「胸が張り裂けそう」エリザベス・ウォーレンの敗北に、女性たちが落胆、激しい怒りを感じる理由【米大統領選】

エリザベス・ウォーレン

Jonathan Bachman/Reuters

  • 3月5日(現地時間)、アメリカではエリザベス・ウォーレン氏が大統領を目指す戦いを終わらせた。これで2020年の大統領選から、女性有力候補が全て消えた。
  • 民主党候補指名を争う戦いは、史上まれに見る多様性とともに始まったが、今や事実上、バーモント州選出の上院議員バーニー・サンダース氏と元副大統領のジョー・バイデン氏の2人の男性に絞られた。
  • ウォーレン氏の撤退は、少なくとも今後4年間は女性大統領の誕生する可能性がなくなったということだ。
  • 多くの人々が、女性候補としてウォーレン氏が直面した"壁"を自分の人生と重ね合わせて見ていた。
  • ウォーレン氏を支持していた複数の女性たちは、同氏の撤退のニュースを聞いて「ひどく落ち込んだ」とか「激しい怒りを感じた」と話している。
  • ある女性は「彼女は素晴らしい大統領になっただろう。彼女にチャンスが与えられなかったのは、彼女が女性だからということは明白だ」とINSIDERに語った。

エリザベス・ウォーレン氏は3月5日、大統領を目指す戦いを終わらせた。これで少なくとも今後4年間は、アメリカに女性大統領の誕生する可能性がなくなった。

史上まれに見る多様な候補者が乱立した民主党候補指名を争う戦いは候補者が絞られ続け、結局また2人の白人男性 —— 上院議員のバーニー・サンダース氏と元副大統領のジョー・バイデン氏 —— のどちらかを選ぶものになりそうだ。

「一番つらいことの1つは…… 全ての少女たちがもう4年待たなければならないということです」とウォーレン氏は選挙戦からの撤退後、ボストンで報道陣を前に語った

ウォーレン氏の支持者は、同氏の撤退を予期していた。14の州で予備選挙が行われた大きな山場「スーパーチューズデー」 で、ウォーレン氏はどの州でも3位より上に食い込めず、最後の女性有力候補が選挙戦から撤退するのは時間の問題だった。ツイッターでは3月3日の夜から女性支持者の失望の声が聞かれ始め、5日に撤退が正式に発表されると、大騒ぎになった

ツイッターでは支持者らが「#StayInLiz」とウォーレン氏に懇願。2019年7月に撮影されたウォーレン氏が他の女性候補(上院議員のカーステン・ギリブランド氏、同カマラ・ハリス氏、同エイミー・クロブチャー氏、下院議員のトゥルシー・ギャバード氏 )と笑顔で写っている雑誌『ヴォーグ』の写真をシェアした。ギャバード氏を除く全員がすでに選挙戦から退いている。

この写真を改めて見ていたら悲しくなった。賢くて、戦略家で、価値ある複数の女性たちがこの選挙戦にいたのに、わたしたちに残されたのは、実行可能な計画を持たない70代の白人男性2人。一体どうなっているの?!

ウォーレン氏を支持していた女性たちは、同氏の撤退のニュースを聞いて「ひどく落ち込んだ」「胸が張り裂けそう」「打ちのめされた」とINSIDERに語っている。

だが、怒りもある。

ウォーレン氏を支持してきた女性たちにとって、その敗北はある種の"地獄"を象徴している。自分たちが最も資格があり、準備ができていて、情熱があり、有能だと信じていた候補者が、男性候補者をひいきする有権者から無視されるのを目にすることで、女性たちは自らのキャリアにおける挫折を思い出させられている。ウォーレン氏が「うるさい」「怒っている」と批判されたのを見て、自分たちも女性であることを理由に「うるさい」「怒っている」と言われてきた記憶がよみがえった。そして今、女性たちが自らを重ね合わせた"大統領"を見る可能性は消えた。

「わたしは今、とても頭にきているし、怒っています。彼女に対してではありません。この国に対してです」と、破産法や消費者法に詳しいカリフォルニア大学アーバイン校の法学教授で、ハーバードの法科大学院でウォーレン氏の教え子だったDalié Jiménez氏は言う。「わたしたちは変化を必要としています」

「ものすごく腹が立っています」と語ったのは、ウォーレン氏の支持者で、一連のツイッター投稿を通じて同氏のために17万ドル(約1800万円)を集めたシャーロット・クライマー(Charlotte Clymer)氏だ。「準備万端な女性がそうでない男性のために見過ごされるのをまたもや目にするのは、本当に腹立たしいことです」

クライマー氏は、ウォーレン氏が他の民主党候補より大統領にふさわしい証拠として、討論会での素晴らしいパフォーマンスやよく練られた政策提案、進歩的なアジェンダを挙げた。

「特に、1人のトランスジェンダーの女性としては、一部候補者がわたしたちのために声を上げることすら恐れる中、彼女は尻込みしませんでした。これがどれほどのことを意味するか、言葉になりません」とクライマー氏は言う。

集会

スーパーチューズデーにデトロイトで開かれたウォーレン氏の集会。

Scott Olson/Getty Images

若者の政治進出を支援する「Run For Something」の設立者アマンダ・リットマン(Amanda Litman)氏は、ウォーレン氏は女性がそのキャリアにおいて"こうあるべき"とされる矛盾したメッセージの影響を受けたと指摘する。「『ステップアップしろ、ミーティングでは声を上げろ』『いや、君はミーティングで大きな声を上げ過ぎだ』『自分を誇れ、成果を売り込め! 』『いや、君はもっと謙虚になる必要がある』」

リットマン氏は、ウォーレン氏は「素晴らしい大統領になっただろう。彼女にチャンスが与えられなかったのは、彼女が女性だからということは明白だ」と考えている。

「胸が張り裂けそうでした」と語ったのは、有色人女性の政治参加を支援する「She the People」のエイミー・アリソン(Aimee Allison)氏だ。アリソン氏とShe the Peopleは予備選挙で特定の候補を支持しなかったが、アリソン氏はウォーレン氏と同氏の包括的な政策プラットフォームに感心したという。

「彼女が選挙キャンペーンで見せたリーダーシップの大半は、有色人女性とともに国を治める寛容さについてでした」とアリソン氏は語った。「(ウォーレン氏の撤退は)この国にとって大きな損失であり、わたしたちにとっても大きな損失です」

ウォーレン氏の支持者は、彼女の性別が敗北の主な理由と考えている

これまでの研究で、女性が選挙に立候補すれば、その勝率は男性と同じであることが分かっている。アメリカでは2018年、史上まれに見る数の女性が連邦議会議員に選出された。その多くは民主党議員で、トランプ大統領の誕生が立候補のきっかけだった。民主党候補だったヒラリー・クリントン氏は、共和党候補だったトランプ氏に選挙人の数で負けたが、得票数では勝っていた。

ウォーレン氏が直面した問題はジェンダーだけではなかった。そして、いくつかのミスを犯した。ウォーレン氏は序盤で、自身が先住民を祖先に持つ家系であることを証明するためにDNAテストの結果を公表したことで大きくつまづき、同氏はその後、このミスを謝罪し続けることになった。同氏はまた、民主党のバックボーンで、11月の選挙で勝てるかどうかの指標と見なされている黒人有権者の間でなかなか支持を広げられなかった。昨秋には、国民皆保険「メディケア・フォー・. オール」に対する自身のポジションを変えたことで有権者を混乱させ、その勢いを削いだ

だが、政治における女性を研究している「Barbara Lee Family Foundation」の調査によると、女性候補者は今でも実際の適性以上の"壁"に直面しているという。

「わたしたちの調査から、大統領を目指す際に女性は異なる、より高い水準に縛られることが分かっています。ウォーレン上院議員はその最たる例です」と、同財団の広報担当者アマンダ・ハンター(Amanda Hunter)氏は語った。「ほぼ間違いなく、彼女は他のどの候補者よりもその『当選できる能力』と『適性』が疑問視されてきました」

世論調査は一貫して、民主党の有権者の最優先課題は11月の選挙でトランプ大統領を負かすことだと示している。2016年の大統領選でヒラリー・クリントン氏が負けた後、「当選できる能力」という問題が選挙戦につきまとい、有権者は"誰がトランプ大統領に勝てるか"に基づいて候補者を評価しようとした。そして一部の有権者と民主党の大物にとって、それはシンプルに女性ではなかった

民主党の討論会

Mario Tama/Getty Images

「女性の候補者にかかる負担は、これまで女性の大統領が1人もいなかったせいです」とアリソン氏は言う。「さまざまな面でリスキーだとされ、ウォーレン氏がその重荷を背負わなければなりませんでした」

その一方で、有権者はバイデン氏の失言や、批判を受けた過去のセクハラ疑惑の聴取で同氏が果たした役割、女性に対する不適切な接触があったとする疑惑を見て見ぬふりするつもりだと、アリソン氏は指摘する。

そして、2020年の大統領選は白人男性だけに

ウォーレン氏のかつてのライバルで上院議員のカマラ・ハリス氏は3月5日、この「選挙周期が大統領を目指す女性の壁に対する非常にまっとうな疑問を提示しています」と語った

NBC Newsによると、「女性に適性があり、アメリカの最高司令官としての能力があることをはっきりさせるためには、まだやらなければならないことがたくさんあるというのが現実だ」と、ハリス氏は話している。

INSIDERが話を聞いたウォーレン氏の支持者たちは、支持する女性候補者はいなくなったが、前に進むための他の道を提供している。

リットマン氏は、民主党候補指名を争う最有力候補に女性が入っていないことに不満を感じている人々に、市町村や州の選挙で女性を支援するよう呼びかけている。

アリソン氏は、バイデン氏とサンダース氏は副大統領に有色人女性を選ばなければならないと主張する。「バランスの取れた候補にしなければなりません」とした上で、「2016年の大統領選から学んだことは、全員白人候補は負けだということです」と語った。

「誰が選ばれても、その候補者を心から支持するでしょう」と語ったのは、クライマー氏だ。「でも…… 女性や有色人を見過ごし続けていること、始まりはこれまでで最も多様な選挙戦となっていたのが結局、2人の年老いた白人男性の戦いになろうとしていることは、オーケーではありません」

そして、「愚痴らせてくれてありがとう」と言って、クライマー氏はインタビューを終えた。

[原文:Watching Elizabeth Warren lose has been a very specific kind of hell for the women who supported her

(翻訳、編集:山口佳美)

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