銃を買うために並ぶ人々(2020年3月15日、カリフォルニア州カルバーシティ)。
Ringo H.W. Chiu/AP
- 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、アメリカでは銃や銃弾を買いだめする人たちがいる。
- 店が閉まり、略奪者が増え始めるのが怖いという人もいる。
- 一部の店では、アジア系アメリカ人の客が増えていて、彼らは自分たちが攻撃されるのではないかという恐怖心から銃を購入しているという。
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、アメリカでは銃と銃弾も多くの人たちが買いだめに走るアイテムの1つだ。
USA Todayによると、銃の販売店に行列を作ったり、オンラインで注文する人があまりに多いため、一部の店では十分な商品が確保できず、販売量に規制をかけなければならないという。
同紙によると、3月15日の朝、カリフォルニア州カルバーシティにある銃専門店「マーティン・B・レティング(Martin B. Retting)」の外には、オープン前から長蛇の列ができていた。
「みんな怖いんだ」と、ロサンゼルス在住のドリュー・プロトキンさんはUSA Todayに語った。「世界中でパニックが起きているし、最悪のシナリオに備えて自分の身を守りたいんだよ」
アメリカでは3月18日現在、新型コロナウイルスで108人が死亡している。検査が遅れていることから、実際の数字はさらに多いかもしれない。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のさらなる感染拡大を阻止するため、一部の都市では学校の休校や店の営業停止が始まっている。
USA Todayによると、店が閉まることで略奪が起きることを恐れる人々の中には、武器の買いだめを始めている人もいるという。
ラルフ・シャレットさん(71)もその1人だ。同紙によると、シャレットさんは食料品店で攻撃的な買い物客に遭遇した後、ウィスコンシン州ジャーマンタウンにある銃の販売店で1500ドル(約16万円)を使ったという。
「不確かなことが多いし、疑心暗鬼も広がっているが、自分の身は自分で守らなくては」とシャレットさんは語った。
Elaine Thompson/AP
中国の武漢に由来すると考えられている新型コロナウイルスだが、今では世界全体の感染者数は19万7100人を超え、7905人が死亡している(3月18日現在)。そのパンデミック(世界的な大流行)は、アメリカでアジア系アメリカ人に対する人種差別やヘイトを招いた。
カリフォルニア州では複数の小売店が、銃を購入するアジア系アメリカ人の客が増えていると、ニューズウィークに語っている。
「あれはすごかった」とニューズウィークに語ったのは、サンガブリエル・バレーにある「アルカディア・ファイアアーム・アンド・セーフティー(Arcadia Firearm & Safety)」のオーナー、デイビッド・リューさんだ。
「例えば3月3日と4日には、50人以上が銃の購入に必要な証明書を発行するためのテストを受けに店へ来て、全員が銃を買っていった。わたしの小さな店にとっては、すごく珍しいことだ」
リューさんは、アジア系アメリカ人が銃を買っているのは、自分たちが標的にされるのではないかと恐れているからだと言い、銃弾は入荷しづらくなっていると同誌に話した。
シティ・オブ・インダストリーにある「ガン・エフェクツ・アンド・クラウド・ナイン・フィッシング(Gun Effects and Cloud Nine Fishing)」のオーナー、デニス・リンさんも銃を買いに来るアジア系アメリカ人が増えているとKABCに語った。
「差別されているんだ」とリンさん。
「忘れちゃいけない。わたしたちは皆、同じ人間だ。わたしたちはアメリカにいる。中国じゃない」
だが、全ての客が行列に並んでいるわけではない。
オンラインで銃を販売する「Ammo.com」では、売り上げが伸びているという。USA Todayによると、2月中旬から3月上旬の同サイトの売り上げは68%増えた。
Ammo.comのマーケティング・マネジャー、アレックス・ホースマン氏はUSA Todayへの声明文の中で、「銃弾の売り上げに特定の事柄が影響を与えることは分かっています。その大半は、自分たちの権利が侵されるかもしれないと人々が感じるような政治イベントか経済不安です。ウイルスがこれほど売り上げを伸ばすとは、わたしたちにとっても初めての経験です」と述べている。
(翻訳、編集:山口佳美)