テレワーク急増で注目「Zoom」日本統括が語る国内戦略……「自動議事録化」新機能も

Zoom App

クラウド会議システム「Zoom」が、日本での戦略、新型コロナウイルスへの対応などを語った。

撮影:小林優多郎

新型コロナウイルスの影響でテレワークやウェブ会議が急速に広まる中、企業向けビデオ会議ソリューションとして「Zoom」の注目が高まっている。

Zoom Japanは先週、記者向けの説明会をオンラインで開いた。当初は都内で開催予定だったこの説明会だったが、昨今の情勢を踏まえ、オンライン開催に変更。ZoomがZoomについてZoomを使って説明するイベントになった。

そこでは、日本におけるZoom需要の高まりへの対応や、今後の事業戦略が語られた。

新型コロナウイルスが後押しして「急展開」

最近のZoom Japanの業績

最近のZoom Japanの業績。

出典:Zoom

2019年にナスダックに上場したZoomの株価は、2020年初頭の70ドル程度から3月6日現在は125ドルに急騰し、連日のように上場来高値を更新している。

日本国内での事業も順調に拡大しているという。日本法人を統括するカントリーゼネラルマネージャーの佐賀文宣氏は、「2019年7月に開設した日本オフィスの従業員は20名から35名に増えた。年内にはさらに30名から40名を採用する」と意気込みを語った。

Zoomを導入した企業の一例

Zoomを導入した企業の一例。

出典:Zoom

国内の顧客数は、利用者10〜49ユーザー以上をターゲットとした「Business」以上のライセンスは3500社、1〜9ユーザー以上の「Pro」ライセンスを含めると9000社に上る。

その中には日本航空や楽天に加え、新たにANAや野村総合研究所が加わったという。国内の口コミ調査では「Skype」の認知度をわずかに上回り、高い満足度を維持しているとしている。

パートナー

SB C&Sとの契約で全国展開を狙う

出典:Zoom

販売パートナーとしてはSB C&Sと契約し、中堅中小企業や日本全国各地への展開を強化。今後は新たに2000社から3000社の契約獲得を目指す構えだ。

「北米市場は直販が9割だが、国内では日本の商習慣に合わせ、パートナーと市場を広げるというコミットメントだ」(佐賀氏)

他社に比べて「Zoomは性能に明らかな差がある」

今後の展開

今後は大阪データセンターやクラウドPBXを展開へ。

出典:Zoom

Zoomの特徴としては、「つながりやすく、切れない」点を強調する。2011年に創業したZoomは、当初からモバイル対応や分散型アーキテクチャを意識していたのに対し、

「他社製品は20年前に設計され、機能追加を繰り返して重くなっている。現場より経営者に近い方は、グーグルやマイクロソフトにもウェブ会議の機能はあるとよく言われるが、Zoomは性能に明らかな差がある」(佐賀氏)

と、競合のビデオチャットツールとの違いを挙げた。

今後の事業戦略としては、会議室用の「Zoom Rooms」を強化。東京に続き、大阪に第2のデータセンターを設置し、年内を目処にクラウドPBXサービス(クラウドを使った専用通話サービス)を開始することを発表した。

新型コロナウイルスに対応

新型コロナウイルス対策需要に緊急対応。

出典:Zoom

新型コロナウイルスへの緊急対応としては、テレワーク関連の問い合わせが殺到しているという。

これを受け、まずは「Zoomの使い方」を解説するウェビナー(Web上のオンラインセミナー)を毎週開催。セミナーの内容を録画でも見られるようにしたという。

また、経済産業省による学校休業対策「#学びを止めない未来の教室」からの要請に応じて、学校や教育関係者向けに4月末まで無償提供していることも紹介した。報道陣に対し、遠隔での授業やセミナー、職員会議や保護者会への活用を提案した。

分散型アーキテクチャに強み、AIを活用した新機能も

分散型アーキテクチャ

世界各地のデータセンターをリンクした分散型を採用。

出典:Zoom

Zoomの技術的な特徴が「分散型アーキテクチャ」だ。世界のどこかに中心となるデータセンターを置くのではなく、地理的に近いデータセンターを利用することで、海外とのビデオ会議でも遅延を減らせるという。

同時接続性

最大1000人が同時接続し、そのうち最大49人のカメラを同時表示できる。

出典:Zoom

映像や音声のストリーミングはサーバーではなく「端末側」で処理しており、画質や音質は受信側がデバイスに応じて選択する。この仕組みにより、同時接続数は最大で1000人、そのうち最大49人の映像を同時に表示できる。

うまく画質を落とすことで、データ量としては1人分のHD動画と大差ないというのは興味深い点だ。

文字起こし新機能

字幕による文字起こし機能はライブに対応。まずは英語から。

出典:Zoom

AIを活用した新機能の開発も進めている。話している内容を字幕として文字起こしするトランスクリプションは、録画だけでなく新たにライブに対応。ライブで話している内容に1〜2秒のタイムラグで字幕が追いつくことをデモで示した。

議事録の自動生成

議事録を自動で作ってくれる。文字になっているので検索もしやすい。

出典:Zoom

議事録の自動作成機能も開発が進んでいる。ミーティング中に繰り返し出てきたキーワードの自動抽出、会議の録音のテキスト化、参加者のスナップショットなどを組み合わせ、後からフォローアップできる議事録を自動的につくってくれるという。

筆者が体験した「Zoom説明会」の可能性

ZoomでZoomのカンファレンスに参加

ZoomがZoomで開いたZoomの説明会に参加した。

撮影:山口健太

当日、那覇に滞在していた筆者は、空港ラウンジのWi-Fiを利用してiPad miniとAirPodsでZoom説明会に参加した。

携帯電話による通話はできないため、マイクはオフ。背景は任意の画像や動画を指定する「バーチャル背景」機能は使えるとはいえ、念のためカメラもオフにした。

会議の映像や音声は途切れることなくスムーズで、スライドの文字は鮮明で見やすかったのが印象的だ。

筆者自身もオンラインでの会議に参加する機会が増えているが、画質や音質に少しでも問題があると、気を取られて集中できないことがある。

終了後にホスト側の機能でクラウドに保存された録画が提供され、じっくり見返せたのも好印象だった。

新型コロナウイルスの終息はまだ先行きが見えない状況だが、働き方改革や東京五輪などテレワークには強い追い風が吹いている。その中でZoomの需要は、これまでと違ったユーザーにも伸びていく可能性を感じさせる。

(文・山口健太)


山口健太:10年間のプログラマー経験を経て、2012年より現職。欧州方面の取材によく出かけている。著書に『スマホでアップルに負けてるマイクロソフトの業績が絶好調な件』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)。

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