企業価値1300億円。ドローンで血液や医薬品輸送するルワンダ・スタートアップの実力

1

Zipline社のドローンは、カタパルトから飛び立つ。

撮影:小島寛明

東アフリカのルワンダに、世界から注目を集めるスタートアップ企業がある。ドローンで、血液や医薬品を空輸するZipline(ジップライン)社だ。

2016年にアメリカからルワンダに進出した同社は、自律飛行するドローンの発着拠点と医療機関を結び、医薬品を届けている。

米メディアCNBCによれば、Zipline社はこれまでに200億円を超える資金を調達し、その企業価値は1300億円にのぼると試算されている。

神戸市が主催する起業体験プログラム「KOBE STARTUP AFRICA」で、2020年2月25日、ルワンダにある同社の拠点を訪れた。

1日30件ほどの血液や医薬品の発注

2

ベルが鳴ると、医薬品倉庫の中から、血液や医薬品が入ったパッケージが出てくる。

聞き慣れたベルの音が聞こえてきた。

近づいてみると、よくホテルのフロントなどにあるベルと紙製の赤い箱があった。

ルワンダの首都キガリから車で1時間ほど。首都と地方都市を結ぶ幹線道路から、少し外れたところに、Zipline社の「飛行場」がある。

「最も長いフライト時間は、往復で90分ほど。1日に平均で30件ほどの輸送のオーダーが入る」

神戸市のプログラムに参加した14人を前に、同社でフライト・オペレーターを務めるプロスパー・ウルヴグンディさん(36)が説明した。

ベルは、ルワンダ各地の医療機関から血液や医薬品の空輸の要請があったことを知らせる合図だ。

3

医薬品や血液が保管される倉庫の中でも、Ziplineのスタッフが働いている。

ドローン整備場の一角にある倉庫の内部には、医薬品が並ぶ棚や血液のパッケージが保管されている冷蔵庫があり、保健の専門家らが医療機関からの発注を受ける。空輸の準備ができた荷物は赤い箱に納められ、ベルの合図とともに、倉庫の窓の外に箱が置かれる。

倉庫の窓に赤い箱が置かれると、ドローンの整備場のスタッフは離陸の準備に入る。

4

ドローンで空輸される医薬品の棚。

5

医薬品が納められた赤い箱をドローンの機体に格納するZiplineのスタッフ。

パラシュート付きの箱で医薬品投下

6

紙製のパラシュートを手作業でつくるZiplineのスタッフたち。

空輸の準備が終わると、機体に赤い箱と充電済みの電池を入れ、翼を設置。フライト・オペレーターは、キガリ国際空港の管制官と無線で連絡を取り、離陸の許可を得る。

ドローンという言葉を聞くと、ヘリコプターのような回転翼が頭に浮かぶが、Zipline社のドローンは旅客機のような固定翼だ。同社によれば、最高で時速100キロで飛ぶ。機体の一部には発泡スチロールも使われ、ぎりぎりまで軽量化とコスト削減が図られている。

離陸したドローンは、あらかじめプログラムされた経路を飛び、医療機関の上空で赤い箱を投下する。

赤い箱にはパラシュートがついていて、目的地に到着したドローンは自動的に機体の一部が開き、パラシュートを投下する。整備場の一角にあるテーブルでは、3人の女性が、ハサミで紙を切り抜き、パラシュートを手作りしていた。

空輸を終えると、自動的にUターンして発着拠点に帰ってくる。着陸時には、空中に張られた1本のワイヤーにドローンを引っ掛ける。

世界的に競争が激化するドローン関連のビジネスで、Zipline社の優位性は、いち早くルワンダで事業化に成功し、同国で独占的な地位を得た点にあるとみられている。

血液や医薬品の空輸となると、医療、航空分野のさまざまな規制が絡む。Zipline社はルワンダ政府からの事業許可を受け、2016年に空輸を開始。 同国の保健省と契約し、保健省が医薬品の空輸の運賃を支払っているという。

「緊急空輸」にも対応

ドローン

カタパルトから離陸するドローン。空輸の準備が終わると、機体に赤い箱と充電済みの電池を入れ、翼を設置。フライト・オペレーターは、キガリ国際空港の管制官と無線で連絡を取り、離陸の許可を得る。

ルワンダを含む途上国では、血液や医薬品の輸送網に課題を抱える国が多い。

道路の整備が遅れた地域では、トラックでまとまった量の血液を運び、医療機関で保管しておくと、有効期限内に使い切れないという問題が生じやすい。

こうした課題に対して、解決策として登場したのがZipline社のドローン輸送だ。首都に近い施設に医薬品や血液をストックしておき、必要な時に、地方都市の医療機関に空輸する。

高性能な冷蔵施設を備えた倉庫に保管しておけば、血液やワクチンの品質も保持しやすい。ここではあらかじめ予定された配送だけでなく、「緊急空輸」にも対応している。

ドローン

ドローンはほぼ無音で発着拠点に帰ってくる。人間が大きな音を感じるのは、機体が着陸用の施設に入るときだけ。着陸時はワイヤーに引っかける仕組みだ。

一方でZipline社によれば、キガリ近郊の拠点では、3〜4カ月に1回程度の頻度で、ドローンの事故が起こるという。フライトで蓄積したデータや経験から、ドローンの機体を含むシステム全体の改善を進めている。

Zipline社はアメリカで設立されたが、現在はサブサハラ・アフリカ地域が主な事業地。

同社は、こうした取り組みを世界各地に広げていく考えだ。ガーナでもドローンによる空輸を始めている。

11

施設内には「ドローンが通ります」との注意書きがある。

ルワンダは、Zipline社のような先進的な取り組みが進められている一方で、農業や教育など多くの分野で、解決の困難な課題を抱えている。

神戸市のプロジェクトには、高校生や大学生からさまざまな職業の社会人も参加。ルワンダの先進的な取り組みと社会課題を学び、課題の解決とビジネスとしての実現可能性を兼ね備えたアイデアを検討する。

この取り組みは今回で2度目。神戸市新産業課の多名部重則課長は「ルワンダや神戸で起業する人が出てくるよう、全面的に支援していきたい」と話す。

(写真・文、小島寛明)

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE
  • LinkedIn
  • クリップボードにコピー
  • ×
  • …

あわせて読みたい

新着記事

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み