撮影:鈴木愛子
Business Insider Japan読者にも多い「30代」は、その後のキャリアを決定づける大切な時期。幸せなキャリアを歩むためには、転職にまつわる古い“常識”にとらわれず、刻々と変化する転職市場のトレンドをアップデートすることが大切です。
この連載では、3万人超の転職希望者と接点を持ってきた“カリスマ転職エージェント”森本千賀子さんに、ぜひ知っておきたいポイントを教えていただきます。
今回は、読者の方からお寄せいただいたご相談にお答えします。
テーマは、転職市場における自分の「強み」。特殊な業務、マイナーな業務などを担当してきた方ほど「この経験は他社で通用するのか?」と不安を抱くことが多いようです。30代前半の営業職・Aさんから寄せられたのも、そんな悩みです。
あなたの「ポータブルスキル」は?
Aさんが担当されている分野が、他社にはあまりないような商材、あるいは顧客層なのかもしれませんね。そうすると、その経験そのものを活かそうとすると、転職市場では選択肢が少ない、あるいは見つからない、ということもあり得ると思います。
しかし、転職市場で評価されるのは、業務経験だけではありません。仕事を通じて養われた「ポータブルスキル」も重視されます。
ポータブルスキルとは、言葉通り「持ち運びできるスキル」のこと。業種や職種が変わっても通用するスキルです。自分の「強み」を整理するなら、このポータブルスキルに当てはめて言語化してみましょう。
次のステップを踏んで、自分のキャリアの「棚卸し」をするところから始めてみてください。
【STEP-1】これまで所属した部署、経験した業務、関わったプロジェクト、チームでの役割などを、なるべく細かく書き出してください。
【STEP-2】STEP-1で書き出したものについて、「成果」を振り返ります。「売上金額」「○○のコストを%削減」「△△率を%向上」など、明確な数値で表せるものは数値も書き出しましょう。数値で表せないものは、どんな「問題解決」や「改善」に導くことができたかを書いてください。明確な成果が上がっていなくても、誰かに喜ばれたり、自分自身の中で達成感や成長を感じたりした経験でもOKです。
【STEP-3】STEP-2で挙げたものについて、「なぜその成果に結びついたか」を振り返り、そのプロセスをなるべく具体的に書きます。例えば、「どんな目標や計画を立てたか」「どんな行動や工夫をしたか」「途中の失敗やアクシデントをどのように乗り越えたか」など。
【STEP-4】STEP-3での行動を踏まえ、どの「ポータブルスキル」が発揮されたか、身に付いたかを考えてみましょう。
ポータブルスキルの種類については、Web検索するとさまざまなものが紹介されていますが、ここではリンクアンドモチベーションが分類した一覧をご紹介します。
いかがでしょうか。あなたに当てはまるポータブルスキルは見つかりましたか? なお、「ポータブル診断」のサービスも複数ありますので、利用してみてもいいと思います。
ニッチな経験が意外な業界で役立つ?
こうしたポータブルスキルを自分の「強み」として自覚し、適切にアピールすることができれば、転職にも活かすことができます。
Aさんは30代とのこと。30代といえば、ポータブルスキルが評価され、異業界・異職種に転職を果たす事例も多く見られます。
アラフォー、特に40代以降になると、何かしらのコアな業務経験(専門性)を評価されるウエイトが大きくなりますので、今の仕事があまりにニッチで、「つぶしが利かない」という不安を強く感じるのであれば、今のタイミングで転職を検討するのも選択肢の一つかと思います。
ただ、その前に、ご自身の経験が他の場所でも活かせるのかどうかを探ってみてはいかがでしょうか。
自分ではニッチだと思っていた経験が、思いがけない業界や企業で歓迎された……という転職事例は多数あります。ニッチなだけに、実際の事例をご紹介すると個人が特定されてしまいますので、ここでは触れないでおきますが……。
自身のキャリアの「市場価値」を知るためには、転職エージェントに相談するのも有効です。幅広い業種・職種の求人を扱っている「総合型」のエージェントであれば、経験を異業界で活かす道が見つかる可能性もあります。
すぐに転職を考えていなくても、「市場価値を確かめる」ことを目的に転職エージェントに相談してみてはいかがでしょうか。
自分の強みは他業界の人が教えてくれる
自分ではなかなか強みに気づけないもの。そんな時はどうすればいい?
撮影:鈴木愛子
このほかにも、自分の「強み」に気づく方法があります。
例えば、さまざまな業界の人が集まるビジネススクールやビジネスセミナーに参加してみるのもお勧めです。ポイントは「ワークショップ」のプログラムがあるセミナーを選ぶこと。異業界の人・他社の人と一緒に課題に取り組む中では、「これ、今の会社では普通にできて当たり前だと思っていたけれど、意外とできない人が多いんだな」なんて気づくこともあるものです。
それは例えば、「課題の整理・分析の仕方」であったり、「複数の意見をとりまとめるファシリテーション」であったり、「概念を図式やフォーマット化して表す」であったり。
ワークショップに参加するほか、会社で許可されているのであれば、他社で「副業(複業)」を経験してみるのもいいと思います。自分では思いもよらないところで、「○○さんのこのスキル、すごいですね!」と評価され、自分の強みに気づけるかもしれません。
「自分のキャリアはつぶしが利かないかも……」と思っても、そこですぐに焦る必要はありません。自分にとっては当たり前のことでも、ひとたび外の世界に出れば強みとしてアピールできる可能性も。今回お伝えしてきたことをヒントにして、ぜひあなたの強みを見つけてくださいね。
※転職やキャリアに関して、森本さんに相談してみたいことはありませんか? 疑問に思っていることや悩んでいることなど、ぜひアンケートであなたの声をお聞かせください。ご記入いただいた回答は、今後の記事作りに活用させていただく場合がございます。
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※本連載の第8回は、3月23日(月)を予定しています。
(構成・青木典子、撮影・鈴木愛子、編集・常盤亜由子)
森本千賀子:獨協大学外国語学部卒業後、リクルート人材センター(現リクルートキャリア)入社。転職エージェントとして幅広い企業に対し人材戦略コンサルティング、採用支援サポートを手がけ実績多数。リクルート在籍時に、個人事業主としてまた2017年3月には株式会社morichを設立し複業を実践。現在も、NPOの理事や社外取締役、顧問など10数枚の名刺を持ちながらパラレルキャリアを体現。2012年NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。『成功する転職』『無敵の転職』など著書多数。2男の母の顔も持つ。