マッキンゼーの採用ディレクター(北米担当)、ケリー・ケイシーがBusiness Insiderの取材に応じた。
Courtesy of McKinsey
マッキンゼーに就職できる可能性はおよそ1%だ。2018年中に採用されたのは、応募者80万人中8000人だけだった。
リクルーターたちに取材してみると、応募者それぞれが素晴らしい経歴の持ち主ながら、そのなかでフルタイム社員として採用されるのは多様なソフトスキルを持った人だけだということがよくわかる。
94年(1926年創業)の歴史をもつコンサルティングファームの敷居は高い。ベイン・アンド・カンパニーやボストン・コンサルティング・グループのようなトップ企業と同様、MBA取得者が多い。世界最高のビジネススクールとして知られるINSEAD(インシアード)の卒業生の3割はこの3社に採用され、マッキンゼーについては全従業員の4割をMBA取得者が占める。
マッキンゼーに就職するMBA取得者の基本年収は16万5000ドル(約1815万円)。業績連動の賞与が4万1250ドル(約454万円)、サインボーナス(契約金)が3万ドル(約330万円)だ。
誰もが望むその職を得るためには、課題解決のマインドセット、アントレプレナーシップへの強い関心、ビジネスパートナーとの対話して関係を保つ対人能力を面接で見せつけなくてはならない。
Business Insiderは、マッキンゼー採用ディレクター(北米担当)のケリー・ケイシー、同グローバル採用ディレクター(マーケティング・コミュニケーション担当)に話を聞いた。
ふたりが教えてくれたのは、応募者が最もおかしやすいミスのひとつは、ケース面接の対策に力を入れすぎて、個人面接を疎かにしてしまうことだ。他の応募者との差別化を図るには、個人面接で自分の対人スキルをアピールする必要がある。
課題解決能力だけでなく「共感力」も
米大統領選挙の民主党候補者、ピート・ブティジェッジもマッキンゼー出身。米ハーバード大学、英オックスフォード大学でそれぞれ学士号を取得。
Win McNamee/Getty Images
コンサルティングファームへの就職を希望するなら、自分で考え、課題を解決する能力を面接で示さなくてはならない。それはケース面接でアピールすることができる。しかし、あらゆるケース対応に熟達していることと、マッキンゼーで働くのにふさわしい人材であることは、必ずしも一致しない。
「課題解決能力が高く、分析的思考のできる人材はもちろん活躍の余地がある。でも、それだけではやっていけません。コンサルタントとして働くということは、クライアントやマッキンゼー社内の異なるチームと共同作業をすることでもあるので」
北米担当のケイシーは、コンサルとして成功するために重要な「コラボレーション、チームワーク、共感、リーダーシップといった能力」にもっと目を向けてほしいと強調する。
良き「ストーリーテラー」たれ
コンサルタントは本質的にストーリーテラーでもある。そして、良いストーリーテラーはクライアントとの折衝を成功へと導く。
カリフォルニア大学バークレー校ハースビジネススクールのディレクター(戦略的イニシアチブ担当)、モーガン・バーンスタインは学生たちのコミュニケーションスキルを改善するため、ストーリーテリングに関する書籍を教材に使っていると教えてくれた。
マッキンゼーのコンサルタントは、クライアントとのやり取りやプレゼンにほとんどの時間を費やす。仕事の核となるのは、クライアントを対話の場につなぎとめ、効率的なコミュニケーションを促すことだとバーンスタインは言う。
「一番良い面接は、それ自体が対話として成立するもの。個人面接で『自分自身』をしっかり語る練習をしてきてほしい。友人と練習するのもいいですね。練習を重ねれば重ねるほど、自分の経験を違和感なく伝えられるようになるはずです」
アントレプレナーとしてのスキルを示す
学校でも、職場でも、プロジェクトを完遂したり何かを成し遂げたりして称賛を受けることがあるが、誰もが「私が」という言葉を使うのを避けるものだ。けれども、面接のときはそれではまずい。自分が成し遂げたこと、そのストーリーを語らなくてはいけない。
チームを率いたとか、アントレプレナーのように自分のスキルを活かしてゼロから何かをつくり上げたとか、そういう具体例を示すのがいい、とケイシーは言う。
経営コンサルタントの仕事にはクリエイティブな思考が必須だ。既存の枠組みにとらわれずにアイデアを生み出す能力を示すことは、コンサルティングファームに職を得ようとする人にとってプラスになるだろう。
「面接で良い評価を得て、マッキンゼーで働くための方法はたったひとつしかないわけではありません。履歴書や職務経歴書に書いていない、それ以上のあなたの姿を見せられたら、それが一番良い面接なのです」
※この記事は2020年3月3日初出です。
(翻訳・編集:川村力)