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“新型ウイルス感染症対策サイト”を爆速で創った舞台裏…「一人のヒーローだけじゃ世の中は変わらない」

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東京都からサイトの作成を請け負ったCode for Japanの関治之さん。

撮影:横山耕太郎

東京都の「新型コロナ感染症対策サイト」が、見やすさだけなく、その作られ方に注目が集まっている。

サイトは3月4日に開設。新型コロナウイルスの検査実数や陽性者の推移が一目でわかるほか、「3月11日、都内、60代、男性」など陽性者の属性がすぐに知ることができる。

使いやすさだけでなくこのサイトが画期的なのは、誰でもサービス(アプリ)開発に参加できる「オープンソース」の枠組みを使っている点だ。

外部の協力者から改善点のアドバイスなどを受けながら、サイトの改善を進められることに加え、都のサイトのソースコードを複製することで、他の自治体でも同様のサイトをすぐに作成できる。

神奈川県版や北海道版、山梨県版など全国の新型コロナウイルス対策サイトが、地元の有志らによってすでに公開された。また3月13日に開設された三重県版は、県内の高専生チームによって開発されたという。

台湾IT大臣が「粋な参加」

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オードリー・タン氏(中央)とCode for Japanメンバーらとの記念写真。来日した際に撮影した。

出典:Code for JapanのHPより編集部キャプチャ

都のサイトは、台湾のIT担当大臣、オードリー・タン氏もシステムの改善に参加したことが話題になった。オードリー氏は台湾で、市民がIT技術を使って課題を解決する「シビックテック」の団体を立ち上げた中心人物だ。

オードリー氏が提案したのは、中国語の表現について。言語を選ぶ部分で、「繁体字」の表記の、「体」を「體」への変更を提案した。

東京都から同サイトの作成・運用を請け負っている「Code for Japan(コード・フォー・ジャパン)」代表理事の関治之さんは、「オードリーさんが参加したことが分かり、メンバーも沸きたった」と話す。

オードリー氏は2019年にCode for Japan 主催のワークショップに登壇するなど、以前からつながりがあった。

「漢字一文字を変更するものですが、プラットフォーム上で、広く見える形でシステムに参加してくれた。

『粋なことをするなぁ』と思いましたね」

スピード開発、元ヤフー社長・宮坂副知事も尽力

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「新型コロナウイルス感染症 対策サイト」を撮影。陽性患者数などが一目でわかる。

撮影:横山耕太郎

「何かできないかと3月に入ってからCode for Japanで独自に動いていた。

東京都のお手伝いをすることに決まってからローンチ(開設)まで数日。システムの下地はあったものの、すごいスピードでの開発でした」

わずか数日で公開された「新型コロナウイルス感染症対策サイト」開発について、関さんはそう振り返る。

オープンソースの枠組みを使うのは「自治体としては異例な取り組み」(関さん)となったが、都が大きな決断をした背景には、ヤフー元社長の宮坂学副知事の尽力もあったという。

「オープンソースの仕組みを利用するということはどういうことか、行政としての意義を言葉にして広く知ってもらうことができたのは宮坂さんの力があった。

もちろんオープンソースの採用を決定した知事の決断も、すごく早かった」

外部からも提案、開かれた構造に

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都のコロナ対策サイトの作成には多くの市民が参加している(写真はイメージです)。

Getty Images

オープンソースの仕組みとはどのようなものか。

今回のサイトを設計している情報は、「GitHub(ギットハブ)」という世界中のエンジニアが活用するプラットフォーム上に公開されている。誰でも見られる形になっており、外部の市民も、サイトの改善について提案することができる。

改善点を広く募ることができる利点があるほか、複製して他の自治体も使用できるため、開発にかかる時間やコストを削ることができるという。

都のサイトでは、これまでデザインについての改善案や、表現が分かりにくい点、システムがうまく動いていない点など、公開後に600件を超える提案があり、500件以上を修正。外部からの提案が半数以上だという。

都のサイトではセキュリティー対策として、寄せられた変更点はCode for Japanが確認、実際のサイトへの反映については、都が最終判断するプロセスを採っている。

「過去にない数の人が関わってくれている。世界中で使われているGitHubですが、その中で『一番勢いあるプロジェクト』のランキング1位になっていた時期もあった。これまで社会貢献の機会がなかったという人も、多く参加してくれています」(関さん)

プログラミングやシステムへの理解がないと、提案をうまく反映できなかったり、 そもそも自治体などで使用した前例が少ないことから、行政の場ではこれまでオープンソースの仕組みはあまり使われてこなかったのが実情という。

東日本大震災が活動の原点

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「社会の役に立ちたいと考えていえるエンジニアは少なくないが、参加の方法が分からないという人も多い」と話す関さん。

撮影:横山耕太郎

関さんがCode for Japanの活動を始めたのは、2011年の東日本大震災がきっかけだ。

関さんは当時、GIS(地理情報システム)の会社を運営しながら、ヤフーに勤務していたが、震災の発生を受け、被害状況を地図上にまとめて公開する活動に参加。

その後も岩手県のボランティアセンターでハッカソンを企画するなど、行政と市民をつなぐ活動を続け、2013年に同団体を設立した。

「震災の前までは、とにかく自分の技術を磨いて、給与をたくさんもらって、いいシステムを作るのがモチベーションだった。

今もいいシステムを作りたい思いは変わりませんが、何のために作るのか、という考えがセットされた。社会のためになりたいと思うようになりました」(関さん)

「ヒーローを作りたくない」

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高専生がエンジニアコミュニティ・Qiita上に開設した「東京都 新型コロナウイルス対策サイトへの貢献方法を解説」のページ。

撮影:伊藤有

経産省もCode for Japanと協力し、新型コロナウイルスに関する支援などをまとめたサイトを公開するなど、市民が参加するシビックテックの取り組みは拡大している。

関さんが手応えを感じているのは、10代の若い世代も取り組みに参加してくれている点だ。

都の新型コロナウイルス対策サイトについては、高専生が「東京都 新型コロナウイルス対策サイトへの貢献方法を解説」という記事を公開。関さんは「本当によく書けている記事。若い世代が積極的に動いてくれるのはうれしい」と話す。

「今回のことが、東京だからできたとか、宮坂さんがいたからだとは考えてほしくない。

だれでもできることで、ヒーローはいらない。一人のヒーローがいるだけでは世の中は変わらないんです」(関さん)

(文・横山耕太郎)

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