「新型コロナウイルスで死ぬのも、仕事を失うのも怖い」大手小売店で働く人々から上がる不安の声

ターゲットの売り場

AP/John Minchillo

  • 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、アメリカでは消費者による買いだめが相次いでいて、小売店で働く人々は商品を切らしてはならないという大きなプレッシャーにさらされている。小売大手ウォルマート、ターゲット、CVSの従業員20人へのインタビューから分かった。
  • 従業員の出勤に関する厳しい方針や、有給の病気休暇が限られているまたはそもそもないことから、従業員たちは病気になって、仕事を失うことを恐れている。
  • 「ターゲットでは、中国で働くチームの全員が在宅勤務できるようにすることをはじめ、わたしたちのチームを優先している」と、ターゲットのCEOブライアン・コーネル(Brian Cornell)氏は3月上旬、決算発表で述べた。コーネル氏は「わたしたちはさらに、かなりの時間を使って、世界中のチームのメンバー全員の健康と安全を維持するために最良の支援方法を検討している」と話した。
  • ウォルマートの広報担当者は、状況を注意深く監視し、必要に応じて方針を調整していくと話している。
  • 「従業員の安全と健康を守るための計画を立てるとともに、わたしたちは新型コロナウイルス関連のリスク環境を積極的に監視している」とCVSの広報担当者はBusiness Insiderに述べた。

新型コロナウイルスの脅威が高まる中、ミシガン州にあるターゲットの店舗では、電化製品売り場の従業員ロバート・オバナーさんがなじみの顧客にハグと握手であいさつするのを止めている。オバナーさんは自分が病気になったら何が起こるのか心配し始めている。

「休むと言ったら、給料が出ません」

オバナーさんはBusiness Insiderの取材に応えた。

「休めるようなお金がありません」

オレゴン州では、ウォルマートで商品の補充の仕事をしているロバート・デービスさんが仕事を通じてウイルスに感染する可能性を心配している。

「わたしたちは毎週、何百という人と接触します」

デービスさんは仕事中に何百という商品も取り扱っていると言い、自分が死んだら家族はどうなるのか不安だと話した。

「わたしの肩にかかっているんです」

感染者数が増加する中、アメリカでは一部消費者が店に殺到し、マスクや手の除菌用ジェル、日用品などを買い占めている。

一方で、パニックになった客のために、小売店では従業員たちが陳列棚を補充しようと必死に働いている。同時に、多くの従業員が職場での感染リスクや、病欠することで受けるかもしれない罰則に対する不安と戦っていることが、アメリカ13の州の20人の小売店従業員へのインタビューから分かった。従業員はそれぞれターゲット、ウォルマート、CVSで働いている。

一部の従業員は匿名を条件に取材に応じた。

体調不良でも休むと言えず、働いている人も

ウォルマートでは、従業員の休暇はポイントシステムで管理されている。6カ月で5ポイントが貯まり、1ポイントで1日休めるという。

ウォルマートは従業員に対し、体調が悪い時は家にとどまるよう指示しているが、8人の従業員がこのシステムの下で体調不良で仕事を休むのは怖いと話している。

「アソシエイト・レベルでは、わたしたちのほとんどに、これに対応できるような休暇の余裕はありません」と、オレゴン州のウォルマートで働く匿名希望のある女性従業員は話した。

「出勤に関する方針はとても厳しいので、感染したら仕事を失うことになるでしょう」

その結果、多くの従業員が体調不良でも仕事に来ているという。

「ものすごく調子が悪くても仕事に来る人がいて、本当に倒れているんです」

この女性従業員は、ここ数週間、毎日マスクをして働いていると話した。

ミズーリ州にあるウォルマートの総菜売り場で働いているある従業員は、体調が悪くても職場に来たことがあると認めた。

「病気になってもわたしが働くのは、家にとどまって、給料を受け取らない余裕がないからです」と匿名希望のこの従業員は話した。

「熱が出たら、違う部署に送られるでしょう」

これは小売店で働く多くの従業員が直面する問題だ。米労働省の統計によると、有給の病気休暇の制度があるのは、収入が上位25%の労働者では90%だが、収入が下位25%の労働者では50%以下だ。

ウォルマートの広報担当者は、状況を注意深く監視し、必要に応じて方針を調整していくと話している。

「極端な出来事や自然災害が起きた時は、わたしたちはコミュニティーで何が起きているかを注意深く監視し、適切にオペレーションの調整や、出勤の免除といった方針の見直しを行う —— 新型コロナウイルスも例外ではない」

体調が悪ければ、従業員は職場に来るべきではないと担当者は言う。

「アソシエイトの体調が良くないなら、わたしたちは家にとどまり、健康を取り戻してもらいたいし、それをサポートするための(有給休暇の)オプションもある」とした上で、「新型コロナウイルスに感染したかもしれないと思ったら、アソシエイトは職場に来るべきではない。アソシエイトには自分の健康に集中してもらいたい —— 仕事の心配をせずに」と話した。

ウォルマートでは、フルタイムでもパートタイムでも、従業員には入社初日から有給休暇が提供されていると、担当者は説明した。

「加えて、必要な時には同僚とシフトを交換する融通の利くスケジューリング・オプションも提供している」と述べた。

買いだめに走る消費者、需要に応えるのに忙しい従業員

陳列棚

Jeff Greenberg / Contributor / Getty Images

小売店で働く人々は、普段より忙しい職場のプレッシャーにもさらされている。新型コロナウイルスのさらなる感染拡大に備えて、消費者が生活必需品を買いだめしているからだ。

ロードアイランド州にあるCVSの従業員は、店の状態を「軽度なパニック」だと言い、インフルエンザの予防接種を受けようと人々が「押し寄せている」と話した。

CVSの広報担当者も、同社の薬局とクリニックが例年の同時期より多くのインフルエンザの予防接種を行っていると認めた。

「従業員の安全と健康を守るための計画を立てるとともに、わたしたちは新型コロナウイルス関連のリスク環境を積極的に監視している」という。

シアトル近郊にあるターゲットの従業員は、店側が高まる特定の商品の需要に応えるべく努力する中、一部の商品がないことに腹を立てる客もいると話す。

「忙しい小売店で働くのはストレスが溜まりますが、このパニックがさらに状況を悪化させています」

テキサス州オースティンにあるターゲットの従業員は、1日中、手の除菌用ジェルについて聞かれ続けることにイライラしていると語った。

「おかしなことになってきた」

従業員は、職場で感染するのではないかと不安に

ターゲットは3月3日朝(現地時間)、アメリカ各地の店舗リーダーにEメールを送り、新型コロナウイルスの感染拡大によって恐怖が高まっているが、店のあり方は何ら変えないよう指示した。その結果、管理職以下の従業員たちは混乱し、手探り状態だという。

シアトル近郊にあるターゲットの従業員は、ウイルス対策について上司から何のコミュニケーションもないと言い、感染が相次いでいるワシントン州で働くことに不安を感じていると話した。

「これだけ多くの人に囲まれているのは怖いです。小さな子ども連れは特に。咳をしたり、鼻をすすっている子どもも多いですし、子どもはどこにでも触りますから」

「そして、店で誰か1人が病気になると、スタッフ全員がかかることもよくあります」

Business Insiderがターゲットにコメントを求めると、同社はCEOブライアン・コーネル氏の3月3日の決算報告でのコメントを引用、回答してきた。

コーネル氏は「ターゲットでは、中国で働くチームの全員が在宅勤務できるようにすることをはじめ、わたしたちのチームを優先している」とした上で、「わたしたちはさらに、かなりの時間を使って、世界中のチームのメンバー全員の健康と安全を維持するために最良の支援方法を検討している」と述べている。

匿名希望のアラバマ州にあるウォルマートの従業員は、店のトイレ清掃やゴミ処理を担当しているため、職場でウイルスに感染するのではないかと懸念しているという。店が閉店せざるを得なくなった場合、給料が出るのかどうかも不安だと話している。

「感染している誰かが店に来て、店が閉店になるのが怖いです。今、1週間分の給料を失うわけにはいかないんです」

小売店で働く複数の人々が、会社側に手袋とマスク —— 米疾病予防管理センター(CDC)は、健康な一般人にマスクの着用を勧めてはいないが —— を提供してもらいたいと考えている。

アラバマ州フローレンスにあるウォルマートで働くリサ・ベイカーさんは現在、がん関連の手術のために医療休暇を取得中だが、免疫力が大幅に低下する可能性もある化学療法の後、職場に戻るのが不安だと語った。

「ウォルマートで働いていた時は、常に大勢の人々に囲まれていました。職場に戻ったら、どう自分を守ればいいんでしょう? 」

ミシガン州にあるウォルマートの女性従業員は、配送トラックから荷物を受け取っているため、1日中さまざまな大量の箱に触ることでウイルスに感染するのが怖いという。

「わたしはどうすればいいんでしょう? 怖いです。仕事を失うのも怖いし、新型コロナウイルスで死ぬのも怖いんです。助けてください。お願いです」

[原文:'I'm scared to lose my job and I'm scared to die': Retail employees describe working conditions as coronavirus panic heightens nationwide

(翻訳、編集:山口佳美)

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