新型コロナウイルスへの感染予防策として、在宅勤務を励行するテック企業が増えている。
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- ワシントン州シアトルでは新型コロナウイルスに対する厳戒態勢が敷かれており、同市に本拠を置くアマゾンなどのテック企業は従業員に在宅勤務を指示している。
- ビジネス特化型匿名SNS「Blind(ブラインド)」がテック企業の従業員を対象に行ったアンケート調査では、回答者の8割が在宅勤務中だと答えた。
- 新型コロナウイルスの流行で生産性が低下したと答えた人は4割だった。
- 2000人以上を対象としたこのアンケート調査は、職場で新型コロナウイルスに感染することへの不安が高まっていることを示す結果となった。
同調査は、アマゾン、マイクロソフト、グーグル、フェイスブック、エクスペディア、リンクトイン、ウーバーに勤務する2068人が対象。同社は各従業員の個人情報を収集していないが、社用メールアドレスの認証を行っているため、回答者の所属企業は判別できる。
マイクロソフト、エクスペディア、リンクトインからの回答者の80%は目下在宅勤務中と回答。アマゾンの回答者の76%も同様。他のサンフランシスコ・ベイエリアに本拠を置く企業も在宅勤務者は多く、ウーバーが58%、フェイスブックが55%、グーグルは34%だった。
アマゾンとフェイスブックでは、いずれもシアトル勤務の従業員が新型コロナウイルスに感染しため、関係するオフィスをシャットアウトし、従業員には在宅勤務を指示している。
マイクロソフトではいまのところ感染例が確認されていないが、本拠を置くワシントン州キング郡の保健当局の指示にもとづき、シアトルとサンフランシスコの従業員に対して在宅勤務を指示している。キング郡では31人が新型コロナウイルスに感染し、うち9人が死亡している。
アンケートに回答したテック企業の従業員の大多数は、従業員の安全を確保するために会社が選んだ手法に満足していると答えた。母数・対象とも限られた調査ではあるものの、会社の判断に満足していない従業員が他社より多かったのはグーグル(41%)とウーバー(50%)。グーグルはこの調査のあとにワシントン州の従業員に在宅勤務を命じている。
また、テック企業に限定しない6000人のビジネスパーソンを対象にした調査では、7割が、新型コロナウイルスのせいで、オフィスで勤務することにためらいを「とても」あるいは「いくらか」感じると回答している。
アジア出身の従業員への誹謗中傷に深い懸念
在宅勤務を指示され、出張は禁止、主要なテックカンファレンスもキャンセル。こんな苦しい状況のなかで唯一の光明とも言えるのは、6000人のビジネスパーソンのうち約6割が、ウイルス流行は仕事の生産性にさして影響がないと回答していることだ。
この感覚がどこまで続くのかが問題だ。マイクロソフトはシアトル(レドモンド)本社で3月25日まで、他の拠点では3月31日まで、在宅勤務を続ける。同社傘下のリンクトインはベイエリアが本拠だが、マイクロソフト同様の在宅勤務が続く。
3月5日時点で、サンフランシスコ保健当局は2人の感染者を確認している。今後増加する可能性があることから、在宅勤務を導入するベイエリアの企業はさらに増えそうだ。
ベンチャーキャピタル(VC)大手のセコイアは、投資先のスタートアップ創業者らに対し、新型コロナウイルスが従業員の生産性(とくに販売とマーケティング)に深刻な損害を与える可能性があるため、状況悪化に備えるようメッセージを送っている。
ただ、本当に懸念すべきはブラインドによるもうひとつの調査の結果だ。7311人から回答があったその調査とは、新型コロナウイルスの流行が始まってから、中国人従業員に対する嫌がらせや拒否反応を目撃したか、というものだ。結果として、11%がそうしたふるまいを見かけた、と答えた。
考え方を逆転させれば、88%はまだそうした現場を目撃したことがないということではあるが、アメリカ疾病対策センター(CDC)は、アジア出身者がいわれのない誹謗中傷を浴びる事態を深く懸念し、すでに広く警告を発している。
(翻訳・編集:川村力)