「公園でテレワーク」「前代未聞」、新型コロナ一斉休校で親も教育現場もストレス倍増

教室

政府の一斉休校要請で、日本全国のほとんどの子どもたちが突然、3学期を終えることになりそうだ。

shutterstock

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、3月2日から全国の小中高校や特別支援学校が一斉に休校となる方向だが、突然の首相からの要請が、全国の共働き家庭や学校現場に衝撃を与えている。

残りの授業はどうなるのか。親が働いている間、子どもたちは誰と何をして過ごすのか。一切、代替案が用意されていない決定に「休校だけ決めて丸投げか……」。新型ウイルス感染への不安に加え、日常生活が根底から揺らぐストレスに親たちはさらされている。

企業活動に対しては「有給休暇を取りやすく」(首相)などと呼びかけるだけで、何か補償や措置がある訳でもない。多くの人が通常業務をこなしながら、生活の激変を受け止める体制を強いられる。

「公園で仕事かも」LINE、メッセンジャー紛糾

LINE

shutterstock

「え、嘘でしょ……」

2月27日木曜日午後6時30分過ぎ、保育園や学童のお迎えラッシュの時間帯。子どもを連れて慌ただしく保育園の玄関を出ようとする会社員女性(40代)のスマホに、ママ友からニュース速報がシェアされてきた。中身を見て一瞬、言葉を失った。

「3月2日から全国の学校が休校らしいです……」

思わずその場にいた、小学生の子どものいる保護者に声をかけるが、あまりに突然の事態にお互い困惑しかない。

「え、どういうこと。●●区(居住エリア)の学校で感染者が出たんですか。え?全国一斉?」(小学1年生の子どものいる会社員男性)

「仕事どうしよう」(小学2年生の娘がいる会社員女性)

授業はどうなる?給食もないのか。学童は?急転直下の出来事に、しばらく頭がついていかない。そうしている間にもどんどん、メッセージアプリやLINEのママ友グループや親たちのグループに衝撃が広がりだした。

3月の休校、殺人的なスケジュール

「強烈仕事はかどらないリモートになるんですけど。逆に会社に行きたい(涙)」(新型コロナの影響でリモートワーク中、埼玉県在住の40代会社員女性)

小学校低学年ではなおさら、子どもがずっと家で大人しくしているわけがない。

「子どもが絶対外に行きたい、ってなる。公園が校庭化する!公園が混むなら意味がない」(神奈川県内の30代会社員女性)

子どもを遊ばせつつ寒空の下でPC持って仕事する図が浮かんだよ……」(30代会社員女性)

小学生と高校受験生の中学生の子どもがいる都内在住の40代会社員女性は、殺人的なスケジュールに遠い目。

「3月2日から大量の仕事、夫が介護で帰省、3月2日は上の子の都立合格発表からの各種手続き、3月2日から小中ともに休校。私が3人必要なレベル!

たった1日の登校日を残して、いきなりの全国一斉休校は、新型コロナ予防策として一見、インパクトはあるだろう。

しかし、働く親や子どもたちの生活が一切、考慮されていない感が否めない。

シングルマザーで3人の小学生と保育園児を育てるママ友(30代)からは冷静なメッセージが来た。

「とにかく落ち着こう。うちはおばあちゃんがきてくれることになった」

Twitter上でも「とにかく子どもは自宅待機」の非現実さを指摘する声が相次いだ。

「意志決定の場に女性がいることの重要性を、すごく感じる出来事。

自分が育児の当事者でないから『とりあえず子どもは自宅待機』なんて判断ができるんだろうな。その子どもは誰が見るんだ。

子どもが家にいたって、親が満員電車に乗って帰ってきたら予防にもならんだろうし」

学童と保育園は「開く」で疑問噴出

m子ども

撮影:今村拓馬

そして同じ夜、今度は厚生労働省が「保育所、学童は原則開所」を表明。政府が小中高に臨時休校を要請する一方で、保育所、共働きやひとり親家庭の小学生を預かる学童保育は「引き続き開所」を通知するという。

これで「家で仕事ができない職業の親はどうするか」「小学生の行き場がない」問題はいったん回避されたかのように見えるが、むしろそうなると今度は、臨時休校が不可解だ。

30代の女性会社員はこう言う。

「学校が休みになっても子どもが集まる学童に行くなら同じことでは……。むしろ、学童はぎっしり子どもがいますよね

東京都を例にとってみても、都内には公設だけで1875カ所の学童保育があり、11万人以上の児童が在籍するが、定員はめいっぱい。2020年5月時点で3400人以上の待機児童までいる。

広い園庭や体育館のない場合も多く、教室以上に子どもが密集し、汗をかいて動き回っている。しかも下の子が保育園に行き、親が通勤しているのであれば、学校に通う子どもだけが休みになることに、どれほどの効果があるのか見えづらい。

しかも、子どもの感染例は非常に少なく、中国でも新型コロナウイルスに感染して症状が見られた4万4600人超のうち、19歳以下は2.2%(中国疾病管理予防センター)との調査も。そのうち死亡したのは1人だ。学校でクラスター(感染者の集団)が発生しないとは断言はできないものの、政府専門家会議のメンバーからも「一斉休校」には懐疑的な声が上がっている。

「私の知る限り前代未聞」

ABE

新型コロナウイルス感染拡大を受けた学校の休業要請は、安倍首相自らが発言した。

Reuters/Kim Kyung Hoon

学校現場も異例の措置に振り回された。

休校要請から一夜明けた2月28日朝の時点で、記者の子どもが通う東京都杉並区内の小学校は月曜からの授業について「朝から会議中ですがまだ未定」。杉並区教育委員会事務局に問い合わせても、

「ニュースで見て突然のことに驚いた。文部科学省からも東京都からも、何の通知も来ていない。臨時休校の方向だが、こんなことは異例」

と、困惑しきりだった。

結局、文科省の通知を受けて東京都から各自治体に臨時休校の通知が出たのは、28日午前10時過ぎ。

東京都の新型コロナウイルス感染症対策本部の担当者は、文科省の通知を受けて、

「感染リスクを抑えるためということで、都立校は休校を決めたが、私の知る限りでこんなことは前代未聞。市区町村からの問い合わせが止まない

と、打ち明けた。

新型ウイルスに上乗せされるストレス

さらに言うと、春休みを大幅に前倒す形で始まる臨時休校措置で、公設の学童保育の人手が確保できるかは、現時点で未知数。給食がなくなれば、食事の機会が減る子どもだっている。

新型コロナウイルスの感染拡大はこの1、2週間が正念場なのは理解できるが、今回の急転直下の休校要請は、感染症予防という意味では明確な根拠が示されておらず、「休校しない判断もありうる」(文科省)との発言も報じられる。徹底されていない上、社会的な混乱が大き過ぎないか。

長男が小学1年生、5歳、3歳が保育園に通う兄妹を育てる30代女性会社員は、首相の決断だという休校要請のニュースを受けてこう言う。

「今までぬるい対応しかしてこなかったのに、急にデキるリーダーみたいに振る舞われても……。休校以外にやるべきことあるだろうって思います」

一連の混乱は、新型コロナウイルスに端を発しているが、市民の生活と乖離した政府方針で、さらにストレスが上乗せされている感は否めない。

こんな声がTwitter上で10万件以上のいいねを集めている。

「コロナでパニックになるより、政府の施策でパニックになってる感が強い」

(文・滝川麻衣子)

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE
  • LinkedIn
  • クリップボードにコピー
  • ×
  • …

あわせて読みたい

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み