新型コロナウイルスの休校措置によって、本屋の学習参考書の売り上げが大きく伸びている。
提供:紀伊國屋書店泉北店
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、外食や旅行業などの産業には大きな打撃がある一方で、街の書店には“特需”が生まれている —— 。
児童書・学習参考書の売り上げが急増
新型コロナウイルスの影響で、出版社や書店が、思わぬ需要急増の恩恵を受けている。
全国の小中高校で休校措置が出たことで、自宅で使う学習参考書や書籍の売り上げが大きく伸びているのだ。ダイヤモンド社によると、政府による休校要請当日の2月28日から、すべての児童書の売り上げが急増した。特に『東大教授がおしえる やばい日本史』の売れ行きが良く、臨時休校要請前と比較して、平日で2.5倍、休日で3倍の数字を記録するまでになったという。
書店の現場でも「休校特需」が実感されている。
紀伊國屋書店泉北店では、『小学生なら知っておきたい教養366』や『こども六法』などが週別のランキングでも上位に上がってきているほか、学習書が全体として1.5割増しの売れ行きとなっているそうだ。
「今まで本屋さんに来なかったご家族が来店されている印象です。書店はショッピングモールにあるのですが、隣の洋服屋さんは来客数が減っている一方で、うちは行列ができていて、なんだか申し訳ない気持ちも……」(紀伊國屋書店泉北店・担当者)
フリマアプリのメルカリでも、「参考書」「絵本」の2ジャンルの売買数が2月末から約2倍となり、数千件規模で推移しているという。
メルカリの「絵本」ジャンルの売却数。休校措置が発表された2月末から数字が急増している。
提供:メルカリ
特需といえば特需だけど、不安定
思わぬ特需に見舞われた書店だが、新型コロナウイルスの収束がいつになるかわからないことから、手放しでは喜べない状況が続いているという。
先述の紀伊國屋書店泉北店の担当者は、郊外の地域密着型の店舗は売り上げが伸びている一方で、オフィス街やターミナル駅の書店は伸び悩んでおり、書店の場所によっても隔たりがあると話す。
「現在は春休みのフェアを前倒ししている状態」だという。
提供:紀伊國屋書店泉北店
「今は春休みフェアを前倒している状態ですが、これが長続きするかは不透明ですし、特需といえば特需だけど、不安ではありますね」(紀伊国屋書店の担当者)
言われてみると、本読みたい
Twitterを見てみると、子ども用の学習参考書だけでなく「本屋さんの客が増えている」との投稿も見られ、その意外な活況に驚きの声が上がっている。
「本屋さんのレジの行列に並ぶ。お客さんが多い。 店員さんとお話しする。 『もしかして…お客さん、増えてます?』『はい。特に平日が。明らかに多くなりました』 そういえば図書館も閉じている。 なんとこのご時世だからこそ、本屋さんのお客さん、増えている?」
全国出版協会・出版科学研究所のデータによると、紙の出版物の売り上げは、15年連続でマイナスを記録し、2019年は前年比4.3%減の1兆2360億円。ピークだった1996年の半分をすでに切っている。
業界自体が地盤沈下を起こす中で、新型コロナウイルスにまつわる「特需」ともいえる現象は、復活や新たなビジネス展開の糸口になり得るのか。
「しかしコロナが流行って本屋が儲かるなんて、誰が予想しただろうか 風が吹いて桶屋どころじゃない 本屋離れとか言いつつ、結局足りないのは『暇』だったって事なのか…」
コロナウイルス関連のニュースに振り回されずに済む「本」というメディアの価値を再確認する声も。
「言われてみると、今夜はコロナのニュースを繰り返すTVを消して、本をゆっくり読みたいかも。残業しないで本屋さん寄ってかーえろ」
新型コロナが収束した後も、本屋さんブームは続くのか。
「今回のコロナでみんな本屋に行ってるしレンタルビデオ店も盛況だし蘇つくったりしてるし結局、日本の若者の〇〇離れは労働時間と低賃金で忙殺されてたって事がよくわかった」
(文・西山里緒)
※編集部より:文中の書店に関する表現の一部を修正しています。2020:12:30