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プロ野球とJリーグを阻む、新型コロナ「基本再生産数」の壁

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「第2回新型コロナウイルス対策連絡会議」を終え、会見に登壇した(左から)Jリーグ村井満チェアマン、専門家チームの三鴨廣繁氏(愛知医科大学大学院医学研究科臨床感染症学教授)、座長の賀来満夫氏(東北医科薬科大学医学部感染症学教室特任教授、東北大学名誉教授)、舘田一博氏(東邦大学医学部微生物・感染症学講座教授)、日本野球機構(NPB)の斉藤惇コミッショナー。

撮影:大塚淳史

プロ野球を統括する日本野球機構(NPB)は3月9日、20日に予定していた開幕戦の延期を発表。続いてJリーグも、18日に再開を予定していた公式戦の「3月いっぱいの延期」を決めた。今後、プロ野球は4月中の開催を目指し、Jリーグは4月3日の公式戦再開を目指す。なお、プロ野球の開幕戦延期は、東日本大震災のあった2011年以来。

公式戦開催に向け準備してきたが、それを阻んだのは新型コロナウイルス感染者の「基本再生産数」だった。

感染症専門家「試合の延期が望ましい」

この日の午前、プロ野球、Jリーグの各関係者たちと賀来満夫座長ら3人の感染症専門家チームによる「新型コロナウイルス対策連絡会議」の第2回が開かれた。契機となったのは、その専門家チームによる「試合の延期が望ましい」との中間答申を受けたことだ。

この意見を踏まえて、プロ野球は同日午後に12球団による臨時代表者会議で、正式に延期を決定。また、Jリーグも夜に各クラブ代表者たちを交えた会議で、正式に再延期を決定した。

専門家チームからの最終答申自体は3月12日に予定されているが、すでに試合が迫っていることもあり、前倒しでアナウンスした形だ。

「断腸の思い」で決定

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プロ野球の開幕戦延期を決めたNPBの斉藤惇コミッショナー。

撮影:大塚淳史

臨時代表者会議後の会見で、NPBの斉藤惇コミッショナーは、

(プロ野球の)オープン戦を先般、無観客にして大変苦しい思いをしたが、今回はそれ以上に苦しい判断。多くのファンに支えられているプロ野球として、我々はどう行動すべきなのか、選手はもとより、スタッフや家族を守り、何よりもファンの皆さんを守りたい。同時にプロ野球の文化を守らなければいけない。そのための決断です」

と経緯を話した。

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NPBは3月9日午後に、プロ野球の開幕戦延期を発表。ともに会見に出席した、オリックス・バファローズの湊通夫球団社長(左から2人目)、巨人の今村司球団社長(右から2人目)はともに「断腸の思い」と話した。

撮影:大塚淳史

Jリーグは午後6時から各クラブとのウェブ会議を行い、村井満チェアマンが午後7時半から囲み取材で公式戦再開延期を発表し「(各クラブと)4月3日の再開に向けて取り得る手段を尽くして、次に向けて努力していく」と確認したという。

今回の再延期を受けてJリーグは、

  1. 公式戦日程の調整
  2. 競技の公平性などリーグのコンペティションの判断
  3. 各クラブの財務状況をサポート
  4. ファン、サポーター、クラブなど各ステークホルダーの安全・安心な観戦の準備

という4つのプロジェクトを発足したことを説明した。今後、各プロジェクトを動かしながら、公式戦再開に備えていく。

専門家が再三言及した「基本再生産数」とは何か?

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専門家チームとして提言を行った、座長の賀来満夫氏。

撮影:大塚淳史

プロ野球の開幕戦、Jリーグの公式戦再開を諦めざるを得なかった背景には、新型コロナウイルスの感染拡大が続いていることがある。

そして、その目安となる指標として専門家チームがあげたのが「基本再生産数」だった。

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特定の感染症に対して免疫をもたない人の間で、感染症が広がっていくイメージ図(感染者は青色)。1番から順に感染症が広がるとすると、人により、3人にうつす人もいれば、誰にもうつさない人もいる。この図の場合、1人の感染者が感染症をうつした人数を平均すると1.5人。この数値が「基本再生産数」となる。

出典:日本疫学会新型コロナウイルス関連情報

基本再生産数(Basic Reproduction Number)とは、1人の感染者から平均して感染させる人数を意味する指標。感染症は人づてに広がるが、1人の感染者からうつる人数は決まっていない。誰にもうつさずに治る人もいれば、4人、5人と感染を広げることもある。感染症の流行が広がるか収束するかは、その感染者たちのバランスによって決まる。

そして基本再生産数は、ウイルスの性質だけではなく、咳エチケットや手洗いなどの感染対策の有無や、人との接触回数など、環境の影響で大きく変わる。

斉藤コミッショナーは、

「専門家の方々から話された『基本再生産数』、罹患する1人の患者から(ウイルスが)出されて、2人、3人、4人と増加している段階では、たくさん人が集まる野球では、なかなか難しい状況

と判断を下した。

プロ野球の開幕戦延期をはじめとしたイベントの自粛や、全国の一斉休校は、人と人との接触を少なくすることで、基本再生産数を小さくするためのものだと言える。現状、コロナウイルス(COVID-19)の基本再生産数は、1.4 〜 6.49(平均:3.28)だと推定されている(日本疫学会新型コロナウイルス関連情報より引用)。

専門家チームから、具体的にいくつに下がれば再開相当なのか、会見では説明はなかった。他には「コロナ対策の認知、教育の必要性」「現実的なスタジアムで対策準備不足」といった提言はあった。

先に行われた「新型コロナウイルス対策連絡会議」後の会見では、賀来氏が

「(プロ野球、Jリーグ)ともに観客の方々の感染予防や、感染リスクをゼロにするのは難しい。また、あと1週間で、選手、スタッフ、家族を含めた健康管理構築体制、入場チェック体制、やはりまだ準備をする必要があるのではないか」

と指摘した。

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Jリーグ村井満チェアマンは、3月9日夜に急遽会見を開き、公式戦の再延期を発表した。

撮影:大塚淳史

現実に、観客がスタジアムへ入場する際に、体温をチェックできるサーモメーター、消毒用アルコール、マスクなど資材が現状足りていないこともあり、準備不足は否めない。

プロ野球、Jリーグが公式戦を開くには、厳しい選択をせざるを得ない状況だった。

(文、写真・大塚淳史)

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