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同僚も被害に…… 新型コロナウイルスの感染拡大とともに広まる"アジア系"に対する人種差別と外国人嫌悪

地下鉄

ニューヨークの地下鉄。複数のアジア系アメリカ人が差別的言動を経験している(2020年1月23日撮影)。

Getty/NurPhoto

  • 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。
  • 同じく広まっているのが、自覚なき差別的言動や、侮辱的なコメントをしたり敵意に満ちた視線を送るといった直接的でない不寛容の表現など、外国人嫌悪とアジア人を祖先に持つ人々に対する人種差別的な攻撃だ。
  • アメリカのBusiness Insiderのスタッフたちも、ここ数週間以内にこうした差別的言動を経験したり、目撃している。
  • 人種差別と感染症のつながりを研究しているイリノイ大学のジョスエ・デイビッド・シスネロス(Josue David Cisneros)教授は、アメリカの反移民の歴史が影響していると指摘する。

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。中国の武漢で最初に確認されて以来、今では南極大陸を除く全ての大陸で感染が確認されている。アメリカでも死亡者数が増えているが、広まっているのは感染症だけではない。

多くのアメリカ人がすでにもう1つの"問題"に直面している —— 外国人嫌悪と人種差別だ。オランダでは自転車に乗っていた女性を男性が突き飛ばそうとしたり、イギリスのロンドンでは街を歩いていた男性が殴る蹴るの暴行にあうなど、世界各地であからさまな言葉による攻撃や物理的な攻撃が報告されている。だが、アジア人を祖先に持つ多くの人が経験しているのは、自覚なき差別的言動や、直接的でない不寛容の表現だ。

一般的に、自覚なき差別的言動は日常茶飯事だ。アメリカの従業員1100人を対象に行われたGlassdoorの最近の調査では、61%が職場で年齢、人種、性別またはLGBTQアイデンティティーに基づいた差別を目撃または経験していることが分かった。人から人へとうつる感染症に関する恐怖誤った情報が加わることで、それはさらにひどいものになっている。

自覚なき差別的言動は分かりにくいこともあるが、その影響は無視できない。若い有色人405人を対象に行われた2015年のUS National Library of Medicineに掲載されたある研究では、自覚なき差別的言動を経験することで、うつや自殺を考える確率が高まることが分かった。

そして、筆者の同僚もここ数週間以内に人種差別や外国人嫌いを経験もしくは目撃していた。

Business Insider USのエディトリアル・フェローで韓国系アメリカ人のブライアン・ピーチ(Bryan Pietsch)は3月5日の午前中、ブルックリンで地下鉄に乗った。すると、すぐに中年女性が口元を覆い、ブライアンをにらみつけ、どこかへ移動していったという。

「ぼくが近くに立ったというだけで、顔を覆い、敵意に満ちた視線を送られたのは残念でした」とブライアンは話している。

「周りの人たちがどのようにこの状況を解釈したのか、不安になりました。彼女の動きを見て、混雑した車両にぼくがいることで、もっと不安になったんじゃないか? と」

同じくBusiness Insider USのアニメーション・フェローで韓国系アメリカ人のエミリー・パーク(Emily Park)は3月2日、マンハッタンで地下鉄に乗り、咳払いをした。すると、女性がエミリーのことをじっと見て、突然立ち上がり、遠く離れた席に移動したという。

「同じような経験をしたというアジア系の人の話を聞いたことはありましたが、わたしは初めてで、ちょっと気分が悪くなりました」とエミリーは話している。

Business Insider USのシニア・プロデューサー、アラナ・イゾラ(Alana Yzola)は最近、ニューヨークでウーバーを利用していた時に、運転手がドアにロックをかけ、「ここは中国人が多いから、気を付けないと」と言われたという。この時、ちょうど新型コロナウイルスについて話をしていたため、これはウイルス感染についての言動と見られる。ウーバーはこの件について調査している。

Business Insider USのカスタマー・サクセス・スペシャリスト、ジェニファー・エルナンデス(Jennifer Hernandez)は、ニュージャージーからニューヨークまで鉄道を利用し、到着後、エレベーターに乗った際にあるやりとりを目撃したという。エレベーターにはジェニファーの他に白人男性3人とアジア系女性1人が乗っていて、全員知り合いではないように見えた。3人の男性が新型コロナウイルスについて話し始め、1人が感染拡大は「中国人が食べる全ての汚らわしい食べ物」に関係していると発言した。アジア系の女性は明らかに居心地が悪そうで、腹を立てていたと、ジェニファーは話している。たまりかねた女性は声を上げ、中国の食べ物と文化を擁護したという。

アジア人を祖先に持つ人々に対する自覚なき差別的行動は、新型コロナウイルスの感染が広まる中、アメリカ各地で増えている。カリフォルニア州サウス・サンフランシスコでは、病院でインフルエンザの予防接種を待っていた女性が手をあててくしゃみをしたところ、中年の白人女性が人種差別的な中傷するような言葉を女性に投げつけたとNPRが報じている。カナダのオンタリオ州では子どもたちが、アジア系の同級生が新型コロナウイルスに感染していないか検査するゲームがおもしろいだろうと考えたとTIMEが報じている。オーストラリアのメルボルンでは、ある病院で一部の親がアジア系の医師に自分の子どもの治療をさせることを拒否。フランスでは、相次ぐ人種差別的な発言や攻撃を受け、ハッシュタグ「#JeNeSuisPasUnVirus」(わたしはウイルスじゃない)が話題になった。スペインでも、同様のハッシュタグ「NoSoyUnVirus」が生まれた。

感染症とともに広まる人種差別と外国人嫌悪

感染症の感染拡大がなぜ人種差別や外国人嫌悪を広めるのか? イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のジョスエ・デイビッド・シスネロス教授がこの現象を研究している。

「新しい感染症が人々の恐怖、偏見、特定の人々への責任転嫁を招くのは、驚くことではありません。なぜなら、わたしたちはこうした出来事を過去の感染症のレトリック —— 恐怖、偏見、特定の人々への責任転嫁に根差したもの —— を通じて理解しがちだからです」と、シスネロス教授はBusiness Insiderに語った。

「アメリカの初期の移民法の一部は中国人の移民をターゲットとしていました。これは、中国人が人種的、文化的、生物学的な脅威と見なされていたからです。中国人排斥法もその1つです」

「認識された生物学的脅威が、認識された文化的脅威と結びつけられたのです」

その最近の例は、トランプ大統領の2018年のスピーチだ。大統領はこのスピーチの中で、滞在許可証を持たない移民がアメリカに「はびこっている」と発言した。シスネロス教授は、中でも"反中国人"のレトリックは19世紀にまでさかのぼるとし、直近では2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)や2009年の新型インフルエンザが流行した時にも続いていたと指摘する。

例えば、リーハイ大学の研究者は、SARSの流行に関する報道がアジア人に対する負のイメージを広め、感情的に「有害な」影響を与えたことを発見した。

「政府による救済活動や、流行を食い止めるために取られた措置に注目する代わりに、主要メディアはシンプルに、アジア人がSARSの感染拡大を招いたと暴き、繰り返し責めることを選んだ」と研究者は指摘している。

シスネロス教授によると、新型インフルエンザが流行した時には、メキシコ人を祖先に持つ人々に対する"恐怖の利用"が恐ろしいほどにまん延した。2009年にはNBC Newsが、多くのトーク番組の司会者がメキシコ人やメキシコ人を祖先に持つ人々について外国人嫌悪的または人種差別的な発言をしていると報じた。

スタンフォード大学経営大学院のハヤグリーバ・ラオ(Hayagreeva Rao)教授と元教え子のスナシル・ダッタ(Sunasir Dutta)氏は、感染症と移民に対する考え方の関係を調査した。調査は2つのグループで行われた。片方のグループには事前に新しいインフルエンザについて読ませ、もう片方のグループには読ませなかった。すると、事前にインフルエンザについて考えていたグループの方が、移民を支持する割合が低かった。

「わたしたちの研究は明らかに、伝染病に関する話題に触れることで、人々の中の外国人嫌悪の傾向が活性化することを示している」とラオ教授は大学のブログに掲載された記事の中で述べている。

ダッタ氏は、「誰かが水道を汚染している、誰かが食料を汚染している…… こうした類の噂は非常によくあることだ」とした上で、「そして、それが時に暴力を招く」と語っている。

2020年に入って、人種差別的、外国人嫌悪的な自覚なき差別的言動や攻撃が増えているものの、ニューヨークの非営利組織「China Institute」のプレジデント、ジェームズ・ヘイモウィッツ(James Heimowitz)氏は、こうした行動が大半の人々の感じ方を代表しているわけではないとの考えを示している。

「アメリカに間違いなく人種差別は存在しますが、わたしの全般的な印象、見解としては、多くの人々はこの世界的な健康上の危機に際し、団結し、協力しようとしている」

[原文:Several of my colleagues report racist microaggressions in the wake of coronavirus, and they're not alone. Here's why racism and xenophobia spread with infectious disease.

(翻訳、編集:山口佳美)

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