“新型ウイルスショック”でスマホ関連メーカーに明暗。「最悪の状態は脱しつつあるが…」

スマートフォンのアクセサリーの陳列

スマートフォンのアクセサリーの陳列(写真はイメージです)。

Business Insider Japan

世界中に広がりつつある新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を大きく受けているのが、中国の工場でさまざまな製品を生産している、国内メーカーだ。

大手住設メーカーTOTOは2月18日付けで、部品供給の遅延により、ウォシュレットなど一部製品の生産遅れの可能性があると発表している。

経済産業省も新型コロナウイルスで影響を受ける事業者向けの5000億円規模の資金繰り支援などを打ち出すなど、「新型コロナウイルス倒産」対策に乗り出している。

そんななか、危機感を募らせているのが、スマートフォン関連のケースや周辺機器などを手掛ける中小メーカーだ。新型コロナウイルスの影響で中国工場での生産がストップしてしまい、予定通り製品を供給できなくなり、欠品が生じるケースが出てきた。企業によっては、大きな影響を受けていると明かす。

「中国の工場が止まり、2月の売り上げがなくなった」

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ビデオ通話でのテレカン取材に答えるiPhoneアクセサリーメーカー、トリニティの星川哲視代表。

影響の大きさを自社ブログで切実に訴えたのが、iPhoneなどアップル製品向けの周辺機器を多く手掛けるトリニティの代表・星川哲視さん。

星川さんが2月15日に投稿したブログの内容によると、新型コロナウイルスの影響によって、春節の休みが明けても中国政府による工場再開の許可が下りておらず、製品の出荷が止まったことで、2月分の売り上げがなくなってしまうだろうと、赤裸々に訴えた。

2月27日、いくぶん状況に変化が出てきたという星川さんがインタビュー取材に応じた。

同社は中国の深センにある工場で多くの製品を生産している。通常のスケジュールであれば、春節の休み明けから3、4日すると従業員が戻り、工場での生産を開始して2~3週間で製品を出荷してもらうことになっていた。

「2020年は新型コロナの影響で春節の休み自体が延び、2月の2週目には工場再開には政府の許可が必要だという話が出てきた。

今も工場に連絡すると、オフィスが開いたばかりであるとか、150人の従業員のうち30人が出社したとか、そういう状況だ」(星川さん)

星川さんは、自社が委託する工場の生産体制に危機感を募らせた。

Trinityのブログ記事「コロナウイルス(COVID-19)による中国の状況アップデート(2020.3.1)」

Trinityのブログ記事「コロナウイルス(COVID-19)による中国の状況アップデート(2020.3.1)」。

出典:Trinityブログより

実際欠品が発生し始めている製品もあるという。

トリニティは元々「自社の在庫を最小限にし、必要に応じて生産した製品を中国の工場から出荷してもらう“オンデマンド体制”を採っていた」(星川さん)。

このビジネスモデルは、夜に出荷すると、深センから香港経由で翌日には製品が届くという、「スピーディーな物流網」が前提にある。平時にはコスト効率の良い仕組みだが、それが新型コロナの影響を大きくしてしまった部分がある、と星川さんは認める。

「2月下旬に中国に残っていた製品を出荷してもらうことはできたものの、(2月はほぼ)出荷が止まってしまっているのが実情」(星川さん)

と、ビジネスに大きな影響が出ていると回答した。また、ほかのスマートフォンアクセサリー業界の関係者への取材でも、同様の状況で2月の売り上げが立たないと漏らすメーカーがあるという。

なお、取材後の3月1日に星川さんが更新したトリニティの公式ブログでは、3月2日以降は稼働率が戻るのではないか、と期待するコメントを投稿している。

「3月に(2月の分まで)まとめて出荷できれば、3~4月くらいで売り上げをリカバリーしていける。3月初旬から中旬にかけて、どれくらい工場の生産体制が戻るかが1つの勝負だ」(星川さん)

「最悪の状態は脱しつつある」とメーカー関係者

深センの工場の作業風景

深センの工場の作業風景(写真はイメージです)。

Shutterstock

一方で、深センの工場事情に詳しいメーカー関係者のAさんは、最悪の時期は脱し始めた、と語る。

2月前半から中旬頃までは、本当にまずい状況だった。それが2月末になって、一気に改善が進んできている」(メーカー関係者Aさん)

Aさんによると「春節明け頃からは工場の生産見込みが立たない状況だった」。これは星川さんと同様の見方だ。その後、中国国内での新型コロナウイルスの影響がピークを過ぎはじめたことで、帰省していた従業員が徐々に地方から深センへと戻ってきているという。Aさんが複数の取引先工場に聞き込みしたところでは、2月末頃には通常の3割〜5割程度の生産能力が戻ってきている、という回答を得ているという。

影響の範囲が「メーカーによって違う」理由

スマートフォンケース

写真はイメージです。

Business Insider Japan

実際、国内のスマホ機器メーカーはどの程度、中国の工場停止の影響を受けているのだろうか?

スマートフォンなどの周辺機器を手掛けるメーカーに確認したところ、

「動向が明確に見えていない中、中国の工場が稼働しておらず製品が入ってこないのが現状」(エレコム)

「中国での混乱が続いていて連絡が取れない会社などがあり、一部商品は次回分の製品の納品が難しくなっている」(アイ・オー・データ機器)

など、大手の中でも、影響を受けている企業は少なくないようだ。中には新製品の発売を延期することになった、と明かす企業も出てきている。

一方で、メーカー側の在庫体制によっては、直近の影響は少ないとする企業もあった。

「元々在庫を確保している体質で、2〜3月の在庫は確保している」(バッファロー)

ただし、この担当者も、

「4月以降、影響が長期化した場合に備えて情報収集を進めている」(同)

さらに混乱が長引けば、国内の在庫切れの可能性も否定できないとする。

携帯電話会社のショップや端末メーカーへの影響

大手キャリア

撮影:小林優多郎

周辺機器やアクセサリーメーカーから仕入れた製品を販売している、携帯電話会社や端末メーカーも、出荷遅延などに対応した体制を取り始めている。

携帯電話会社ショップ向けアクセサリーへの影響も、通信キャリアによってさまざまだ。

NTTドコモは、既に出始めている納品への影響への対応を進めている。

「新型コロナウイルスの影響が見え始めている。今まではメーカーから指定の納入数に達した時点で入荷を受け付けていたが、現在はそれに達しない場合でも入荷を受け付ける。人気端末や新商品向けのものを優先して供給してもらうなどして、影響が出ないようにしている」(NTTドコモ広報)

KDDIは、現時点では大きな影響はないが、「注視」しているとする。

「中国に部品などがあるため多少影響はあるかもしれないが、具体的に足下で影響が出ている訳ではない。ただ、日々動向が変化しているので注視しているところ」(KDDI広報)

なお、ソフトバンク系列でスマートフォンアクセサリーを取り扱うSB C&Sは「コメントは差し控える」とした。

またシャープは、外部の企業が開発した同社製スマートフォン向けアクセサリーを「DESIGN FOR AQUOS」として認定しているが、そのサードパーティーへの影響に関して、

「これだけ大きな状況なので今後影響が出ると考えられる。影響を最小限にできるよう情報を精査中」(シャープ広報)

と、KDDIに近いコメントで回答した。

ある大手メーカー関係者は「(新型コロナ関連の質問には一律回答を控えるという)一種の戒厳令のようなムードに、社内がなってしまっている」と、漏らした。

前出の星川さんは、この状況を次のようにコメントする。

「大手企業の場合、株価などに影響する懸念もあるのでは。中国の状況はかなり流動的で、メーカーごとの工場との付き合い方による部分も大きい。例えば、(工場と直接取引するのではなく)中間に商社を挟んでいるケースなど、そもそも現地工場の情報を持っていないという場合もあるのではないか」(星川さん)

生産体制が完全に回復するのは3月いっぱいか?

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深センの工場の風景(写真はイメージです)。

Shutterstock

日本国内での混乱はしばらく続きそうだが、中国の工場稼働が好転しつつあることから、現地の工場事情を知るメーカー関係者Bさんは、こう話す。

「この1週間ほどの動きを見るなかで、3月中には相当まともな状態に戻りそうだ。あと2週間くらいで100%の生産が回復する工場も出てくるのでは」

「最悪の状況を脱しつつある」から「注視している」までコメントに統一性がないところは、まさにいまの混沌とした状況を反映している。

ただし、いま「先がまったく見えない」という人たちはほぼいない。多くのメーカー関係者が、「2月上旬は、先がまったく見えなかった」とコメントしたが、今もそうだと言う企業は減っている。

この状況は、「欠品が続く状況をいち早く抜け出したい」という業界の希望的観測ではなく、着実に元の生産状況に戻り始めている、ということではないだろうか。

(文・佐野正弘)


佐野正弘:デジタルコンテンツ・エンジニアを経て、現在では携帯電話・モバイルに関する執筆を中心に活動中。

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