妻とともに中国を訪れた後、アメリカのインディアナ州ハイランドにある自宅で自主隔離をしていたケン・ズレックさん(63)。
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新型コロナウイルスの感染が拡大する中、公衆衛生を守るために各地で感染者や感染者と接触した人が隔離されている。
感染予防のため、会社に通勤するのを止めて在宅勤務に切り替えたり、他人との接触機会をできるだけ減らそうとしている人たちもいる。
こうした取り組みは命を救うだろう。だが、心身両面に負の影響を及ぼす可能性もある。
隔離されることでわたしたちのからだと脳に何が起こるか、どうやって対処すればいいか、見ていこう。
一定期間、社会的隔離を経験すると「不快な状態」になりやすい
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人間は人付き合いが好きなだけでなく、人付き合いを必要としている。
2015年のある研究によると、社会的つながりの弱い人は社会的つながりの強い人に比べて、早期死亡リスクが50%高いという。
だからこそ、一時的とはいえ、社会的なつながりを断つと気分が良くなくなる。人付き合いをするよう、からだがあなたに伝えようとしているのだ。そうすることで、長生きできる。
研究の筆頭著者でブリガム・ヤング大学の心理学の教授でもあるジュリアン・ホルトランスタッド(Julianne Holt-Lunstad)氏は、「空腹感がわたしたちに食べ物を探させるように、孤独という不快な状態がわたしたちに社会的つながりを求めさせるのです」とINSIDERに語った。
もちろん、対面の接触を減らすまたはなくすことが求められるパンデミックのような状況では、より危険な、差し迫った影響を回避するために、こうした不快感にも耐える必要があると、ホルトランスタッド氏は言う。
からだを動かさないと、心にも同じくらい悪影響が及ぶことも
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理由は何であれ、身体的な活動量が減ると、心にも影響が及ぶ。
極端な例だが、怪我をしたアスリートを想像してもらいたい。怪我をしたアスリートは「感情の大きな揺れ動き」を経験することがある。これは主に、そうした感情を寄せ付けなかった、エクササイズや身体的な活動を通じた対処メカニズムが機能しなくなったからだ。
これは悲しみ、イライラ、ストレス、怒りなど、さまざまな不快な感情として現れる。
身体的な活動を減らすまたは一切なくすと、筋肉が衰える
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「使うなければダメになる」というのは本当だ。
USニューズ&ワールド・レポートによると、医学ジャーナル『Journal of Applied Physiology』に掲載されたある研究は、2週間何も活動をしないと、心臓血管の健康や筋肉量に負の影響を与え始めかねないとしているという。
また、別の研究では、4カ月間ワークアウトをしていた肥満の成人が1カ月休むと、改善された肺活量やインスリン感受性、コレステロールのほとんどが無駄になってしまうという。
隔離によって、長期的に精神的ダメージを受けることも
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医学雑誌『ランセット』に2月下旬に掲載された研究は、感染症流行中の隔離がもたらす心理的影響に関するこれまでの24の研究をもとに、隔離の経験は心的外傷後ストレス症状やうつ、精神錯乱、怒り、恐れ、薬物乱用を招く可能性があるとしている。
中でも、メンタルヘルスの問題を抱えたことがある、または抱えている人は影響を受けやすいという。
影響がどの程度かは、それぞれが置かれた状況、性格などによる
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同じ隔離でも、新型コロナウイルスの症状が出て、ベッドで隔離されていた人は恐らく、症状もなくパーティーをしたいくらい元気だった人に比べて、大きな影響を受けるだろう。
社会的隔離や人付き合いの減少にどのくらい影響を受けるかも、それぞれの性格によって異なる。
「あなたがもし、社会的接触が生きがいのものすごく外向的な人なら」隔離の経験は「ソファに座って読書をしているのが落ち着く内向的な人より」響くだろうと心理学者のシェリー・ベントン(Sherry Benton)博士はINSIDERに語った。
隔離に備えて、自宅でのワークアウトプランを考えておこう
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必要なのは、自分のからだを使って腕立て伏せ、スクワット、ランジ、クランチ、バーピーをすることだ。イスを使ってもいい。
フォームローラーやマット、エクササイズバンドがあれば、もっといろいろなエクササイズを取り入れることも可能だ。自宅でできることを考えてみよう。
元気でいるために、健康的で食べやすい食料をストックしておこう
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栄養士で国際食品情報協議会の栄養コミュニケーションの責任者でもあるアリッサ・パイク(Alyssa Pike)氏は、2週間の隔離期間中、ずっとスープとクラッカーを食べ続ける必要はないと、INSIDERに語っている。
それよりも、缶詰や冷凍野菜、米やパスタといった穀物をストックしておいて、あまり手間はかからないが、栄養豊富なレシピを試す方がいいという。
缶切りをお忘れなく。
隔離や社会的接触の減少に心身ともに適応するため、他者とバーチャルでつながろう
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今日、隔離されるのは、10年前より社会的負担は軽い。
FaceTimeやSkypeといったツールが「ウイルスへの感染リスクに自分たちの身をさらすことなしに人とのつながりを感じ、結びつきを維持することを可能にし、こうした短期的な不快な状態を緩和する助けになるかもしれない」と、ホルトランスタッド氏は言う。
同氏は、積極的に他者と連絡を取り、彼らがどうしているか尋ねることを勧めている。そうすることで、自分だけでなく、相手のメンタルヘルスを向上させられるだろうという。サポートがあるという認識が得られるだけでもストレス軽減になると、研究は示している。
ホルトランスタッド氏は、外の世界との接触が減ることのメリット —— 普段よりゆったりと時間を過ごしたり、一番身近な人たちと過ごすことができる —— もあると話している。
「さまざまな方法であなたへの愛やサポートを示してくれる人がいると、こうした比較的自由の制限された状態も我慢しやすくなる」
[原文:What happens to your body and brain when you're quarantined, and how to cope]
(翻訳、編集:山口佳美)