3月12日に東京都内で開かれた「第3回新型コロナウイルス対策連絡会議」の会見では、取材受付にサーモグラフィが設置されていた。
撮影:大塚淳史
発熱している人を瞬時に検知できる「サーモグラフィーカメラ」の需要が急増している。新型コロナウイルスの拡大にともない、国際空港の入国ゲートのみならず、さまざまな場面での利用希望が増加しているからだ。
Jリーグ&プロ野球会見にサーモグラフィーカメラが登場
3月12日に東京都内で開かれた「第3回新型コロナウイルス対策連絡会議」。多くの記者やカメラマンが集まった。
撮影:大塚淳史
3月12日、東京都内の日本サッカー協会ビルで開かれた、Jリーグ、プロ野球、感染症の専門家チームによる「第3回新型コロナウイルス対策連絡会議」。その会見場では、取材受付で記者やカメラマンたちの健康状態をチェックするため、見慣れぬカメラが設置されていた。サーモグラフィーカメラだ。
第1回、第2回の会見では、Jリーグの村井満チェアマン、日本野球機構の斉藤惇コミッショナーが、プロ野球やJリーグの観客を入れた試合を実施するための「感染予防策」の1つとして、サーモグラフィーカメラ(会見では「サーモメーター」という言葉が用いられていた)の使用を挙げていた。
現時点で、スポーツ、経済、芸能などさまざまな取材現場で、サーモグラフィーカメラの利用はほとんど見られないこともあり、珍しい光景だった。
3月12日の会見会場で試験的に設置された、日本アビオニクスの「R450シリーズ」。
撮影:大塚淳史
12日の会見で設置されたサーモグラフィーカメラは、日本アビオニクス社の「R450シリーズ」。レンズ部に赤外線センサーがあり、前を通る人の表面温度を色によって表示できる。アラームの鳴る温度を任意で設定できるため、例えば、脇で測る体温と額など表面温度は、最大2度ほどの差があるというが、その差を踏まえた上での温度設定をすることで、「体調不良で発熱している人物を検知」できる仕組みだ。
新型コロナウイルスの感染有無自体が判別できるわけではないが、発熱の疑いがある人を判別できるという。
12日の会見会場にいた日本アビオニクスの担当者は「今回、(Jリーグから)どういう物なのか見てみたいということでこちらに設置しました」と話した。
同社にはサーモグラフィーカメラの注文が激増しているといい、「すでに3月分(の製品)は出ました」(担当者)。また、同社の広報担当は「2月頃から問い合わせや注文が増えました。福島にある工場を3交代制にして生産能力を3倍にしています」とフル回転だという。
新型コロナウイルス感染拡大で、需要が増えた
サーモグラフィーカメラは、身近なところでは、国際空港など公的機関による検疫に使われている。また、建物や橋梁などの劣化状況を調べるためや、工場での発火検知などといった場面で使われる。
しかし、新型コロナウイルス感染拡大によって、最近では、オフィスビルや展示会での、人の体温検知での使用についても問い合わせが多いという。そして、Jリーグ、プロ野球がサーモグラフィーカメラの使用を打ち出している状況では、さらにスポーツやコンサートなどエンターテイメントなどの現場での利用が増える可能性がある。
なお、日本アビオニクスが推奨している機種では、手に持って使用するタイプ「F50シリーズ」で45万円(税別)から、三脚などに固定設置可能な「R450シリーズ」では130万円(税別)から。サーモグラフィーカメラは決して安い物ではない。
Jリーグの村井チェアマンは12日の会見で「週1回の試合のため、各クラブに購入負担をかけるよりは、Jリーグとして一括で購入してレンタルする形にして、金曜日、土曜日、日曜日と別々の試合会場で使ってもらうのが良いかもしれない」と案を語っていた。
(文、写真・大塚淳史)