肺炎になり、敗血症性ショックや多臓器不全、呼吸困難などに陥る例が報告されている。その中には、残念ながら死亡してしまった人もいる。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、糖尿病や心臓病といった既往歴のある人や高齢者の間では重症化しやすいとされている。実際に日本国内で亡くなった7人(クルーズ船での感染者含む)も、分かっている範囲では高齢者や既往歴のある人だ。
ただし、中国の報告では、数は少ないものの既往歴のない、若く健康な人が亡くなっている例がある。どんな人でも、十分な注意が必要であることに変わりはなさそうだ。
厚生労働省のWebページには、新型コロナウイルスに関係する情報が随時更新されている。
出典:厚生労働省
なお、厚生労働省が発表した国内の状況をまとめた資料によると、クルーズ船を除いた国内感染者は186人。そのうち、症状が出ている人は累計で167人。そのうち3人が死亡、32人が退院している。
軽症〜中程度の症状の人は64人で、人工呼吸器を装着したり集中治療室に入る必要があるほど重症な患者は16人。それ以外の52人については確認中だ。
2.世界の感染状況は? 中国では回復基調
世界37か国で、8万人を超える患者が確認されている。
出典:World Health Organization
2月26日付けのWHO(世界保健機関)のSituation reportsによると、全世界で確認されている感染者は、8万人を超えた。そのうち中国での感染者は7万8191人。中国では今もなお、感染者・死亡者数が増えてはいるものの、そのペースは鈍くなっている。重症の患者も少しずつ減っており、ここ数日は新たな感染者数よりも治癒した人数のほうが多い状況が続いている。
一方、中国以外では、感染が広がりつつある。
中国を除くと、26日時点で37カ国で合計2918人にも及ぶ感染者が確認されている(ダイヤモンド・プリンセス号での感染者691人を含む)。死亡者も43人と増えている。
特に、韓国では1261人、イタリアでも322人と、ここ数日で一気に検査が進み、感染者が確認されている。日本、シンガポール、イラン、アメリカなどでも感染者は増加傾向にあり、予断を許さない状況だ。
3.致死率は?
国立感染症研究所で分離された新型コロナウイルスの電子顕微鏡画像。
提供:国立感染症研究所
WHOによると、中国・武漢での感染者は6万5187人。死者は2615人。感染者のうち、死亡した人の割合(致死率)は約4.0%。中国全土で考えると、感染者は7万8191人。死者は2718人なので、致死率は約3.5%に低下する(いずれも2月26日付の情報)。
ただし、感染者数や死者数を比較して分かる通り、中国での感染者・死亡者は武漢に集中しており、他の都市での感染の拡大はある程度封じ込められたといえるだろう。
一方、中国以外で考えると、感染者の合計は2918人。このうち死亡したのは43人(2月26日付の情報)。致死率は約1.5%。1月〜2月初旬までは、中国以外の地域での致死率は1%を下回っていたが、散発的にではあるもののある程度まとまった集団感染が確認されたことで、死亡例が多く報告されるようになってきた。
感染が拡大すると、たとえ致死率が低い感染症でも一定数の死者が出てしまう。1.5%と言われると非常に少ないように感じられるかもしれないが、1万人の感染者のうち、150人が死ぬことになる。
この数字はただの数ではなく人の命だ。もし軽い風邪のような症状が出た場合には、新型コロナウイルスである可能性を疑って、感染を広げないような行動を心がけたい。
特に日本では、たとえ軽い症状があっても「軽症だから大丈夫」「やらなければならない仕事がある」などと考えて、会社や学校に行ってしまう人も多い。気持ちは分かるが、「自分は大丈夫」でも、感染拡大の起点となり、知らないうちに多くの人を命の危険に晒してしまう可能性がある。
4.感染対策は何が適切?
Trevor Williams
新型コロナウイルスは、つばや咳による「飛沫感染」、あるいは手すりやドアノブ、電車のつり革など、さまざまな場所に付着したウイルスが手にうつり、その手で目や口、鼻などの粘膜に触れることで体内に侵入する「接触感染」によってうつる可能性がある。
そのため、手に付着したウイルスを除去するために手洗いを徹底したり、咳やくしゃみなどによって飛び散る飛沫が口や鼻に入らないようにしたりすることが重要だ。
特に、新型コロナウイルスの感染対策として実用的なのは「手洗い」。
手を洗う際には、手の甲、指の間、手首などをすみずみまで洗浄してほしい。ハンドソープや石鹸などを使った手洗いには、ウイルスを洗い落とす効果が期待されるため、20秒程度は時間をかけて手を洗うのが適切だといえるだろう。
また、消毒液(アルコール)には、ウイルスを殺す役割がある。消毒液を使った手の洗い方は、ハンドソープや石鹸を使った手洗いと同じだが、手のすみずみまで消毒液が行き渡るように、十分な量のアルコールを使って丁寧に手を洗うことを心がけてほしい。
手洗いの次に、「咳エチケット(マスク)」も対策として挙げられることが多い。ただし、マスクは、満員電車や病院など、感染リスクの高い場所へ行かざるを得ないときには、予防としての効果が期待されるという見方があるものの、予防というよりも他者への感染を防ぐ側面が強い。
なお、マスクの布(口が当たる部分)には、ウイルスが付着している可能性がある。マスクを外す時には、布の部分を触らないように気をつけたり、仮にマスクを触ったとしても、その後、必ず手洗いを心がけてほしい。
また、お湯を飲んだり、ビタミンを取ったりすることが新型コロナウイルスの感染予防になるといった「デマ」も多く見かけるようになってきた。FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)のWebページでは、国内・海外で出回っているデマ情報の検証が行われている。
情報源が明記されていない、信憑性に疑いのある情報を目にした際には、一度確認してみてほしい。
WHOのWebページでもデマ情報に対する警告がなされている。この画像は、「ごま油に新型コロナウイルスを殺す効果があるのでは?」というデマを否定するもの。
出典:World Health Organizatioon
5.ウイルス感染から発症までの潜伏期間は?
ウイルスに感染してから症状が出るまでの期間を「潜伏期間」という。
WHOや厚生労働省によると、新型コロナウイルスの潜伏期間は1〜14日(多くは5〜6日)と推定されている。
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」で2週間の隔離を終えた乗客が下船したのは、仮にウイルスに感染しない環境が確保された状態で2週間(14日間)症状がみられなければ、ウイルスに感染している疑いを払拭できるためだ。
一方、2月9日に報告された調査結果では、潜伏期間には0〜24日とかなり幅がある可能性が指摘されている。ただし、半数は感染から3日程度であり、潜伏期間が24日である例はかなり少ない。また、この調査結果自体、2月27日の段階でも専門家によるチェックを受けている最中であり、報告内容の一部が今後変わる可能性があることにも注意しておくべきだろう(一部変更されたとしても、潜伏期間の推定が変わらない場合もありうる)。
6.病院を受診する目安は?
厚生労働省では、新型コロナウイルスへの感染の疑いがある人に対して、まずは帰国者・接触者相談センターへの電話を呼びかけている。
出典:厚生労働省
新型コロナウイルスに限らず、今はインフルエンザや風邪などを引きやすい季節。厚生労働省は、咳や発熱などの症状がみられても、新型コロナウイルスへの感染の可能性が疑われる例に当てはまらないような人は、通常通り医療機関を受診しても良いとしている。
一方で、次のような症状がみられた場合、まずは各都道府県の「帰国者・接触者相談センター」への電話相談が推奨されている。
・ 風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く方(解熱剤を飲み続けなければならない人も同様)
・ 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある方
高齢者や糖尿病などの持病を持つ人は、健康な人にくらべてリスクが高いため、上の状態が2日程度続いた場合、同様に帰国者・接触者相談センターへ電話した上で、指定の病院を受診してほしい。また、厚生労働省は、妊婦についても早めの電話・受診を促している。
最後に……
2月26日には、政府の要請を受けて、イベントの延期・キャンセルが相次いだ。東京国立博物館などの文化施設も、2週間程度閉館する方針を示している。
政府専門家会議は、日本の現状は、散発的に小さな感染者の集団(クラスター)が確認されている状態だと指摘している。この感染者の集団を起点に、次々と別の集団へと感染が広がってしまうと、もはや感染者の爆発的な増加は防げなくなる。
イベントの中止にともない、経済的な打撃も大きい。しかし、中国では経済的な大打撃を受けいれてでも徹底的な封じ込めを強行したことで、なんとか新型コロナウイルスの収束に向けた流れができつつある。
日本でのこの先の1〜2週間は、これ以上の感染の広がりを食い止められるか否かの分水嶺だ。
感染拡大を抑えつつ、経済的な打撃を最小限に食い止めるために何ができるのか。すでに厚生労働省だけでは抱えきれない問題になっている現状で、これまで存在感の薄かった政府のリーダシップが問われている。
(文・三ツ村崇志)